異世界メイドに就職しました!!

ウツ。

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魔人の復活

戦闘の最中

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ルークの合図で皆が皆、一斉に動き出した。剣士たちが魔神の巨体に立ち向かい、魔術師たちは後方から援助する。ルークは剣士に混じり、その魔剣を振るっていた。その中でルークは後方へ回り込む機会を今か今かと見計らっているように見える。私はただただこの場所で作戦がうまくいくことだけを祈っていた。
「何の作戦のつもりなのかしら。私と魔神一体のみにこんな大勢で襲い掛かるなんて…なんて情けない」
女王様は必死に戦う戦士たちの姿を見つめながら笑いを浮かべる。その姿にもはや一国の王の威厳はなかった。
それとは対照的に、ルークたちが狙っているのはあくまで魔神だ。女王様を傷つけないよう、どこか意識をしているのが動きでわかる。
「危ない…っ!」
魔神の大きな拳が地面に振り下ろされた。数人の衛兵たちが巻き添えをくらい、砂けむりの中、悶え苦しんだ。
「せめて治癒魔法だけでも使えれば…」
私は自分の無力さに唇を噛む。そして頭に浮かんだのはいつも私が怪我をした時に助けてくれたあのほわほわメイドちゃん…。
「アマリリス…」
「治癒魔法処置!治癒魔法が使える者!応急手当を!」
「はい!」
数人の魔術師が後衛から外れ、たった今拳が振り下ろされた場所へと向かう。しかし魔神は多方向から攻撃を受けていながら、その動きを見逃さなかった。
再び拳が振り上げられる。
どうすることもできない私は思わず目をそらした。
しかし、しばらくしても地面を叩きつける大きな音は響かなかった。
ゆっくり目を開けると、そこには防御魔法でシールドを展開している3人の魔術師がいた。その中には一際目立つ小さい少女、ミラもいる。この瞬間を想定して動いていたのだろう。
衛兵たちは無事後退し、治癒を受けることができた。
一方、振り下ろされていた手の反対側では、衛兵含め剣士たちが必死に応戦していた。先ほどの攻撃で魔神は意識が拳に集中していたのか、衛兵たちが応戦している方の腕の動きは鈍い。それを上手に取り、衛兵たちは剣を手にその腕に攻撃を仕掛けている。しかし硬い鱗のような皮膚に覆われた腕はそう易々とダメージを受けない。薄く傷のような線が走るだけだ。
「このままじゃ埒があかない…。攻撃を一箇所に絞ろう。狙うのは上腕部の真ん中辺り、中でも一番傷が大きく入っているあの部分だ。いいな!」
「はっ!」
ルークが的確に指示を出すと、衛兵たちはそれに続き体制を変えた。そして二人一組となり、その傷の部分へ飛びかかっていく。
傷は先ほどとは比べものにならないほどのスピードで深さを増していく。人間では赤を伴うその液体はなぜか緑色だった。
「切り落とす!全員下がれー!」
順に攻撃が終わった後、後方に待っていたルークが大声とともに腕へ飛びかかった。
「はああああ!」
辺りに強風が吹き荒れた。疾風の剣士の力だ。
風の音以外、何も聞こえなかった。風が収まるとそこには片腕を切り落とされた魔神が大声をあげて叫んでいた。
「魔神でも痛みは感じるのか…」
誰かがそう呟いた。
「こっちの腕は戦闘不能だ!次は足へ移る!前方に倒れるように攻撃をしろ!そっちの者は平気か?!戦闘を離脱した者は何人いる?!」
「大怪我で動けないのは2人です!大丈夫です!まだやれます!」
ルークはひび割れた地面の上で力強く立つ衛兵たちを確認すると、大きく頷いた。
「承知した!くれぐれも無茶はするな!」
「はい!」
「魔神さん、頑張ってくれなきゃ困るわ」
女王様は自分が攻撃されないのをいいことに、魔神に治癒魔法を施し始めていた。

私の足は勝手に動き出していた。

誰も声をかけてこなかった。いや、私が気づかなかっただけかもしれない。
気づくと私は女王様の前に立っていた。

「何をしに来たのスピカ、いいえ、九ノ葉楓。あなたはここにいるだけ足手まといよ?」
女王様は手を止め、私に向き直った。
「そうかもしれません。でも何もしないで見ているだけなんて、私には似合わないので」
女王様は可愛らしく笑った。あの出会った頃のように。
その手には黒い闇が広がっている。きっと攻撃魔法だ。
しかし私はその攻撃魔法がすぐ放たれないことはわかっていた。
女王様は今はこうであれ、性格はそう簡単には変わらない。今までの経験上、私の話を聞いてからその攻撃魔法を発動させるだろう。
「それで?何か話があるのかしら。こんな戦場をかいくぐってきたのだものね。治癒魔法をかけていなかったらきっと今頃殺していたわ」
うふふ、と女王様は黒い言葉に華を添える。私は真面目な表情を崩さぬまま、意を決してこう言い放った。

「女王様、少し世間話をしませんか?」
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