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カルと使い魔
校長の提案
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「人間界へ留学…?」
「ああ、留学金は学校が全額負担。留学家庭への辻褄合わせは魔法で行う。どうだ?行って見る気はないかね?期間は二年間だ」
私の目の前には人間界の風景と思われるパンフレットが置かれている。校長室に入って最初に見せられたものだ。
「あの、なんで私なんですか?人間界に興味のある生徒は他にもいるじゃないですか」
私は確かに人間界へ興味があった。なんでも、人間界には魔法が存在しないというのだ。魔法が存在しない代わりに「カガク」というよくわからないものが発達しているらしい。しかし、私が人間界に行ってみたいなど誰にも告げたことはない。私が選出された意味が理解できなかった。
「カル、君は今日やっと魔法が使える兆しが見えてきたようだね。そこでだ、まだ魔法になじみのない君なら魔法がない世界に慣れやすいと思ったのだ。魔法が使えないことによるストレスも溜まりにくいだろう」
「…」
「しかもこの留学はただの観光ではないのだ。このところ、半下界では魔法派と体術派が対立している傾向がある。それに比べ、魔法という便利なものがないにもかかわらず、人間界は平和だという。つまり今回の留学では人間界がどうして平和なのか、どんな生活をしているのかを調べてきてほしいのだ。そこで頭脳成績トップの君が選出されたのだよ、カル」
遠回しに指摘される魔法が使えない事実。留学を薦められたきっかけは所詮そのことが理由だったのだ。
こみ上げてくる熱いものをぐっと堪え、私は「考えさせてください」と答えた。
「締め切りは二日後だ。短い期間だがしっかり決めてくれ」
「はい」
私はパンフレットを握りしめ校長室を後にした。
「何の話だったの?なんか落ち込んでるみたいだけど」
「ううん、何でもない。それよりちょっと親に連絡するから影の中で眠ってて。聞かれたくないの」
「?おう。わかった」
ハクガが素直に影に入って行ったのを確認すると、私は机の上のピンクの小箱から紫色の石を取り出した。
親に相談なんていつぶりだろう…。
生まれつき魔法も体術も苦手だった私。両親は優しかったが、たまに落とす影の顔は嫌でもわかっていた。極力迷惑をかけないように、心配をかけないように生きてきた。
そんなことを思いながら私は石に向かって母の名前を告げる。すると石は綺麗に輝き、四角いスクリーンを映し出した。そこに映ったのは紛れもない母の姿だ。
この石はもともと魔力を保持している不思議な石で、魔力を持たない者にでも使用ができる通信アイテムだ。体術派の人もこれは共通に使われているらしい。このような自らの魔力を必要としないアイテムは無系統アイテムと呼ばれている。
「久しぶり、お母さん」
「カルじゃない!久しぶりね、急にどうしたの?」
懐かしい声に少しだけ暖かな気持ちになる。しかし今から話す内容のことを考えると再び気が重くなる。
「あのねお母さん、ついさっきね、校長先生に呼ばれて、全額学校負担で人間界へ留学しないかって言われたの」
「まあ!いいチャンスじゃない!」
「…」
母は案の定、留学を前向きに捉えた。小さい頃から母は遠回しに私を人間界へ連れて行くことを提案していた。私のために言ってくれていたのはわかっていた。しかし今はそのことに引っかかるものがあった。それが何か、私は未だにわかっていない。
私は深く息を吸うと覚悟を決めた。
「私、人間界、行ってみるよ」
「ああ、留学金は学校が全額負担。留学家庭への辻褄合わせは魔法で行う。どうだ?行って見る気はないかね?期間は二年間だ」
私の目の前には人間界の風景と思われるパンフレットが置かれている。校長室に入って最初に見せられたものだ。
「あの、なんで私なんですか?人間界に興味のある生徒は他にもいるじゃないですか」
私は確かに人間界へ興味があった。なんでも、人間界には魔法が存在しないというのだ。魔法が存在しない代わりに「カガク」というよくわからないものが発達しているらしい。しかし、私が人間界に行ってみたいなど誰にも告げたことはない。私が選出された意味が理解できなかった。
「カル、君は今日やっと魔法が使える兆しが見えてきたようだね。そこでだ、まだ魔法になじみのない君なら魔法がない世界に慣れやすいと思ったのだ。魔法が使えないことによるストレスも溜まりにくいだろう」
「…」
「しかもこの留学はただの観光ではないのだ。このところ、半下界では魔法派と体術派が対立している傾向がある。それに比べ、魔法という便利なものがないにもかかわらず、人間界は平和だという。つまり今回の留学では人間界がどうして平和なのか、どんな生活をしているのかを調べてきてほしいのだ。そこで頭脳成績トップの君が選出されたのだよ、カル」
遠回しに指摘される魔法が使えない事実。留学を薦められたきっかけは所詮そのことが理由だったのだ。
こみ上げてくる熱いものをぐっと堪え、私は「考えさせてください」と答えた。
「締め切りは二日後だ。短い期間だがしっかり決めてくれ」
「はい」
私はパンフレットを握りしめ校長室を後にした。
「何の話だったの?なんか落ち込んでるみたいだけど」
「ううん、何でもない。それよりちょっと親に連絡するから影の中で眠ってて。聞かれたくないの」
「?おう。わかった」
ハクガが素直に影に入って行ったのを確認すると、私は机の上のピンクの小箱から紫色の石を取り出した。
親に相談なんていつぶりだろう…。
生まれつき魔法も体術も苦手だった私。両親は優しかったが、たまに落とす影の顔は嫌でもわかっていた。極力迷惑をかけないように、心配をかけないように生きてきた。
そんなことを思いながら私は石に向かって母の名前を告げる。すると石は綺麗に輝き、四角いスクリーンを映し出した。そこに映ったのは紛れもない母の姿だ。
この石はもともと魔力を保持している不思議な石で、魔力を持たない者にでも使用ができる通信アイテムだ。体術派の人もこれは共通に使われているらしい。このような自らの魔力を必要としないアイテムは無系統アイテムと呼ばれている。
「久しぶり、お母さん」
「カルじゃない!久しぶりね、急にどうしたの?」
懐かしい声に少しだけ暖かな気持ちになる。しかし今から話す内容のことを考えると再び気が重くなる。
「あのねお母さん、ついさっきね、校長先生に呼ばれて、全額学校負担で人間界へ留学しないかって言われたの」
「まあ!いいチャンスじゃない!」
「…」
母は案の定、留学を前向きに捉えた。小さい頃から母は遠回しに私を人間界へ連れて行くことを提案していた。私のために言ってくれていたのはわかっていた。しかし今はそのことに引っかかるものがあった。それが何か、私は未だにわかっていない。
私は深く息を吸うと覚悟を決めた。
「私、人間界、行ってみるよ」
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