仮想世界β!!

音音てすぃ

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97.壁前戦闘

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 目に痛みが出るほどの光、怖い雷の音、焦げた匂い、必殺の一撃を見ていた。

「迅雷か、初っ端から切り札とはツルギさんも必死ってことなのかな」

 僕は壁を登りながら大穴へのそれ確認した。イデアルでも感じた生命を断つ一撃の圧力、数十メートル離れていても皮膚にバリバリ感じる。

「……あれが迅雷?」

 キリカはあれを見たことがなかったか、そうだあの時は気絶していたもんね。

「あの威力だ、時間も稼いでもらえるだろっ!ふっ!」

 また上に蹴り出す。


ーーーーーー


 手応えがあまり感じない。
 ツルギが放った迅雷の雷は正面の兵士を焼いた。とはいえ盾と魔術のシールドによって全滅は免れたようだった。

「さすがに一撃では無理か」

 本命の確認をする。ゴールドグリップはりょううでを交差させてその場から一歩も動いていなかった。

「威力を一点に集中させれば貫けるか?いや……」

 奴を仕留めるには至らなかった。つまり次は彼の反撃だ。迅雷に割く魔力のソースはない。
 早々に迅雷を解除して二本の刀に戻した。

「ゴールドグリップ健在、奥の兵士もそろそろ動き出します、私から5メートル以上離れると『防衛装置』も機能しませんから」

 アリエがイヤリングを左手で揺らす。彼女のアクセサリーは防衛装置といって、自分を中心に飛び道具を防ぐシールドを展開する。透明なため判別出来ないが、発動させると左手に文字が浮き出る。

「ライヴの発砲と同時に戻る……さて、ゴールドグリップとすこし手合わせでもしようか」

 ツルギが一歩前に出る。ゴールドグリップも彼の殺気を感じて防御を解いた。

「今のは危なかったぁ、スイセンドウ以来のダメージだったぜ……だがこの鎧は焼けなかったようだなぁツルギ!」

 二人の男が大きな一歩を踏み出す。ツルギは右回転からの斬り下ろし、ゴールドグリップはナックルの右突き攻撃。

 鼓膜が揺れる、衝突した二つはゆらゆら揺れる。
 止まった両者は次の攻撃へ転じる。
 一つ速いゴールドの左フック、完璧に読んでいたツルギは背後へ瞬間移動して二本の刀で左へ水平斬り。

「ん(瞬間移動しやがったな)」

 視界にいないのならば背後、ゴールドグリップは威力を最小限に抑えるように振り向きつつ前へ回避する。
 しかし、それでもツルギの斬撃は範囲を広く取っていたため彼の腹を二センチ斬り裂いた。

「……痛てぇ、さすがツルギ、この鎧すら斬るとは」

 ゴールドグリップが血の出た鎧を摩った。

「思ったより固くてな、綺麗には斬れなかった。あと少し舐めてかかったら、その鎧に引っかかってたかもな」
「ハッ!カッターナイフでもあるまい」

 ツルギは後のライヴが陣形を建て直して今にもライフルを撃ちそうだと感知した。

「チッ早い……アリエにコイツの相手はさせたくないな」

 瞬間移動でアリエの元へ戻る。

「おいおい逃げんのかぁ!」
「アリエ、来るぞ。魔力は大丈夫か?最悪俺の……」
「安心してください!朝から大して使ってません!」
「ん?」
「撃てぇ!」

 ゴールドグリップが陣形まで後退する。同時に光と音、銃弾がツルギの視界を埋めつくした。機関銃もあるぞ。単発のライフルなんて嘘か?

「任せる」

 背中にツルギが手を当てると、アリエはそこから魔力を感じ取り、シールドの出力を上げて、左手を突き出した。

「はい!心配性ですね」

 着弾したのは透明な魔術シールド。これほど小型で高性能な対飛び道具アクセサリーは類を見ない。
 高速で打ち付けられた弾丸の音がうるさい。これではツルギでもアリエが心配になってくる。

「……そのうち後の奴らが魔法か魔術でも撃ってくる、それも防げるか?」
「えぇ、多分大丈夫です隊長。隊長の無限の魔力があれば」
「たがその間は俺の『エーテルステップ』も使えない、勿論迅雷もだが……」
「マシンガンは弾切れになれば後と交代するようですね、隙はありません」
「そろそろか……」

 ツルギは正面の壮絶な攻撃を観察して、強弱の波を見出した。スキルのクールタイム、魔術のクールタイム、弾倉の装填、人の交代、そしてその弱い瞬間をみて通信を開始。

「総員、叩け!」

 この爆音でも聞こえるように大きく、いや、隊長は全員通知で分かるのだが、あえて鼓舞するように叫んだ。

「っしゃー!退屈してたんじゃい!」
「ボクだって!」
「この好機、逃すな!」
「私、カリンに続け!」

 ツルギ隊を一番槍として物陰から壁一面を円弧状に取り囲んだ。

「おい、おいおいおい。沢山隠れてるじゃねぇの!」

 ゴールドグリップは嬉しそう。

「倫理が現れたぞ!」
「撃て撃て!」
「上だ上だ!」
「横からも来るぞ!」

 ライヴの兵士も必死にECFの隊員を狙う。

「よし、攻撃がバラついた」

 ツルギとアリエへの攻撃が薄くなったことにより、アリエも割く魔力が減り、自動防御に切り替えた。

「狙います」
「任せた」

 アリエはマークスマンライフルを装備して匍匐、魔術シールドの隙間を狙って銃弾を放つ。それは見事にマシンガンを持った兵士の心臓を貫いた。本当は頭を狙いたかった。

「一人……!」

 こちらの防衛装置にも着弾する。ツルギもリボルバーを構えて狙いを定める。

 そうこうしている間でもECFの隊員は特攻した3分の1は落とされた。

「振り返るなガラス!」
「チッ……」
「切り札を送り届けるんだ!」

 サイケンを筆頭に後にガラスが続く、カワセミは隅で怪我の治療中だ。
 ARを構えて進む。簡易的なシールドを展開しているが、簡単に貫通されて体を貫く。それでも出来るだけ前へ進む。

「サイケン!」
「大丈夫だガラス……しっかりタメ作れ!」

 ガラスは走りながら魔力放出を開始する。シロカミが進行したところでサイケンの肩を叩いた。

「行ける!」
「よし、行け!」

 敵陣中央に飛び、ガラスは黒い歪んだ魔力を放つ。

「なんだあれ……」
「クソッ離れろ!」

 自爆のように見えた一撃はライヴ兵の隊列を半壊させた。
 サイケンはスイセンドウの時よりも威力が増していると感じた。心がざわつくような乱れ。エーテル場を尽く切り刻んだ一撃だ。

「ECF、総員白兵戦へ移行しろ!」

 隊長でもないサイケンが叫んだ。ガラスが隊列を崩したおかげで盾と機関銃のコンボを突破した。雄叫びが連鎖していく。

「カワセミ、ここで大人しくしてなよ」
「ははっ、そりゃないんじゃカリン、俺りゃ肉弾戦しか取り柄ないから……」
「腹撃たれたでしょ!ほら、血いっぱい出てるぜ」
「こんなの……大したことじゃない!」

 傷を左手で強く抑えたカワセミは残った力で立ち上がった。先程の特攻で真っ先に撃たれたのだ。可哀想に。

「しゃー!カリン、お前もこい!」
「……はい」

 カリンは槍を構え、カワセミは刀を抜いて、崩れたライヴと戦闘を開始した。

 「おいおい、倫理ってのはどいつも脳みそカラなんじゃねぇのか?」

 ゴールドグリップはガラスの一撃を予測して退避していた。それからツルギの後方へ移動、ツルギを捕捉すると、一目散に攻撃を仕掛けた。

「ツルギィ!」
「……あれで生きてるか」

 今度は一本の刀で受け止めた。

「アリエ、俺の援護を頼む」
「了解」

 アリエは刀に切り替えてツルギの隣についた。

 続いてツルギがゴールドグリップの手を掴んで引き込む、ゴールドグリップも予想外だったが、怯まず体当たり。
 完璧なタイミングで瞬間移動をしたツルギの後でアリエがスキルを使用した。

「おい、連携完璧か?」
「快刀乱麻の一刀『エーテルドライブ』」

 煌めく黒い刀が彼の体を斬り裂いた。ゴールドグリップは物理ダメージよりも自分のエーテル場が斬られたのだと理解した。自慢の強靭なエーテル場をこうもあっさり乱されるとは、恐れ入ったようだ。


ーーーーーー

「はぁ……はぁ、あと……少し!」

 頂上にたどり着いた時には水を欲しいだけのんで、大の字になって寝ていた。

「ふぅー疲れた」
「訓練よりマシでしょ」
「まぁね」
「さ、この平な先に行きましょ」

 キリカの手を掴んで立ち上がる。ようやく壁を登りきった。さっさと進んで報告してやろう。彼らもいつまでも時間稼ぎでは可哀想だ。

「それにしても……広すぎだな」
「そうだね。黒くて平坦な壁の上、この下って密に詰まってるのかな?」
「多少空間があってもおかしくないよな、兵士がゾロゾロで出来たし」

 キリカも少し息が荒い、少し無理しているか?準備運動として良かったかもしれない。

「あれは……」

 キョウスケが正面約100メートルの位置にロックオンした。誰もそこにはいない。

「キリカ、止まろう」
「え?でも……」
「……誰かいる」
「スキャン開始」

 透明化の魔術が剥がれていく。姿を現したのは黒い鎧の男、中年のおっさんが立派な剣を持ち出してどうしたんだい?

「……ついに来たかD9」
「あんたは!」

『カミセ』Enemy!
相対レベル:20(回避補正:20)
・武器:仮想神剣verβ(全防御系貫通、自動修復)
・防具:仮想王の鎧(魔術無効、防御力強化LV.9)
・NO.K2:personal eyes!
他スキャンを実行できません。

「私がこの世界の支配者、カミセである」

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