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第19章 別れ
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「やあ、君たち」
不意にかけられた声に拓人たちは同時に振り返った。
日が沈みかけた暗がりに、その人物はシルエットとして立っていた。その声に、拓人は表情を歪ませる。
「この子たちが前言ってた例の子?」
しかし、次に聞こえてきたのは聞き覚えのない女性の声だった。
「そうだよ」
その人物は街灯の下へと姿を現した。
「ゲームの創始者…」
咲が漏らすように呟く。拓人はそっと息を飲んだ。脳内では消えたばかりの高音が再びうるさく鳴り響いている。
「こんばんは」
そしてその創始者と腕を組むようにして立っていたのは、モンドと呼ばれていた女性ではなく、モデルのような容姿の外国人女性だった。
「戦闘勝利おめでとう」
唖然とする拓人たちに創始者は場に合わない拍手を添える。そして言葉を続けた。
「そんなに警戒するなよ。俺は勝利を祝いに来ただけさ。それにしてもよくそんな子供相手に勝てたね。君なら戦闘を躊躇うと思っていたよ」
「馬鹿に…しやがって…!」
拓人は唇を噛んだ。今すぐにでも剣を手に飛び込んでいきたいが、そのためにはフィールドを展開するのが絶対条件だ。無駄な戦いはしたくないし、前回のようにカードの女性、モンドが飛び出してきたら…。
拓人は思い出した苦い記憶を振り払うように首を振った。
「何の用なの?からかいに来たのなら帰らせてもらうわ。あなたとは話したくもないの。拓人いきましょう」
「可愛げのない子ね。何でこんな子なんかに構っているの?もっと面白い子が沢山いるでしょう?例えばあたしとか」
「これはあいつじゃないとダメなんだ。アンジェリーナ、俺に意見するなら…」
「嫌ねぇ。わかってますってば」
アンジェリーナという女性は媚びた声を上げながら創始者にベタベタとくっついている。咲はそんな気持ち悪い情景を横目に流すと、リーチェと共に背を向けて帰路を歩き出した。拓人もその後を追おうと足を動かした…その時だった。
「フィールド展開」
拓人たちの世界は再び色を変えた。咲は瞬時にリーチェから剣を受け取り振り返った。拓人も怒りの表情をあらわにし、受け取った剣を力強く握りしめて振り返った。
「あいつもカード所持者か!」
モルテが表情を歪ませる。
「おそらくあのアンジェリーナっていう人は創始者とパートナー契約を結んでいる…。あのカード人物の容姿は…法王かしら。強さも能力もわからない以上むやみに飛び込んでいくのは危険ね」
「モルテ、創始者の方のカード能力は何なんだ?前に使用してたからわかるはずだろ?」
「それが…全然わからないんだ。リーチェ、お前は見当つくか?」
「全く」
モルテとリーチェは顔を見合わし困ったような表情を浮かべた。
「創始者だからって何でもありっていうの?」
咲は対峙する人物を見つめた。いつ攻撃されてもいいように神経を張り詰めているのがわかる。
「あたしあの拓人っていう少年の能力が欲しいわ」
アンジェリーナはその手に握った刀の刃をゆっくりと舐めた。次の瞬間、
「…っ?!」
拓人の右腕は大きく切り裂かれていた。
「拓人!」
「うあああああっ!」
拓人は今まで感じたこともないような激痛に声を上げた。すでに取り落とされた剣を拾う力はない。咲がすかさず治癒のために拓人に駆け寄る。
「あっははははは!いいねいいねぇ!」
「キャハッ!あたしの正宗ちゃんも喜んでるわぁ!」
フィールド内に響く創始者の狂人めいた笑い声。アンジェリーナは赤く染まった刀を舐めながらその場を見下ろしていた。しかしすぐにアンジェリーナはこちらに攻撃を仕掛けてきた。
「咲!」
リーチェの声に咲は剣を構えた。剣と刀がぶつかり合い、その音をフィールドに響かせた。
「咲!攻撃を受けてはダメよ!今その刀には確率即死能力がかかっている!」
「えっ?!」
咲は対峙している人物を見つめた。アンジェリーナは口を血で汚し、まるで怪物のようだ。
即死攻撃は拓人の能力のはず…。どうして…。
咲は思考を巡らせる。即死能力に、今は何もしてこないがいつ攻撃してくるかわからない創始者。拓人の治癒もまだ終わっていない。今創始者が動けば拓人も私も確実に死ぬ。
どうすれば…。
「力の差は圧倒的でしょう?」
「っ!拓人に近づかないで…!」
あろうことか創始者はモンドとともに拓人に近づき言葉を吐いた。武器は握っていないが創始者である限りどんな能力、攻撃方法があるのかわかったものではない。モルテもリーチェもルールに乗っ取り創始者に攻撃をすることはできない。
「やめて…もう見たくないの…」
パートナーが死んでいく姿を。
「痛いだろ?苦しいだろ?いっその事死んでみる?」
創始者はそう言ってモンドから長い武器を手に取った。
「光栄だと思えよ。俺がこのハルバードを見せることは滅多にないんだから。君の絶望的な顔を見るのが楽しみだ。ね?モルテ君?」
「モルテ…?」
拓人は視線だけをモルテに向けた。そこには呆然と立ち尽くす死神の姿があった。
「ゲームオーバーだ。さらば宇宮拓人くん」
不意にかけられた声に拓人たちは同時に振り返った。
日が沈みかけた暗がりに、その人物はシルエットとして立っていた。その声に、拓人は表情を歪ませる。
「この子たちが前言ってた例の子?」
しかし、次に聞こえてきたのは聞き覚えのない女性の声だった。
「そうだよ」
その人物は街灯の下へと姿を現した。
「ゲームの創始者…」
咲が漏らすように呟く。拓人はそっと息を飲んだ。脳内では消えたばかりの高音が再びうるさく鳴り響いている。
「こんばんは」
そしてその創始者と腕を組むようにして立っていたのは、モンドと呼ばれていた女性ではなく、モデルのような容姿の外国人女性だった。
「戦闘勝利おめでとう」
唖然とする拓人たちに創始者は場に合わない拍手を添える。そして言葉を続けた。
「そんなに警戒するなよ。俺は勝利を祝いに来ただけさ。それにしてもよくそんな子供相手に勝てたね。君なら戦闘を躊躇うと思っていたよ」
「馬鹿に…しやがって…!」
拓人は唇を噛んだ。今すぐにでも剣を手に飛び込んでいきたいが、そのためにはフィールドを展開するのが絶対条件だ。無駄な戦いはしたくないし、前回のようにカードの女性、モンドが飛び出してきたら…。
拓人は思い出した苦い記憶を振り払うように首を振った。
「何の用なの?からかいに来たのなら帰らせてもらうわ。あなたとは話したくもないの。拓人いきましょう」
「可愛げのない子ね。何でこんな子なんかに構っているの?もっと面白い子が沢山いるでしょう?例えばあたしとか」
「これはあいつじゃないとダメなんだ。アンジェリーナ、俺に意見するなら…」
「嫌ねぇ。わかってますってば」
アンジェリーナという女性は媚びた声を上げながら創始者にベタベタとくっついている。咲はそんな気持ち悪い情景を横目に流すと、リーチェと共に背を向けて帰路を歩き出した。拓人もその後を追おうと足を動かした…その時だった。
「フィールド展開」
拓人たちの世界は再び色を変えた。咲は瞬時にリーチェから剣を受け取り振り返った。拓人も怒りの表情をあらわにし、受け取った剣を力強く握りしめて振り返った。
「あいつもカード所持者か!」
モルテが表情を歪ませる。
「おそらくあのアンジェリーナっていう人は創始者とパートナー契約を結んでいる…。あのカード人物の容姿は…法王かしら。強さも能力もわからない以上むやみに飛び込んでいくのは危険ね」
「モルテ、創始者の方のカード能力は何なんだ?前に使用してたからわかるはずだろ?」
「それが…全然わからないんだ。リーチェ、お前は見当つくか?」
「全く」
モルテとリーチェは顔を見合わし困ったような表情を浮かべた。
「創始者だからって何でもありっていうの?」
咲は対峙する人物を見つめた。いつ攻撃されてもいいように神経を張り詰めているのがわかる。
「あたしあの拓人っていう少年の能力が欲しいわ」
アンジェリーナはその手に握った刀の刃をゆっくりと舐めた。次の瞬間、
「…っ?!」
拓人の右腕は大きく切り裂かれていた。
「拓人!」
「うあああああっ!」
拓人は今まで感じたこともないような激痛に声を上げた。すでに取り落とされた剣を拾う力はない。咲がすかさず治癒のために拓人に駆け寄る。
「あっははははは!いいねいいねぇ!」
「キャハッ!あたしの正宗ちゃんも喜んでるわぁ!」
フィールド内に響く創始者の狂人めいた笑い声。アンジェリーナは赤く染まった刀を舐めながらその場を見下ろしていた。しかしすぐにアンジェリーナはこちらに攻撃を仕掛けてきた。
「咲!」
リーチェの声に咲は剣を構えた。剣と刀がぶつかり合い、その音をフィールドに響かせた。
「咲!攻撃を受けてはダメよ!今その刀には確率即死能力がかかっている!」
「えっ?!」
咲は対峙している人物を見つめた。アンジェリーナは口を血で汚し、まるで怪物のようだ。
即死攻撃は拓人の能力のはず…。どうして…。
咲は思考を巡らせる。即死能力に、今は何もしてこないがいつ攻撃してくるかわからない創始者。拓人の治癒もまだ終わっていない。今創始者が動けば拓人も私も確実に死ぬ。
どうすれば…。
「力の差は圧倒的でしょう?」
「っ!拓人に近づかないで…!」
あろうことか創始者はモンドとともに拓人に近づき言葉を吐いた。武器は握っていないが創始者である限りどんな能力、攻撃方法があるのかわかったものではない。モルテもリーチェもルールに乗っ取り創始者に攻撃をすることはできない。
「やめて…もう見たくないの…」
パートナーが死んでいく姿を。
「痛いだろ?苦しいだろ?いっその事死んでみる?」
創始者はそう言ってモンドから長い武器を手に取った。
「光栄だと思えよ。俺がこのハルバードを見せることは滅多にないんだから。君の絶望的な顔を見るのが楽しみだ。ね?モルテ君?」
「モルテ…?」
拓人は視線だけをモルテに向けた。そこには呆然と立ち尽くす死神の姿があった。
「ゲームオーバーだ。さらば宇宮拓人くん」
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