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52.優
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「エイルちゃん、オトメ君はどうして一人でアイツを追ったのかな?確かに私たちもスグに駆けつけるけどさ……」
「やっぱりオトメさんは一人で……?」
「かもしれない、やっぱり私がいないと───」
そう、僕の狙いは一人でクニテツともう一度会うことだ。
まだ交渉の余地があると期待している。
まだ────知らないことがある。
魔導エレベーターが地上に到着した。
到着時の衝撃はなくスムーズに止まった。
エレベーターの部屋を出て、周りを見る。
「逃げられたか?」
キョウスケが不在のせいで気配の確認ができない。
魔力を使おうにも僕にはあまり魔力がないから……あ、そういえば僕は「液体硬化」ができるんだっけ?
「クニテツ……どこだ?」
どこから来てもいいようにエフェクトシールドを構える。
周りの人間が僕を見る。
そりゃ怪しいよな、剣かまえていれば。
そうだ、人に訊けばいいか。
「なぁ、ここに血だらけの男が来なかったか?」
「あんたみたいなのかい!?」
水入りバケツを持ったおばさんだ。
「違う違う!二本の剣を持った奴だ!」
この展開、さっきも?
「……ああぁもう一回、火の海にしてやる」
「クニテツ!」
僕は声のする方向を見る。
そこは建物の屋根、クニテツの右手は揺らめく炎を纏っている。
膝が笑う。走れ。
「爆連、バジ・ヘルフレア!」
短剣を僕に向けて投擲する。
「避けても無駄だぜ?」
「ぁ───」
地面に刺さった短剣から冷気、その瞬間の後の熱気が溢れ、纏った炎が膨張、光を放った。
爆発。
「ドドドドドドドドドーーーーーん!」
言葉の数だけ連続爆撃。
その範囲は半径100メートルにも及んだ。
クニテツはロープより短剣を回収、火血の海を眺めていた。
「二年前の再来だ」
爆撃の衝撃でどれだけの人が死傷したか、検討をつけることができるのは、クニテツともう一人いる。
「───腕ッ────!」
僕だった。
爆風と共に散った水を変形硬化させて風圧を防ぎ、フックショットでクニテツの後ろに回り込んだ。
肺が焼けていて、今にも倒れそうなところを何とか踏ん張っている。
「おまっ」
「───」
僕の一撃は惜しくも防がれてしまう。
鍔迫り合いの状態で僕が優勢だ。
「通れ……!」
「なら……フラッシュ……」
待っていた、この瞬間、僕はエフェクトシールドに魔力を込めた。
刀身が怪しく光り、僕の周りに球形の魔法反射シールドを貼った。
当然フラッシュフレアの光と火焔球は反射され、クニテツを襲った。
耐性によりクニテツには火焔球は通じない。
「フレア!───ああ!?なんだ!眩しい……」
「もう一度!」
僕が再び剣を振り上げると、クニテツは渾身の魔術を放った。
「油断すんなよ、コッチは見えなくたって……バジ・ヘルフレア!」
クニテツは再び短剣を投げた。
それは僕を避けて後方へ、あれは……塔?
「マズイ!」
耳を貫く音、衝撃は塔を破壊し、周囲に瓦礫を散布した。
それは炎に包まれ、さらに被害を広げた。
あちこちで火事が起きていた。
人の悲鳴と助けようとする人、耳を押さえたくなるような人の呻き。
「おいおいおいおい!」
まだ目を開けることができないクニテツと、剣をあげたたままの僕に瓦礫が襲来した。
視界が揺れる、その前に痛い。
「あ、右肩が動かなくなってる」
屋上から飛ばされ、二人は地面に叩きつけられる。
かなり痛い。
「くっそ……建物ほとんどぶっ壊しやがって……ブッ……は」
「ハハハ、まだ」
いったいどれだけの人間が死んだ?
街は大丈夫なのか?
確かエイルがガードとか言ってたな、警備隊?、よく僕とアサガサは通報されなかったな……ってそうじゃなくて、ガードいるなら来るのか?速くこい!また人が死ぬ前に。
ようやく立ち上がった僕は周りに絶望した。
寒気は周りの熱で温められた。
片目に映るのは破壊された家と燃える黒い人。
クニテツがやったことの大きさがわかった。
同時に自分が関わらなければこんなことは起きなかったのではという考えが浮かんだ。
「剣が……ない」
右肩を台無しにした後、エフェクトシールドを離してしまったらしい。
体にはナイフと、もう一つ。
「ようやく目が見えてきたぜ……ゴフッ……うううぅゥヴ」
僕はハンドガンを左手に装備して、クニテツに体当たり、馬乗りになり口に銃口を押し付けた。
煤が肺に入ってむせた。
意外と炎はまぶしい。
「てこずらせやがって……覚悟しやがれよ!」
「が、ふ」
クニテツの目はこちらをしっかり見ている。
死を覚悟した目には見えない。意外と腹立つ。
「抵抗は考えるな、それなら殺したりしないいいな?はじめの質問だ、どうして二年前にサモンウィリット家を襲った?」
初めクニテツは答えようとしなかった。だから銃を奥に押し込めた。
自然と声に力がかかる。
ようやく話す気になったようだ、銃口を素早く離し、額に押し付けた。
「がぁ───はいはい、俺があいつらを襲ったのは……美味そうだったからだ。俺らカニバ族にとって単純に魔力のおおい人間は美味い。それだけだ」
「だったら……ここまですることないだろ?そいつらだけを食えばいいだろうぉ?関係ないやつを巻き込むな」
クニテツは笑う、だが、心から笑っているようには見えない。
哀しみと、静かな絶叫だ。
「お前、意外と罪人に優しいんだな」
「うるさい……少し知ってるだけだ……次、エイルの性別はどうやったらお前から取り返せる?」
「……さっきも言っただろう」
「グゥウ!」
銃のグリップを握る力が強くなる。
殺したら……どうしたらこちらの意図をわかってくれる?
「もう一度訊く、今度はもっと分かり易く(畜生恥ずかしい)どうしたらお前を殺さずにエイルの性別を取り戻せる?」
こちらもそろそろ肺が限界だ。
体のCPが少ない、感覚でわかる。
呼吸が辛い。
「……さっきも……さっきも」
「てめぇ!おちょくってんのか!」
僕は弾丸を一発クニテツの右肩に撃ち込んだ。
出血。
さすがに45口径のハンドガンを片手で撃つのはこのような近距離でなければ当たらない。
「いてぇよな?さっさと話せ。鎮痛薬もってるから、速く!」
クニテツは痛みに耐えながらも笑っていた。
「ははh……h……hあ……すまねぇ、もう魔力がほとんどない。やっぱり爆連は体にくるな……技名とか、言わなきゃよかった」
何かが止まったような気がした。
呼吸か、僕のトリガーを引く指か、または時間か。
「まさか……うそだろ?本当に?」
「まったくクソみたいな人生だぜ……これならオトメ食ってたほうがマシだぜ、無理だけど」
「どうして僕を食おうと?」
「なんとなく、勘つーか、美味しそうだったからつーか。その勘は見事PEを当てたんだからすげーよなぁ!」
「人しか食べれないのか?」
「そんなことはない……むしろ食わなくたって」
「じゃあなんで同族を食おうとする!」
「遊びと大して変わらん。もしかしたら伝説のミルザンドがあるとでも思ってるのかもな。ぶっちゃけ深い理由なんてしらねぇ……なぁどうして俺がこうも冷静に喋れると思う?ほら───」
クニテツは右腕を天に掲げた。
僕はそれに一瞬警戒したが、すぐに警戒を解く。
それはかなり短くなっていた。
服は赤黒く滲み、ジュクジュクと流血している。
「肘から先、さっきの衝撃で無くなってよ、神経がどうにかなっちまいそうなんだが……どうして俺はまだ喋れる?」
「確かに痛みで体がおかしくなるはず、黙っていられないはずだ」
真面目な顔で、睨むような顔でクニテツは訴えに来る。
僕はもう一度銃をしっかり握る。
「いいか、お前も忘れるな、この世界は俺らの世界じゃねぇ、体の作りと頭の作りが全く違う。何が真実なのか───」
「クニテツ……もって?」
次の瞬間、僕は体のバランスを崩した。
理由はクニテツが僕から脱したからだ。
「はっはー、甘いな」
「決めた……もう容赦しない」
僕は銃口をクニテツに向けた。
殺したくない。罪人?でもそれは大切な記憶だぞ?
でもそれで多くの人の記憶が無くなるのならば、覚悟を決めよう。
「全く、呪いだよなぁ」
「命乞い?」
「……弱者は多数決により淘汰され、強者は安全に呪われる。何一つ上手くいかない世界……なぁオトメ、会ってすぐのお前にこんなこと言うのはアレだけどさぁ」
多分、僕ら出会い方を間違えなければ、友だった、そう思った。
「もっと上手に生きることって出来たのか……なぁ?」
思考の三割がストップした気分だった。
何故だ、左目からは液体が流れていた。
銃を握る力が弱くなって、トリガーにかかった指を抜いて、銃身に密着させるように人差し指を伸ばした。
「く」
「あr」
それは唐突すぎた。
クニテツの体を何かが両断し、上半身と下半身に分けた。
しっかりとその様子を左目で見ていた。
滲む視界の中で、倒れたドミノみたいにクニテツは爆音と共に風船みたいに血を散らして崩れた。
それは僕の体に飛び散った。無数の破片がぼつぼつと当たる。冷えている。
顔に血が付き、殺人者みたいだった。
僕は忘れていた……ここは西から丸見えだった。
忘れない、クニテツの僕がトリガーから手を離した時の顔、安心しきっていた。
最後の言葉は聞けなかった。
「クニテツゥッ!うあああああああああああああああああぁ!」
崩れるクニテツの体を掴もうと走った、銃は投げ捨て、手を伸ばした。
そうしたら、間違えて短剣を掴んでしまった。
その時、微かに幽かにキョウスケの存在を感じた。
後に脳内に映像が投影された。
「クニテツの記憶」
「やっぱりオトメさんは一人で……?」
「かもしれない、やっぱり私がいないと───」
そう、僕の狙いは一人でクニテツともう一度会うことだ。
まだ交渉の余地があると期待している。
まだ────知らないことがある。
魔導エレベーターが地上に到着した。
到着時の衝撃はなくスムーズに止まった。
エレベーターの部屋を出て、周りを見る。
「逃げられたか?」
キョウスケが不在のせいで気配の確認ができない。
魔力を使おうにも僕にはあまり魔力がないから……あ、そういえば僕は「液体硬化」ができるんだっけ?
「クニテツ……どこだ?」
どこから来てもいいようにエフェクトシールドを構える。
周りの人間が僕を見る。
そりゃ怪しいよな、剣かまえていれば。
そうだ、人に訊けばいいか。
「なぁ、ここに血だらけの男が来なかったか?」
「あんたみたいなのかい!?」
水入りバケツを持ったおばさんだ。
「違う違う!二本の剣を持った奴だ!」
この展開、さっきも?
「……ああぁもう一回、火の海にしてやる」
「クニテツ!」
僕は声のする方向を見る。
そこは建物の屋根、クニテツの右手は揺らめく炎を纏っている。
膝が笑う。走れ。
「爆連、バジ・ヘルフレア!」
短剣を僕に向けて投擲する。
「避けても無駄だぜ?」
「ぁ───」
地面に刺さった短剣から冷気、その瞬間の後の熱気が溢れ、纏った炎が膨張、光を放った。
爆発。
「ドドドドドドドドドーーーーーん!」
言葉の数だけ連続爆撃。
その範囲は半径100メートルにも及んだ。
クニテツはロープより短剣を回収、火血の海を眺めていた。
「二年前の再来だ」
爆撃の衝撃でどれだけの人が死傷したか、検討をつけることができるのは、クニテツともう一人いる。
「───腕ッ────!」
僕だった。
爆風と共に散った水を変形硬化させて風圧を防ぎ、フックショットでクニテツの後ろに回り込んだ。
肺が焼けていて、今にも倒れそうなところを何とか踏ん張っている。
「おまっ」
「───」
僕の一撃は惜しくも防がれてしまう。
鍔迫り合いの状態で僕が優勢だ。
「通れ……!」
「なら……フラッシュ……」
待っていた、この瞬間、僕はエフェクトシールドに魔力を込めた。
刀身が怪しく光り、僕の周りに球形の魔法反射シールドを貼った。
当然フラッシュフレアの光と火焔球は反射され、クニテツを襲った。
耐性によりクニテツには火焔球は通じない。
「フレア!───ああ!?なんだ!眩しい……」
「もう一度!」
僕が再び剣を振り上げると、クニテツは渾身の魔術を放った。
「油断すんなよ、コッチは見えなくたって……バジ・ヘルフレア!」
クニテツは再び短剣を投げた。
それは僕を避けて後方へ、あれは……塔?
「マズイ!」
耳を貫く音、衝撃は塔を破壊し、周囲に瓦礫を散布した。
それは炎に包まれ、さらに被害を広げた。
あちこちで火事が起きていた。
人の悲鳴と助けようとする人、耳を押さえたくなるような人の呻き。
「おいおいおいおい!」
まだ目を開けることができないクニテツと、剣をあげたたままの僕に瓦礫が襲来した。
視界が揺れる、その前に痛い。
「あ、右肩が動かなくなってる」
屋上から飛ばされ、二人は地面に叩きつけられる。
かなり痛い。
「くっそ……建物ほとんどぶっ壊しやがって……ブッ……は」
「ハハハ、まだ」
いったいどれだけの人間が死んだ?
街は大丈夫なのか?
確かエイルがガードとか言ってたな、警備隊?、よく僕とアサガサは通報されなかったな……ってそうじゃなくて、ガードいるなら来るのか?速くこい!また人が死ぬ前に。
ようやく立ち上がった僕は周りに絶望した。
寒気は周りの熱で温められた。
片目に映るのは破壊された家と燃える黒い人。
クニテツがやったことの大きさがわかった。
同時に自分が関わらなければこんなことは起きなかったのではという考えが浮かんだ。
「剣が……ない」
右肩を台無しにした後、エフェクトシールドを離してしまったらしい。
体にはナイフと、もう一つ。
「ようやく目が見えてきたぜ……ゴフッ……うううぅゥヴ」
僕はハンドガンを左手に装備して、クニテツに体当たり、馬乗りになり口に銃口を押し付けた。
煤が肺に入ってむせた。
意外と炎はまぶしい。
「てこずらせやがって……覚悟しやがれよ!」
「が、ふ」
クニテツの目はこちらをしっかり見ている。
死を覚悟した目には見えない。意外と腹立つ。
「抵抗は考えるな、それなら殺したりしないいいな?はじめの質問だ、どうして二年前にサモンウィリット家を襲った?」
初めクニテツは答えようとしなかった。だから銃を奥に押し込めた。
自然と声に力がかかる。
ようやく話す気になったようだ、銃口を素早く離し、額に押し付けた。
「がぁ───はいはい、俺があいつらを襲ったのは……美味そうだったからだ。俺らカニバ族にとって単純に魔力のおおい人間は美味い。それだけだ」
「だったら……ここまですることないだろ?そいつらだけを食えばいいだろうぉ?関係ないやつを巻き込むな」
クニテツは笑う、だが、心から笑っているようには見えない。
哀しみと、静かな絶叫だ。
「お前、意外と罪人に優しいんだな」
「うるさい……少し知ってるだけだ……次、エイルの性別はどうやったらお前から取り返せる?」
「……さっきも言っただろう」
「グゥウ!」
銃のグリップを握る力が強くなる。
殺したら……どうしたらこちらの意図をわかってくれる?
「もう一度訊く、今度はもっと分かり易く(畜生恥ずかしい)どうしたらお前を殺さずにエイルの性別を取り戻せる?」
こちらもそろそろ肺が限界だ。
体のCPが少ない、感覚でわかる。
呼吸が辛い。
「……さっきも……さっきも」
「てめぇ!おちょくってんのか!」
僕は弾丸を一発クニテツの右肩に撃ち込んだ。
出血。
さすがに45口径のハンドガンを片手で撃つのはこのような近距離でなければ当たらない。
「いてぇよな?さっさと話せ。鎮痛薬もってるから、速く!」
クニテツは痛みに耐えながらも笑っていた。
「ははh……h……hあ……すまねぇ、もう魔力がほとんどない。やっぱり爆連は体にくるな……技名とか、言わなきゃよかった」
何かが止まったような気がした。
呼吸か、僕のトリガーを引く指か、または時間か。
「まさか……うそだろ?本当に?」
「まったくクソみたいな人生だぜ……これならオトメ食ってたほうがマシだぜ、無理だけど」
「どうして僕を食おうと?」
「なんとなく、勘つーか、美味しそうだったからつーか。その勘は見事PEを当てたんだからすげーよなぁ!」
「人しか食べれないのか?」
「そんなことはない……むしろ食わなくたって」
「じゃあなんで同族を食おうとする!」
「遊びと大して変わらん。もしかしたら伝説のミルザンドがあるとでも思ってるのかもな。ぶっちゃけ深い理由なんてしらねぇ……なぁどうして俺がこうも冷静に喋れると思う?ほら───」
クニテツは右腕を天に掲げた。
僕はそれに一瞬警戒したが、すぐに警戒を解く。
それはかなり短くなっていた。
服は赤黒く滲み、ジュクジュクと流血している。
「肘から先、さっきの衝撃で無くなってよ、神経がどうにかなっちまいそうなんだが……どうして俺はまだ喋れる?」
「確かに痛みで体がおかしくなるはず、黙っていられないはずだ」
真面目な顔で、睨むような顔でクニテツは訴えに来る。
僕はもう一度銃をしっかり握る。
「いいか、お前も忘れるな、この世界は俺らの世界じゃねぇ、体の作りと頭の作りが全く違う。何が真実なのか───」
「クニテツ……もって?」
次の瞬間、僕は体のバランスを崩した。
理由はクニテツが僕から脱したからだ。
「はっはー、甘いな」
「決めた……もう容赦しない」
僕は銃口をクニテツに向けた。
殺したくない。罪人?でもそれは大切な記憶だぞ?
でもそれで多くの人の記憶が無くなるのならば、覚悟を決めよう。
「全く、呪いだよなぁ」
「命乞い?」
「……弱者は多数決により淘汰され、強者は安全に呪われる。何一つ上手くいかない世界……なぁオトメ、会ってすぐのお前にこんなこと言うのはアレだけどさぁ」
多分、僕ら出会い方を間違えなければ、友だった、そう思った。
「もっと上手に生きることって出来たのか……なぁ?」
思考の三割がストップした気分だった。
何故だ、左目からは液体が流れていた。
銃を握る力が弱くなって、トリガーにかかった指を抜いて、銃身に密着させるように人差し指を伸ばした。
「く」
「あr」
それは唐突すぎた。
クニテツの体を何かが両断し、上半身と下半身に分けた。
しっかりとその様子を左目で見ていた。
滲む視界の中で、倒れたドミノみたいにクニテツは爆音と共に風船みたいに血を散らして崩れた。
それは僕の体に飛び散った。無数の破片がぼつぼつと当たる。冷えている。
顔に血が付き、殺人者みたいだった。
僕は忘れていた……ここは西から丸見えだった。
忘れない、クニテツの僕がトリガーから手を離した時の顔、安心しきっていた。
最後の言葉は聞けなかった。
「クニテツゥッ!うあああああああああああああああああぁ!」
崩れるクニテツの体を掴もうと走った、銃は投げ捨て、手を伸ばした。
そうしたら、間違えて短剣を掴んでしまった。
その時、微かに幽かにキョウスケの存在を感じた。
後に脳内に映像が投影された。
「クニテツの記憶」
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