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第18章 生き残り
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恐怖の言葉が脳内にこだまする。
「な、何…?!」
冬が苦しみ出し、星を放つのをやめた。パートナーの咲にも能力発動が聞こえたのか、剣を交わすのをやめ、冬と距離をとる。
「即死攻撃に抑制能力が付与されて、中途半端に苦しませる結果になってしまったようね…」
咲が哀れんだ表情で言う。
「そんな…」
「あなたが罪悪感を覚える必要はないわ。すべてあの子の自業自得よ」
冬は口から血を吐いた。
「何なのよ、これ…!」
すでに冬は戦える状況ではない。とどめを刺すのはいつでも可能だった。しかし拓人にその勇気は未だない。だからと言って咲にまた最後の一撃を任せてしまうことはそれこそ罪悪感が募った。
咲はすでにとどめを刺そうと剣の構えをとっている。そこで、拓人は一つの考えにたどりついた。いや、考えというよりは咲が動いてしまう前にと思ったとっさの案だった。
「咲、冬を戦闘不能状態に持っていくことはできるか?」
「何を言っているの?あの子をさらに苦しめるつもり?それにあなたの能力がもう一度発動したら次はどうなるかわからないわよ」
「でもあの子はまだこれからの将来があるんだ。能力のおかげで命拾いした少女の命を無理に奪う必要はない」
「…甘いのね、あなたは」
咲はため息とともに呆れたような微笑をこぼした。
「戦闘不能条件は動けないほどの手足負傷。あなたはそれを受け入れられる?」
「残酷なことをしてしまうけど、背に腹は変えられない」
「わかったわ。あなたは私のサポートをして。万が一能力が発動してしまったら困るから。手足は私が狙う」
「でもそれじゃ、また君に…っ」
「これが一番の方法よ」
「あの子たちのチームワークは完璧とは言えないけれど、いい方ね」
「ああ。でも拓人はまだ戦闘に抵抗があるようだ」
リーチェとモルテは二人の後ろ姿を見て言葉を交わした。そしてリーチェはモルテの言葉に強気な笑みを浮かべるとその言葉に補足した。
「いいのよ。それが普通の人間だもの」
拓人と咲はコンタクトを取り合うと再び冬の方向へ駆け出した。
「く、るな…!」
冬は拓人たちに向かって星を放つ。しかしそれは先程ほど正確に拓人たちを狙ったものではなかった。拓人の能力が効いているのか視界もブレているのだろう。その放たれた星たちから咲をかばうように拓人は剣でそれらを防いでいった。その隙に咲は冬の足元へ剣を振り下ろした。
「うああああ!」
痛みに悶絶しながら冬は地に背後から倒れこんだ。足の傷からもう立ち上がることは不可能だろう。
「冬!」
トルレが状況を見ていられなくなったのか、冬に駆け寄り抱き起こした。そんな二人に咲は近づき、見下ろしてこう言った。
「安心して。あなたを殺しはしない。拓人の慈悲よ。フィールド展開したことをこの痛みで償いなさい」
咲は冬の両腕に刃を振り下ろした。
その時の絶叫を拓人は一生忘れることはないだろう。心に穴が空いたかのように、剣を片手にその場を見つめていた。動けなかったのだ。自分の下した判断だというのに。
拓人は何度目かになる自分の弱さを実感した。
「私の負け…そん、な…」
冬は最後に虚しく空に手を伸ばした。トルレは塔のカードに戻り、静かに地に舞い降りた。咲はカードを拾い上げると拓人の方へと歩いてきた。剣から滴る赤い血が点々と地に道を作っていく。フィールドは解除され、世界は元の色を取り戻した。
「冬!」
拓人はともに元の世界へ戻ってきた冬に駆け寄った。冬の手足には傷はなく、静かに倒れていた。しかししっかりと息はしている。
「気絶状態よ。フィールド内で受けた傷は元の世界に戻ればなかったことになる。死んだ者のように」
そう言われて拓人は今までの傷も治っていたということに気がついた。逆にここに血まみれの人間が倒れていたらそれこそ大問題だろう。
「この子はこれからどうなるんだ?」
「どうもならないわ。このデスゲームのことは記憶から消えて無くなる。それだけ」
「記憶からなくなる?それじゃ…」
その瞬間、咲は拓人に詰め寄った。
「死ぬことなく負ければゲームから脱せられるって思ったでしょ?あの絶叫を忘れたわけじゃないわよね?私と初めて会った時も殺してくれと言っていたけれど、いうのは簡単よ。ただ、あなたの言葉には覚悟がない。あの想像もできない痛みにあなたは耐えることができる?その後忘れる痛みだとしても人間なら皆怖がるものよ」
拓人は突然の叱咤に少し驚きつつもその言葉の重みは痛々しく心に突き刺さっていた。
「あなたは今を生きるの。このゲームから脱せようなんて考えないことね」
「ごめん」
「わかってくれればいいのよ。それに私とあなたはパートナーよ。片方が欠けたら終わり。そうでしょう?」
「うん」
そう言って振り向いた咲はとても優しげに微笑んでいた。
「な、何…?!」
冬が苦しみ出し、星を放つのをやめた。パートナーの咲にも能力発動が聞こえたのか、剣を交わすのをやめ、冬と距離をとる。
「即死攻撃に抑制能力が付与されて、中途半端に苦しませる結果になってしまったようね…」
咲が哀れんだ表情で言う。
「そんな…」
「あなたが罪悪感を覚える必要はないわ。すべてあの子の自業自得よ」
冬は口から血を吐いた。
「何なのよ、これ…!」
すでに冬は戦える状況ではない。とどめを刺すのはいつでも可能だった。しかし拓人にその勇気は未だない。だからと言って咲にまた最後の一撃を任せてしまうことはそれこそ罪悪感が募った。
咲はすでにとどめを刺そうと剣の構えをとっている。そこで、拓人は一つの考えにたどりついた。いや、考えというよりは咲が動いてしまう前にと思ったとっさの案だった。
「咲、冬を戦闘不能状態に持っていくことはできるか?」
「何を言っているの?あの子をさらに苦しめるつもり?それにあなたの能力がもう一度発動したら次はどうなるかわからないわよ」
「でもあの子はまだこれからの将来があるんだ。能力のおかげで命拾いした少女の命を無理に奪う必要はない」
「…甘いのね、あなたは」
咲はため息とともに呆れたような微笑をこぼした。
「戦闘不能条件は動けないほどの手足負傷。あなたはそれを受け入れられる?」
「残酷なことをしてしまうけど、背に腹は変えられない」
「わかったわ。あなたは私のサポートをして。万が一能力が発動してしまったら困るから。手足は私が狙う」
「でもそれじゃ、また君に…っ」
「これが一番の方法よ」
「あの子たちのチームワークは完璧とは言えないけれど、いい方ね」
「ああ。でも拓人はまだ戦闘に抵抗があるようだ」
リーチェとモルテは二人の後ろ姿を見て言葉を交わした。そしてリーチェはモルテの言葉に強気な笑みを浮かべるとその言葉に補足した。
「いいのよ。それが普通の人間だもの」
拓人と咲はコンタクトを取り合うと再び冬の方向へ駆け出した。
「く、るな…!」
冬は拓人たちに向かって星を放つ。しかしそれは先程ほど正確に拓人たちを狙ったものではなかった。拓人の能力が効いているのか視界もブレているのだろう。その放たれた星たちから咲をかばうように拓人は剣でそれらを防いでいった。その隙に咲は冬の足元へ剣を振り下ろした。
「うああああ!」
痛みに悶絶しながら冬は地に背後から倒れこんだ。足の傷からもう立ち上がることは不可能だろう。
「冬!」
トルレが状況を見ていられなくなったのか、冬に駆け寄り抱き起こした。そんな二人に咲は近づき、見下ろしてこう言った。
「安心して。あなたを殺しはしない。拓人の慈悲よ。フィールド展開したことをこの痛みで償いなさい」
咲は冬の両腕に刃を振り下ろした。
その時の絶叫を拓人は一生忘れることはないだろう。心に穴が空いたかのように、剣を片手にその場を見つめていた。動けなかったのだ。自分の下した判断だというのに。
拓人は何度目かになる自分の弱さを実感した。
「私の負け…そん、な…」
冬は最後に虚しく空に手を伸ばした。トルレは塔のカードに戻り、静かに地に舞い降りた。咲はカードを拾い上げると拓人の方へと歩いてきた。剣から滴る赤い血が点々と地に道を作っていく。フィールドは解除され、世界は元の色を取り戻した。
「冬!」
拓人はともに元の世界へ戻ってきた冬に駆け寄った。冬の手足には傷はなく、静かに倒れていた。しかししっかりと息はしている。
「気絶状態よ。フィールド内で受けた傷は元の世界に戻ればなかったことになる。死んだ者のように」
そう言われて拓人は今までの傷も治っていたということに気がついた。逆にここに血まみれの人間が倒れていたらそれこそ大問題だろう。
「この子はこれからどうなるんだ?」
「どうもならないわ。このデスゲームのことは記憶から消えて無くなる。それだけ」
「記憶からなくなる?それじゃ…」
その瞬間、咲は拓人に詰め寄った。
「死ぬことなく負ければゲームから脱せられるって思ったでしょ?あの絶叫を忘れたわけじゃないわよね?私と初めて会った時も殺してくれと言っていたけれど、いうのは簡単よ。ただ、あなたの言葉には覚悟がない。あの想像もできない痛みにあなたは耐えることができる?その後忘れる痛みだとしても人間なら皆怖がるものよ」
拓人は突然の叱咤に少し驚きつつもその言葉の重みは痛々しく心に突き刺さっていた。
「あなたは今を生きるの。このゲームから脱せようなんて考えないことね」
「ごめん」
「わかってくれればいいのよ。それに私とあなたはパートナーよ。片方が欠けたら終わり。そうでしょう?」
「うん」
そう言って振り向いた咲はとても優しげに微笑んでいた。
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