異世界メイドに就職しました!!

ウツ。

文字の大きさ
37 / 44
魔人の復活

終焉

しおりを挟む
「はあ?何を言っているのかしら?この状況が理解できて?」
その言葉が返ってくることは安易に想像できていた。逆の立場だったら私でも同じ言葉を返しただろう。
「女王様、小さいころ、スピカとは仲が良かったんですか?」
私は女王様の言葉に答えを返さぬまま、笑って問うた。
実はこの会話に特に意味はない。私はひたすら女王様を自分のペースに引き込むことだけを考えていた。
それはある目的を達成させるため…。
女王様はその表情を歪ませながら少し間をおいて答えた。
「そうね、仲は良かったわ。一緒に遊んだり、魔法を教えあったり…」
そう言って、女王様は顔伏せた。
「いつからだったかしら…成長するにつれて、スピカと私の魔力の差は離れていった。闇属性しか使えない私と、光属性と闇属性の両方が使える伝説の星属性と謳われるスピカ。次期女王としての待遇の違い。私はだんだんスピカを疎ましく感じていったわ」
一度出てきた記憶は口をついて零れていく。ここは戦場であるのに、私と女王様だけがいつものように、あの頃のように語っていた。女王様の意識は今完全に私へと向いている。
「そしてルークとの出会いを機に、その思いが爆発したんですか…」
「そうね…」
私は話を続けようと話題を探す。その時、待っていた言葉が大きく響いた。
「倒れるぞ!」
それは足への攻撃作戦が完了した合図だった。女王様はしまったと慌てて顔を上げ、私は自分の作戦も達成されたと悟った。
そう、私の作戦は女王様に治癒魔法を使わせないこと。ただそれだけだった。
「騙したわね…」
「乗った女王様が悪いんですよ!」
私はそう笑って言い返すと、悔しげに唇を噛む女王様を突き飛ばすようにしてその場から離れた。
その直後、先ほどの場所に地響きを立てながら魔神が倒れこんだ。それはまさにうつ伏せの状態。後ろ首の大きなツノもすぐに確認ができた。
絶好のチャンスだ。
数人の衛兵たちが核部分の皮膚を切り裂きに飛びかかる。大きな体のせいか魔神はすぐに起き上がれずにいた。
「スピカ!どうして私を…!」
そして驚いた表情の女王様に答える代わりに、私はそっと微笑んだ。そしてあの人へ大きく叫んだ。
「ルーク!いっけええええ!」
素早く衛兵たちの中から駆け出したその人は迷うことなく背後のツノへと向かっていく。そして魔神を囲むように立っていた魔術師たちが魔法発動体制をとった。
切り裂かれた皮膚の下、輝く宝石のようなものが顔を出していた。あれが魔神の弱点、核で間違い無いだろう。
「おりゃあああああ!!!!」
大声とともにルークが剣を振りかぶる。風が巻き起こるのがわかった。
魔剣は核に突き刺さり、高く派手な音を立てた。そして砕けるような音が反響して響く。
「やった!」
皆が皆、喜びに声を上げた。そして魔術師たちは一斉に封印魔法を唱える。魔神の大きく吠える声が闇夜に響き渡った。
上手くいくと思われたその時、核の部分が異様に光を放ち始めた。
「なんだ…?!」
「全員下がれー!」
そう叫んだのはルークではなくウィルだった。とっさの指示にみんなが魔神から距離を取る中、ウィルはなぜか魔神の方向へ駆け出していった。
「ルーク様も早く!」
「君…何を…っ」
「時間がないんです!無礼を承知で失礼しますよ!」
ウィルはそう言うとルークを後方へ突き飛ばした。唖然とするルークを衛兵たちが退避させる。
「ウィル?!」
私の声が聞こえたのか、ウィルは私の方を向き微笑んだ。その目にはなぜか涙が伝っている。そしてその手には父の形見だという留め具を握っていた。留め具の宝石は、魔神の核の光と共鳴するように輝いていた。
眩し過ぎる光の中、ウィルは口の動きだけで何かを呟いた。

「スピカさん、大好きです」

その微笑みを塗りつぶすように光は一層明るさを増すと、何かの爆発音とともに消えていった。
そして静けさを取り戻しかけた時、魔術師たちが一斉に封印魔法の韻を踏んだ。

「ソー・ズィーゲル!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...