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第20章 死との境界線
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「塔のカード!私と拓人をフィールドから解放して!」
地に落とされていた塔のカードは、咲の叫びに応えるように淡く輝いた。その瞬間、拓人たちは元の公園へと戻っていた。切りつけられた拓人の傷も嘘のように治っている。
「拓人、走るわよ」
「あ、うん!」
拓人はあの痛みが忘れられず、腕を押さえたまま立ち上がった。そしてモルテをカードに戻すと咲とともに走り出した。
「せっかくの願いをこんなことに使う羽目になるなんて」
「でも咲の判断はすごいよ。よくフィールド解放なんて思いついたね」
「とっさの判断よ。あの創始者がいたからこそ思いついたの」
拓人は初めて創始者に会ったときのことを思い出した。創始者は一方的にフィールドから抜け出したのだ。それを考えると、願いによってフィールドから抜け出せる可能性は大いにあった。
「それにしてもあの二人にはかないそうにないわね」
「ルール破りの創始者と、なぜか僕と同じ能力を持っていたアンジェリーナという女性…」
その時、カードに戻っていたはずのリーチェが不意に実体化し会話に乱入した。
「アンジェリーナっていう女の能力は即死攻撃ではないわ」
「リーチェ、でもあなたが即死能力って言ったんじゃない」
「あの時は即死能力だった」
「どういうことですか?」
咲と拓人は理解が出来ず、走りながら顔を見合わせた。
「拓人は腕を切りつけられただろ?その時に拓人はあいつに能力をコピーされたんだ」
モルテが実体化し、会話に補足を交えた。
脳内に高音が鳴り響かなくなったのを確認し、拓人たちは走るのをやめ、その説明を聞くことにした。
「じゃあアンジェリーナの能力って傷つけた相手の能力をコピーするものなのか?」
「そうなるな。吸収能力だ」
「それじゃあ私たちに勝ち目なんてないじゃない!攻撃を受ければ即死する可能性があるってことでしょ?!私の回復能力もコピーされてしまったら…」
咲が悲鳴じみた声を上げる。最後の栄冠を手にするには二人にも勝つのが絶対条件。あまりにも不利な状況に拓人も言葉を発せないでいた。
「落ち着いて。創始者の能力は相変わらずわからないけど、アンジェリーナの方は傷つけられない限りその能力をコピーされることはないわ。それに今回が異例だとは思うけど、コピーした相手を逃した場合、そのコピー能力はリセットされるものね」
「でも逆にアンジェリーナに負ければそのコピー能力はこのゲームに終止符が打たれるまで有効となる。アンジェリーナの尋常じゃない行動速度も過去に敗れた誰かのものだろうな」
「じゃあ僕の能力はもうアンジェリーナにはないってことか…」
拓人はリーチェとモルテの話すことを順に整理し、呟いた。
「それでも私たちじゃ…」
「ああ、お前たちじゃなくても勝つことはほぼ不可能だろうな」
咲は力なくうな垂れた。モルテとリーチェもこればかりは何も解決方法が浮かばないようだった。拓人も同じく、励ますような言葉をかけてあげることもできない。
四人はしばらくその場に立ち止まっていた。
**************
「あ~あ、逃しちゃったか」
「もともと殺す気なんてなかったんでしょう?」
静かな公園で創始者とアンジェリーナは拓人たちが去っていった方向を見つめて笑みを浮かべた。
「殺す気はなかったさ。殺したら意味がない。今回は今回で楽しめたけど」
「あたしも久々に最強とも取れる能力に出会ったわ。でも即死能力なんてあなたらしくないんじゃない?」
再びベタベタとくっついてくるアンジェリーナを振り払うこともなく、創始者は続けた。
「いいんだ。あいつは…モルテはイレギュラーだからな」
最高のオモチャだ。拓人が苦しみながら人を殺していく様は。
そして咲。君は僕の目的のためにもう少し生きていてもらわなければいけない。
創始者は何もなかった目の前の空間に電子的なパネルを出現させた。そこには数々の赤い点と、それに沿うように文字が書かれていた。
そして「umiya takuto」「kurobara saku」の名前を見つけると満足そうに笑ってそのパネルを閉じた。
地に落とされていた塔のカードは、咲の叫びに応えるように淡く輝いた。その瞬間、拓人たちは元の公園へと戻っていた。切りつけられた拓人の傷も嘘のように治っている。
「拓人、走るわよ」
「あ、うん!」
拓人はあの痛みが忘れられず、腕を押さえたまま立ち上がった。そしてモルテをカードに戻すと咲とともに走り出した。
「せっかくの願いをこんなことに使う羽目になるなんて」
「でも咲の判断はすごいよ。よくフィールド解放なんて思いついたね」
「とっさの判断よ。あの創始者がいたからこそ思いついたの」
拓人は初めて創始者に会ったときのことを思い出した。創始者は一方的にフィールドから抜け出したのだ。それを考えると、願いによってフィールドから抜け出せる可能性は大いにあった。
「それにしてもあの二人にはかないそうにないわね」
「ルール破りの創始者と、なぜか僕と同じ能力を持っていたアンジェリーナという女性…」
その時、カードに戻っていたはずのリーチェが不意に実体化し会話に乱入した。
「アンジェリーナっていう女の能力は即死攻撃ではないわ」
「リーチェ、でもあなたが即死能力って言ったんじゃない」
「あの時は即死能力だった」
「どういうことですか?」
咲と拓人は理解が出来ず、走りながら顔を見合わせた。
「拓人は腕を切りつけられただろ?その時に拓人はあいつに能力をコピーされたんだ」
モルテが実体化し、会話に補足を交えた。
脳内に高音が鳴り響かなくなったのを確認し、拓人たちは走るのをやめ、その説明を聞くことにした。
「じゃあアンジェリーナの能力って傷つけた相手の能力をコピーするものなのか?」
「そうなるな。吸収能力だ」
「それじゃあ私たちに勝ち目なんてないじゃない!攻撃を受ければ即死する可能性があるってことでしょ?!私の回復能力もコピーされてしまったら…」
咲が悲鳴じみた声を上げる。最後の栄冠を手にするには二人にも勝つのが絶対条件。あまりにも不利な状況に拓人も言葉を発せないでいた。
「落ち着いて。創始者の能力は相変わらずわからないけど、アンジェリーナの方は傷つけられない限りその能力をコピーされることはないわ。それに今回が異例だとは思うけど、コピーした相手を逃した場合、そのコピー能力はリセットされるものね」
「でも逆にアンジェリーナに負ければそのコピー能力はこのゲームに終止符が打たれるまで有効となる。アンジェリーナの尋常じゃない行動速度も過去に敗れた誰かのものだろうな」
「じゃあ僕の能力はもうアンジェリーナにはないってことか…」
拓人はリーチェとモルテの話すことを順に整理し、呟いた。
「それでも私たちじゃ…」
「ああ、お前たちじゃなくても勝つことはほぼ不可能だろうな」
咲は力なくうな垂れた。モルテとリーチェもこればかりは何も解決方法が浮かばないようだった。拓人も同じく、励ますような言葉をかけてあげることもできない。
四人はしばらくその場に立ち止まっていた。
**************
「あ~あ、逃しちゃったか」
「もともと殺す気なんてなかったんでしょう?」
静かな公園で創始者とアンジェリーナは拓人たちが去っていった方向を見つめて笑みを浮かべた。
「殺す気はなかったさ。殺したら意味がない。今回は今回で楽しめたけど」
「あたしも久々に最強とも取れる能力に出会ったわ。でも即死能力なんてあなたらしくないんじゃない?」
再びベタベタとくっついてくるアンジェリーナを振り払うこともなく、創始者は続けた。
「いいんだ。あいつは…モルテはイレギュラーだからな」
最高のオモチャだ。拓人が苦しみながら人を殺していく様は。
そして咲。君は僕の目的のためにもう少し生きていてもらわなければいけない。
創始者は何もなかった目の前の空間に電子的なパネルを出現させた。そこには数々の赤い点と、それに沿うように文字が書かれていた。
そして「umiya takuto」「kurobara saku」の名前を見つけると満足そうに笑ってそのパネルを閉じた。
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