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18.死守
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「良かったんですか?隊長」
兵士達はボロボロの格好で集まっていた。
「どうせ戦っても勝てなかっただろ?勿論死んでもここを守ることは大切だ。けどな、お前らの命も同じくらい大切なんだ。会話で時間稼ぎでもと思ったが限界だったな」
「ありがたいですけど……」
「こうなりゃ俺は裏切り者だ。相手はツルギ目当てとはいえ立派な反逆罪だな。はっはっはすまんな皆!」
「いいや、感謝してますよ。俺も死にたくなかったですし……斬られるのっていてー」
「以前はもっと和やかだった気がするんですけどね。何でこうなっちゃったんですかね?」
「わからない。しかし、あのレン姫がいた頃、皆活気があって良かったなぁ」
「姫がお見えになると兵士の士気が上がって面白かったですね!」
「そうだなぁ」
「なんだか、あの二人なら、何か変わる気がするんですよね俺」
「なっ──それ俺が言おうとしてた……」
「すません隊長!」
両手をついて謝っていた。
立派な反逆罪、犯罪者への加担、彼らの隊長が部下を案じての行動であった。死者はゼロ。オトメを信じる気持ちと他人を信じることなんて出来ない、両方の気持ちがまじりあった時間を彼らは過ごしていた。
「ずっとどこかで理性に押しつぶされた感覚だけで感じている何かを今日出せた気がする」
「はい?」
「根拠がないのにずっとどこかでツルバが全ての犯人なんじゃないかと思っていた」
「そりゃ隊長、この仕事何年目ですか?」
「40年はやってる。だらだらとな。歳で若者には勝てん」
「勘とかあるんじゃないですか?」
「というか隊長、ツルバ軍師にこの戦いバレてるんじゃないすか?」
「いや、軍師はレン姫様と外の空間とは一切連絡の出来ない場所に居られる」
「それって『操縦室』ってやつですか?」
「そうだ。だから俺らの会話、戦闘、一切軍師はわからない。またなーんで『操縦室』なんて名前なのかサッパリわからん」
「あの、少し寝ます……」
「そうしろ、もしかしたら俺らここを死守しなきゃならないかもしれないからな……あ、どうやってこの責任取ろうかな――――」
最後に死ぬのならば、あの二人に少しでも何か賭けてから死のうと、思っていた。
40年の記憶が蘇る。それは就任してすぐだっただろうか、城の操縦室に関して調べた者を殺した記憶がある。それは立派な仕事だ。何人たりともこの城を動かしてはいけない。その呪われたような言葉だけが原動力だった。
大丈夫だ、あの二人は城を動かしに来たわけではない。きっと大丈夫。
ーーーーーー
僕は上へ上へ登る、螺旋状の階段を上がる。『魔導エレベーター』と呼ばれる魔法陣を用いた装置を使えばいいのだが、ツルバにバレるかもしれないので人力で頑張っている。
「疲れたキリカ?」
「少しね」
お互い額に汗を流し、腕でぬぐう。階段は結構キツイ。
「魔術使えればなぁ……」
「オトメ、後一階分で『操縦室』です」
「もう少しだ、気合い入れるぞキリカ」
「オトメ君も途中でへばってないでよね!」
少しキリカに元気が戻った。煽りが出来るくらいだ、まだ大丈夫。
「おう……!」
そして、巨大な機械仕掛けの扉の前に立つ。
上に赤いランプが淡く光っていて少し怪しい雰囲気。
少し前に進むと自動で扉が開いた。
重く、重く重く……開く視界からその光景は、情報が、僕に入ってくる。
そこには──
ーーーーー
一階にて。
他の兵士が帰ってきていた。
「騒動を聞きつけて来た……これは一体?」
ボロボロの隊長が答える。
「軍師ツルバは……今から殺される……かもな?……俺ら十人は、それを死守する……」
「何を言って……」
「残念彼ら通しちゃった。勿論反逆罪なのは承知の上」
「侵入者は既に!」
「……城の中に誰も入れるな。アイツらの邪魔をさせるな!」
兵士十人は力強く立ち上がった。
「うおぉおおおおおおお!」
「何があったっていうんだ?いや、そうではない。市民の報告、門番の報告からこの城への侵入は確かだ。我々はオトメを捕えなければならない」
十人は銃を構える。
「俺ら、ここを死守するのに重い根拠もねぇんだ。でも、俺らの命を奪わなかったあのガキに賭けてみたい。それだけだ。ちょっと寿命が延びただけだ」
「反乱か────今から、アバンドグローリー城の奪還を開始する!」
「最後、自分に正直であってよかった」
ーーーーー
『操縦室』にて。
そこはランプと機械のディスプレイの明かりだけ、とても暗い部屋。
操縦室ってだけあって収容人数は多そう。
「カイナ……カイナ!!」
僕の目の前には、両腕を拘束され、柱にその両腕を括りつけてられていたカイナがいた。
姫様らしく、白いドレスを身に着けていた。
「あれが、カイナさん?」
そして、その隣にはツルバが立っている。
「ん?君は……オトメ君かな?やはり生きていたか」
「ぐっ……ツルバてめぇ」
「あれが、ツルバ軍師?」
「君たちがここに居るということは……そうか、私の部下は殺されたのかな?」
「殺してない」
「まさか……君は殺人鬼としてこの街では通っている。そうしてもらわなければ困るというものだ」
僕の怒りは爆発寸前だった。当然のように殺しをしろと?冗談じゃない、僕はツルバの役者じゃない。
「自分勝手なこといいやがって……」
僕がイノセントを抜き、ツルバに近づくと、ツルバの表情が興味深いものを見る目に変わった。
「そうか……そういうことか……」
「は?」
「お前、PE持ちか!」
今の発言で、キリカとカイナが僕に刺すような視線を向けた。
「PEってなんでオトメ君が?」
「……」
「ツルバ、なんでお前、僕がPEだって……」
その質問にツルバはサクッと答えた。
「私はSE所有だ。君がPEだということはお見通しだよ」
キョウスケが教えてくれる。
「Social Eyes コンタクト型の私たちの機能をパクった製品。ジャミングに弱いです」
「まさかお前がPEか──面白い!面白いぞ!今やPEの人間はこの世界にほとんど観測されない……しかも赤色、Dと見た!ハハハハ!――――しかし……どちらだ?」
キリカの目が僕をずっと見ている。
「PE持ち?なるほどだから独り言多かったわけだ……」
少し足が震え、剣先をゆっくり僕に向けた。
「この世界でのPEは、高い戦闘能力、知能、残虐性を持つとして知られています」
「おいおい!待て待て!剣を下ろせって!PEがそんなに珍しものだって知らない!」
ツルバが椅子にドカンと座って、頬に手を当てながら話す。
「オトメよ、お前はルーイがSEだと知っていたか?」
「なんだって!?」
「目の青い光を見ただろう?あれがSE使用者の証。PEにしては少々鈍感か?まぁそんなこと今更どうだっていい。邪魔者は消し、全ては私が手に入れる」
「手にいれる?」
「私はこの城を動かし、この世界を支配する!」
キリカは目の前のことについて驚きすぎて言葉を失っている。剣先が下りない、僕も迂闊に一歩も動けない。
「オトメ君がPE……私に隠して……教えたくれればいいのに……」
僕へ対する恐怖の目。知ってる。人殺しを見る目だ。
「おい!しっかりしろ!キリカ(言葉が変だぞ)!──ツルバ、城は本当に動くのか?」
やばいこのままだとキリカがお荷物になりそうだ。
「そうだ。この姫様が鍵となっている。まぁそのために記憶を消させてもらったけどなぁ!」
カイナが鍵?
「それってつまり……」
「あ?あぁもちろん死んでもらったぞ」
僕は自分の推理が当たって満足した気持ちと、ツルバに対する怒りと、そして、当たって満足した自分に嫌気がさした。
「無垢な人間の方が扱い安いしな。生前の姫は少し元気すぎた」
そして気づいた。彼もこの世界の記憶消滅のことを知っていることに。恐らくここの全員知っている。
「少し話すぎた……それでは姫、目を」
カイナは首を振る。喋れないのか?魔術をかけられているのかもしれない。
「何をするんだ?」
「彼女の目が鍵となっている。これをあの機械に持っていけば動く!」
ツルバはカイナの顔をいじくりまわそうとした。
「……………やめろ!」
僕は我慢出来ず、ツルバに斬りかかった。
「ん?塵が……」
ツルバの前に氷の盾が現れ、攻撃を防がれた。
一般名称『アイスシールド』透明度の高いそれはルーイと戦いをフラッシュバックさせた。
「イノセントで切れない?」
「魔力にとって生成された氷は鋼を上回る場合があります」
「やはり君たちとは殺し合わなければいけないのか……」
ツルバは杖をストレージから出現させた。
「かかってこい。我が野望を打ち砕けるのか?」
『ツルバ』Enemy!
・相対レベル 34
・イービルワンド
・軍師のコート
他スキャンは実行していません。
兵士達はボロボロの格好で集まっていた。
「どうせ戦っても勝てなかっただろ?勿論死んでもここを守ることは大切だ。けどな、お前らの命も同じくらい大切なんだ。会話で時間稼ぎでもと思ったが限界だったな」
「ありがたいですけど……」
「こうなりゃ俺は裏切り者だ。相手はツルギ目当てとはいえ立派な反逆罪だな。はっはっはすまんな皆!」
「いいや、感謝してますよ。俺も死にたくなかったですし……斬られるのっていてー」
「以前はもっと和やかだった気がするんですけどね。何でこうなっちゃったんですかね?」
「わからない。しかし、あのレン姫がいた頃、皆活気があって良かったなぁ」
「姫がお見えになると兵士の士気が上がって面白かったですね!」
「そうだなぁ」
「なんだか、あの二人なら、何か変わる気がするんですよね俺」
「なっ──それ俺が言おうとしてた……」
「すません隊長!」
両手をついて謝っていた。
立派な反逆罪、犯罪者への加担、彼らの隊長が部下を案じての行動であった。死者はゼロ。オトメを信じる気持ちと他人を信じることなんて出来ない、両方の気持ちがまじりあった時間を彼らは過ごしていた。
「ずっとどこかで理性に押しつぶされた感覚だけで感じている何かを今日出せた気がする」
「はい?」
「根拠がないのにずっとどこかでツルバが全ての犯人なんじゃないかと思っていた」
「そりゃ隊長、この仕事何年目ですか?」
「40年はやってる。だらだらとな。歳で若者には勝てん」
「勘とかあるんじゃないですか?」
「というか隊長、ツルバ軍師にこの戦いバレてるんじゃないすか?」
「いや、軍師はレン姫様と外の空間とは一切連絡の出来ない場所に居られる」
「それって『操縦室』ってやつですか?」
「そうだ。だから俺らの会話、戦闘、一切軍師はわからない。またなーんで『操縦室』なんて名前なのかサッパリわからん」
「あの、少し寝ます……」
「そうしろ、もしかしたら俺らここを死守しなきゃならないかもしれないからな……あ、どうやってこの責任取ろうかな――――」
最後に死ぬのならば、あの二人に少しでも何か賭けてから死のうと、思っていた。
40年の記憶が蘇る。それは就任してすぐだっただろうか、城の操縦室に関して調べた者を殺した記憶がある。それは立派な仕事だ。何人たりともこの城を動かしてはいけない。その呪われたような言葉だけが原動力だった。
大丈夫だ、あの二人は城を動かしに来たわけではない。きっと大丈夫。
ーーーーーー
僕は上へ上へ登る、螺旋状の階段を上がる。『魔導エレベーター』と呼ばれる魔法陣を用いた装置を使えばいいのだが、ツルバにバレるかもしれないので人力で頑張っている。
「疲れたキリカ?」
「少しね」
お互い額に汗を流し、腕でぬぐう。階段は結構キツイ。
「魔術使えればなぁ……」
「オトメ、後一階分で『操縦室』です」
「もう少しだ、気合い入れるぞキリカ」
「オトメ君も途中でへばってないでよね!」
少しキリカに元気が戻った。煽りが出来るくらいだ、まだ大丈夫。
「おう……!」
そして、巨大な機械仕掛けの扉の前に立つ。
上に赤いランプが淡く光っていて少し怪しい雰囲気。
少し前に進むと自動で扉が開いた。
重く、重く重く……開く視界からその光景は、情報が、僕に入ってくる。
そこには──
ーーーーー
一階にて。
他の兵士が帰ってきていた。
「騒動を聞きつけて来た……これは一体?」
ボロボロの隊長が答える。
「軍師ツルバは……今から殺される……かもな?……俺ら十人は、それを死守する……」
「何を言って……」
「残念彼ら通しちゃった。勿論反逆罪なのは承知の上」
「侵入者は既に!」
「……城の中に誰も入れるな。アイツらの邪魔をさせるな!」
兵士十人は力強く立ち上がった。
「うおぉおおおおおおお!」
「何があったっていうんだ?いや、そうではない。市民の報告、門番の報告からこの城への侵入は確かだ。我々はオトメを捕えなければならない」
十人は銃を構える。
「俺ら、ここを死守するのに重い根拠もねぇんだ。でも、俺らの命を奪わなかったあのガキに賭けてみたい。それだけだ。ちょっと寿命が延びただけだ」
「反乱か────今から、アバンドグローリー城の奪還を開始する!」
「最後、自分に正直であってよかった」
ーーーーー
『操縦室』にて。
そこはランプと機械のディスプレイの明かりだけ、とても暗い部屋。
操縦室ってだけあって収容人数は多そう。
「カイナ……カイナ!!」
僕の目の前には、両腕を拘束され、柱にその両腕を括りつけてられていたカイナがいた。
姫様らしく、白いドレスを身に着けていた。
「あれが、カイナさん?」
そして、その隣にはツルバが立っている。
「ん?君は……オトメ君かな?やはり生きていたか」
「ぐっ……ツルバてめぇ」
「あれが、ツルバ軍師?」
「君たちがここに居るということは……そうか、私の部下は殺されたのかな?」
「殺してない」
「まさか……君は殺人鬼としてこの街では通っている。そうしてもらわなければ困るというものだ」
僕の怒りは爆発寸前だった。当然のように殺しをしろと?冗談じゃない、僕はツルバの役者じゃない。
「自分勝手なこといいやがって……」
僕がイノセントを抜き、ツルバに近づくと、ツルバの表情が興味深いものを見る目に変わった。
「そうか……そういうことか……」
「は?」
「お前、PE持ちか!」
今の発言で、キリカとカイナが僕に刺すような視線を向けた。
「PEってなんでオトメ君が?」
「……」
「ツルバ、なんでお前、僕がPEだって……」
その質問にツルバはサクッと答えた。
「私はSE所有だ。君がPEだということはお見通しだよ」
キョウスケが教えてくれる。
「Social Eyes コンタクト型の私たちの機能をパクった製品。ジャミングに弱いです」
「まさかお前がPEか──面白い!面白いぞ!今やPEの人間はこの世界にほとんど観測されない……しかも赤色、Dと見た!ハハハハ!――――しかし……どちらだ?」
キリカの目が僕をずっと見ている。
「PE持ち?なるほどだから独り言多かったわけだ……」
少し足が震え、剣先をゆっくり僕に向けた。
「この世界でのPEは、高い戦闘能力、知能、残虐性を持つとして知られています」
「おいおい!待て待て!剣を下ろせって!PEがそんなに珍しものだって知らない!」
ツルバが椅子にドカンと座って、頬に手を当てながら話す。
「オトメよ、お前はルーイがSEだと知っていたか?」
「なんだって!?」
「目の青い光を見ただろう?あれがSE使用者の証。PEにしては少々鈍感か?まぁそんなこと今更どうだっていい。邪魔者は消し、全ては私が手に入れる」
「手にいれる?」
「私はこの城を動かし、この世界を支配する!」
キリカは目の前のことについて驚きすぎて言葉を失っている。剣先が下りない、僕も迂闊に一歩も動けない。
「オトメ君がPE……私に隠して……教えたくれればいいのに……」
僕へ対する恐怖の目。知ってる。人殺しを見る目だ。
「おい!しっかりしろ!キリカ(言葉が変だぞ)!──ツルバ、城は本当に動くのか?」
やばいこのままだとキリカがお荷物になりそうだ。
「そうだ。この姫様が鍵となっている。まぁそのために記憶を消させてもらったけどなぁ!」
カイナが鍵?
「それってつまり……」
「あ?あぁもちろん死んでもらったぞ」
僕は自分の推理が当たって満足した気持ちと、ツルバに対する怒りと、そして、当たって満足した自分に嫌気がさした。
「無垢な人間の方が扱い安いしな。生前の姫は少し元気すぎた」
そして気づいた。彼もこの世界の記憶消滅のことを知っていることに。恐らくここの全員知っている。
「少し話すぎた……それでは姫、目を」
カイナは首を振る。喋れないのか?魔術をかけられているのかもしれない。
「何をするんだ?」
「彼女の目が鍵となっている。これをあの機械に持っていけば動く!」
ツルバはカイナの顔をいじくりまわそうとした。
「……………やめろ!」
僕は我慢出来ず、ツルバに斬りかかった。
「ん?塵が……」
ツルバの前に氷の盾が現れ、攻撃を防がれた。
一般名称『アイスシールド』透明度の高いそれはルーイと戦いをフラッシュバックさせた。
「イノセントで切れない?」
「魔力にとって生成された氷は鋼を上回る場合があります」
「やはり君たちとは殺し合わなければいけないのか……」
ツルバは杖をストレージから出現させた。
「かかってこい。我が野望を打ち砕けるのか?」
『ツルバ』Enemy!
・相対レベル 34
・イービルワンド
・軍師のコート
他スキャンは実行していません。
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