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第21章 登校
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次の日、拓人は学校を休んだ。
理由は単純、頭痛と体のだるさがあったからだ。
「おいおい、昨日の戦闘が体にきたのか?そんなことでいちいちダウンしてたらこの先やっていけないぞ」
「わかってるよ」
拓人は布団に入ったままモルテの言葉を噛み締める。確かに昨日の戦闘は精神と体力をボロボロにされた。この先の戦闘も強い者しか勝ち上がってこないのだろう。今自分が生きているのは運が良かったのと咲がいてくれたおかげだ。創始者とアンジェリーナの二人に合わない確率もゼロではない。また会ってしまったら今度こそ殺されるかもしれない。
拓人は悪い想像をして身震いした。
「怖いか?」
「うん。怖いよ」
拓人はモルテに背を向けたまま答えた。モルテはそれを笑うこともなく、ベッドの端に腰掛けた。
「何が怖い?自分が死ぬことか?でもお前には即死攻撃っていう最強とも言える能力があるじゃないか」
拓人はやはりモルテの感覚は少しずれていると感じ、バレないようにため息をついた。
「自分が死ぬっていうのももちろん怖いよ。でも、他人をこの手で殺すのはもっと怖い。咲は考え方を変えろって言ってくれたけど、そう簡単にはできない。剣を握るたび本当は手が震えてるんだ。モンドを刺した時の重みが、冬の叫び声が、いつまでも消えないんだ…」
普通に生きていれば経験することのなかったはずの恐怖、苦しみ。忘れようとすればするほど記憶に深く刻まれてしまう。
「俺の能力がお前を困らせてるのか…」
モルテは自らの手を見つめた。
「モルテが悪いんじゃないよ。この能力がなかったら僕は今頃この世界から消えていただろうからね。悪いのはこのゲームを生み出した創始者ってやつだ」
「…」
モルテは何も答えず拓人の部屋には沈黙が満ちていった。
**************
翌日、体調を持ち直した拓人はいつも通り登校した。
「おはよう拓人!昨日体調崩してたんだって?今日まで休んでたらお見舞いにでも行ってやろうと思ってたんだよ」
教室に入るなり話しかけてきたのは海だった。海の元気な笑顔を見ているとこの残酷が現実が嘘であったかのように思えてくる。拓人は席に着くと海と話しながら今日の時間割を確かめた。
「あ、あの…宇宮くん」
「あっおはよう、上原さん。何か占う?」
拓人は久しぶりに話しかけてきたクラスメイトに視線を上げた。上原美紗希。たまに拓人の占いをしに来てくれるゆるふわ系の女子生徒だ。
「今日は何のお悩みですか?お嬢様」
海が執事のように冗談めかしてお辞儀をした。美紗希は優しく笑うとちょっと困ったように言葉を続けた。
「あ、あのね、今日は占いじゃないの」
「違うの?」
「うん。昨日の昼休みにね、三年生の先輩?かな…白髪のすごく綺麗な人が教室に来たの。宇宮くん探してたみたいだから伝えとこうと思って」
拓人はそれを聞いて思わず立ち上がった。
「ど、どうした拓人?」
「あ、いや…」
拓人は冷静を取り戻すと静かに席に着いた。
三年生。白髪。心当たりは一人しかいない。
「学校に来たのか…?」
不登校だと言っていた咲。よりによって自分がいない時に学校に来るとは…。
「あ、あの…もしかして、か、彼女…とか…」
「拓人!俺に黙ってずるいぞ!」
「いやいや!そんなんじゃないから!ただの知り合いというか、占いつながりというか…」
拓人はよからぬ二人の想像に首を振った。しかし「そうなんだ」と言う美紗希とは反対に海は疑いの目を向けている。
「違うってば!彼女できたらそれこそ一番に海に伝えてるって!」
「本当だな?」
「本当本当!」
「よろしい」
三人は笑いあった。
こんな日常が続けばいいのにと思う。
非日常なんて望んでいない。
願いなんてなくても幸せは自分の手で作っていける。
こんな綺麗事のようなこと、昔の自分なら思いもしなかっただろう。
向けられる冷たい視線に三人が気づくことはなかった。
理由は単純、頭痛と体のだるさがあったからだ。
「おいおい、昨日の戦闘が体にきたのか?そんなことでいちいちダウンしてたらこの先やっていけないぞ」
「わかってるよ」
拓人は布団に入ったままモルテの言葉を噛み締める。確かに昨日の戦闘は精神と体力をボロボロにされた。この先の戦闘も強い者しか勝ち上がってこないのだろう。今自分が生きているのは運が良かったのと咲がいてくれたおかげだ。創始者とアンジェリーナの二人に合わない確率もゼロではない。また会ってしまったら今度こそ殺されるかもしれない。
拓人は悪い想像をして身震いした。
「怖いか?」
「うん。怖いよ」
拓人はモルテに背を向けたまま答えた。モルテはそれを笑うこともなく、ベッドの端に腰掛けた。
「何が怖い?自分が死ぬことか?でもお前には即死攻撃っていう最強とも言える能力があるじゃないか」
拓人はやはりモルテの感覚は少しずれていると感じ、バレないようにため息をついた。
「自分が死ぬっていうのももちろん怖いよ。でも、他人をこの手で殺すのはもっと怖い。咲は考え方を変えろって言ってくれたけど、そう簡単にはできない。剣を握るたび本当は手が震えてるんだ。モンドを刺した時の重みが、冬の叫び声が、いつまでも消えないんだ…」
普通に生きていれば経験することのなかったはずの恐怖、苦しみ。忘れようとすればするほど記憶に深く刻まれてしまう。
「俺の能力がお前を困らせてるのか…」
モルテは自らの手を見つめた。
「モルテが悪いんじゃないよ。この能力がなかったら僕は今頃この世界から消えていただろうからね。悪いのはこのゲームを生み出した創始者ってやつだ」
「…」
モルテは何も答えず拓人の部屋には沈黙が満ちていった。
**************
翌日、体調を持ち直した拓人はいつも通り登校した。
「おはよう拓人!昨日体調崩してたんだって?今日まで休んでたらお見舞いにでも行ってやろうと思ってたんだよ」
教室に入るなり話しかけてきたのは海だった。海の元気な笑顔を見ているとこの残酷が現実が嘘であったかのように思えてくる。拓人は席に着くと海と話しながら今日の時間割を確かめた。
「あ、あの…宇宮くん」
「あっおはよう、上原さん。何か占う?」
拓人は久しぶりに話しかけてきたクラスメイトに視線を上げた。上原美紗希。たまに拓人の占いをしに来てくれるゆるふわ系の女子生徒だ。
「今日は何のお悩みですか?お嬢様」
海が執事のように冗談めかしてお辞儀をした。美紗希は優しく笑うとちょっと困ったように言葉を続けた。
「あ、あのね、今日は占いじゃないの」
「違うの?」
「うん。昨日の昼休みにね、三年生の先輩?かな…白髪のすごく綺麗な人が教室に来たの。宇宮くん探してたみたいだから伝えとこうと思って」
拓人はそれを聞いて思わず立ち上がった。
「ど、どうした拓人?」
「あ、いや…」
拓人は冷静を取り戻すと静かに席に着いた。
三年生。白髪。心当たりは一人しかいない。
「学校に来たのか…?」
不登校だと言っていた咲。よりによって自分がいない時に学校に来るとは…。
「あ、あの…もしかして、か、彼女…とか…」
「拓人!俺に黙ってずるいぞ!」
「いやいや!そんなんじゃないから!ただの知り合いというか、占いつながりというか…」
拓人はよからぬ二人の想像に首を振った。しかし「そうなんだ」と言う美紗希とは反対に海は疑いの目を向けている。
「違うってば!彼女できたらそれこそ一番に海に伝えてるって!」
「本当だな?」
「本当本当!」
「よろしい」
三人は笑いあった。
こんな日常が続けばいいのにと思う。
非日常なんて望んでいない。
願いなんてなくても幸せは自分の手で作っていける。
こんな綺麗事のようなこと、昔の自分なら思いもしなかっただろう。
向けられる冷たい視線に三人が気づくことはなかった。
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