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第3章 隣国へ
青の王国
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「ごちそうさまでした」
ロゼとエリスは手を合わせてそう言った。
「とても美味しかったです!」
「そう言ってもらえてよかったわ。どうぞ他の商品も見ていってくださいな」
奥さんは笑顔でそういうと食器を片付けに奥へ戻っていった。
ロゼはエリスと共に店内に並べられたお菓子を見つめた。
「何か買っていく?」
「はい。メイド仲間たちに何かお土産をと思って…。あ!このクッキー可愛い!」
ロゼは商品の中に可愛いアイシングクッキーを見つけた。ハートや星型のクッキーが綺麗にお砂糖でデコレーションされている。個別包装のものから箱入りのものまで取り揃えているようだ。
ロゼはその箱入りのものを一つ手に取るとレジへと向かった。
「アルたちいませんね…」
買い物を済ませ店を出た二人は辺りを見渡した。人こそ少なくなっていたが、そこにアルたちの姿はない。
「人に流されて先に行ってしまったのかな…」
エリスは困ったように呟いた。
「どうしますか?探しに行きます?それともここで待ちます?」
「そうだなぁ…。でもアルたちは僕たちがこの店に入ったのは知らないわけだし、探しに行く方が確実かな」
「じゃあそうしましょう!」
急いで歩き出そうとしたロゼをエリスは止めた。
「せっかくだからお店回りながら探そう。時間ももったいないしね」
エリスに言われ、それもそうかと思いロゼはエリスの横を一緒に歩き出した。
「エリス王子は沢山の方達と仲がいいんですね。お店で声をかけてくる方達もそこまで緊張してるようには見えませんでした」
ロゼはガナルさんやさっきのお菓子屋さんの奥さんを思い出した。二人ともどこか親しそうに話していた情景が蘇る。
「僕は街の人との交流を大事にしてるんだ。今日のお祭りに出店してくれている店舗はほとんど挨拶に回ったよ。街の人たちがどんな生活をしているのか把握するのも大切な仕事だからね」
「すごいです。直接接することもやはり大事なことなんですね」
「うん。自分で見に行ってみないと気づかないことも沢山あるからね」
エリスは辺りを見渡しながらそう言った。
「そういえばイザベラさんから聞いたんですけど、この国をまとめているのはエリス王子だとか。お若いのにすごいなって思います」
「実質国を治めてるのはまだ僕の父である国王なんだけど、いつ何があっても僕に政権を交代できるように少しずつ仕事を引き継がせてもらってるんだ。これでもまだまだ勉強中の身だよ」
そこでエリスはロゼの方を見た。
「ロゼさん、僕からも質問いいかな?」
「え?あ、はい!すみません、私ばかり質問して」
「いいのいいの。興味を持ってもらえるのは嬉しいしね。僕もロゼさんのことはよく知りたいし。で、率直に聞くけど…」
「アルとはどういう関係なの?」
唐突なその質問にロゼは思わず転びそうになった。顔が一気に熱くなっているのがわかる。
「いやー、最初会った時からアルと敬語使わずに話してたし、ただの王子とメイドの関係ではないなーって思ってたんだよね。もしかして恋人とか?」
ロゼは慌ててエリスの言葉を否定した。
「ちちち違いますよ!アルに敬語を使わないのはちょっと過去の成り行きというか…」
「じゃあそのこと詳しく聞かせてよ」
エリスとロゼは大きな広場に出るとベンチに腰掛けて過去のことを話し出した。
「そんなことが…。辛いこと思い出させちゃったね…」
「いえ、大丈夫です。むしろこんなしんみりさせちゃってすみません」
ロゼは過去にあったことを話し終えると少しだけ顔を伏せた。しかし今はもう泣かない。自分は一人じゃないから。
「気にしなくていいよ。話してくれて嬉しかった。悲しくなった時にアルがいなかったら僕にも頼ってよ。って言っても隣国だからそう簡単にはいかないけどね。それに大体はアルがそばにいるだろうし」
「ありがとうございます」
ロゼは顔を上げて微笑んだ。
「それでさ、ロゼはアルのことどう思ってるの?」
「え?聞きます?それ?」
「いいじゃん。聞かせてよ。アルには内緒にしておくからさ」
ロゼは一瞬考えた後、はっきりこう言った。
「これから先もそばにいたいって思う人です」
****************
話が終わり再び通りを歩いていると、ロゼの目が一軒の店に止まった。そのテントで出店している店には「青の王国」の文字が書かれている。
「気になるの?」
「はい。寄ってもいいですか?」
「もちろん」
ロゼとエリスはそのテント店に近づいた。
「いらっしゃい。ここは幻の消滅都市、青の王国をテーマにした雑貨屋だよ。っとお嬢さん、綺麗な瞳をお持ちだね。まるでこの店の宝石のようだ」
そう言って店主らしい親父さんは商品の中から青い宝石を手にとって見せてきた。見渡すと商品は全て青い石や青い宝石を使った雑貨になっている。それは深い海を連想させるとても美しいものだった。
「青の王国ってあの研究者たちが必死に解明を続けている海の底に沈んだ都市のことか。それをテーマにした雑貨とはまた面白いな」
二人はしばらくそのお店の商品を惹かれるように眺めていた。
ロゼとエリスは手を合わせてそう言った。
「とても美味しかったです!」
「そう言ってもらえてよかったわ。どうぞ他の商品も見ていってくださいな」
奥さんは笑顔でそういうと食器を片付けに奥へ戻っていった。
ロゼはエリスと共に店内に並べられたお菓子を見つめた。
「何か買っていく?」
「はい。メイド仲間たちに何かお土産をと思って…。あ!このクッキー可愛い!」
ロゼは商品の中に可愛いアイシングクッキーを見つけた。ハートや星型のクッキーが綺麗にお砂糖でデコレーションされている。個別包装のものから箱入りのものまで取り揃えているようだ。
ロゼはその箱入りのものを一つ手に取るとレジへと向かった。
「アルたちいませんね…」
買い物を済ませ店を出た二人は辺りを見渡した。人こそ少なくなっていたが、そこにアルたちの姿はない。
「人に流されて先に行ってしまったのかな…」
エリスは困ったように呟いた。
「どうしますか?探しに行きます?それともここで待ちます?」
「そうだなぁ…。でもアルたちは僕たちがこの店に入ったのは知らないわけだし、探しに行く方が確実かな」
「じゃあそうしましょう!」
急いで歩き出そうとしたロゼをエリスは止めた。
「せっかくだからお店回りながら探そう。時間ももったいないしね」
エリスに言われ、それもそうかと思いロゼはエリスの横を一緒に歩き出した。
「エリス王子は沢山の方達と仲がいいんですね。お店で声をかけてくる方達もそこまで緊張してるようには見えませんでした」
ロゼはガナルさんやさっきのお菓子屋さんの奥さんを思い出した。二人ともどこか親しそうに話していた情景が蘇る。
「僕は街の人との交流を大事にしてるんだ。今日のお祭りに出店してくれている店舗はほとんど挨拶に回ったよ。街の人たちがどんな生活をしているのか把握するのも大切な仕事だからね」
「すごいです。直接接することもやはり大事なことなんですね」
「うん。自分で見に行ってみないと気づかないことも沢山あるからね」
エリスは辺りを見渡しながらそう言った。
「そういえばイザベラさんから聞いたんですけど、この国をまとめているのはエリス王子だとか。お若いのにすごいなって思います」
「実質国を治めてるのはまだ僕の父である国王なんだけど、いつ何があっても僕に政権を交代できるように少しずつ仕事を引き継がせてもらってるんだ。これでもまだまだ勉強中の身だよ」
そこでエリスはロゼの方を見た。
「ロゼさん、僕からも質問いいかな?」
「え?あ、はい!すみません、私ばかり質問して」
「いいのいいの。興味を持ってもらえるのは嬉しいしね。僕もロゼさんのことはよく知りたいし。で、率直に聞くけど…」
「アルとはどういう関係なの?」
唐突なその質問にロゼは思わず転びそうになった。顔が一気に熱くなっているのがわかる。
「いやー、最初会った時からアルと敬語使わずに話してたし、ただの王子とメイドの関係ではないなーって思ってたんだよね。もしかして恋人とか?」
ロゼは慌ててエリスの言葉を否定した。
「ちちち違いますよ!アルに敬語を使わないのはちょっと過去の成り行きというか…」
「じゃあそのこと詳しく聞かせてよ」
エリスとロゼは大きな広場に出るとベンチに腰掛けて過去のことを話し出した。
「そんなことが…。辛いこと思い出させちゃったね…」
「いえ、大丈夫です。むしろこんなしんみりさせちゃってすみません」
ロゼは過去にあったことを話し終えると少しだけ顔を伏せた。しかし今はもう泣かない。自分は一人じゃないから。
「気にしなくていいよ。話してくれて嬉しかった。悲しくなった時にアルがいなかったら僕にも頼ってよ。って言っても隣国だからそう簡単にはいかないけどね。それに大体はアルがそばにいるだろうし」
「ありがとうございます」
ロゼは顔を上げて微笑んだ。
「それでさ、ロゼはアルのことどう思ってるの?」
「え?聞きます?それ?」
「いいじゃん。聞かせてよ。アルには内緒にしておくからさ」
ロゼは一瞬考えた後、はっきりこう言った。
「これから先もそばにいたいって思う人です」
****************
話が終わり再び通りを歩いていると、ロゼの目が一軒の店に止まった。そのテントで出店している店には「青の王国」の文字が書かれている。
「気になるの?」
「はい。寄ってもいいですか?」
「もちろん」
ロゼとエリスはそのテント店に近づいた。
「いらっしゃい。ここは幻の消滅都市、青の王国をテーマにした雑貨屋だよ。っとお嬢さん、綺麗な瞳をお持ちだね。まるでこの店の宝石のようだ」
そう言って店主らしい親父さんは商品の中から青い宝石を手にとって見せてきた。見渡すと商品は全て青い石や青い宝石を使った雑貨になっている。それは深い海を連想させるとても美しいものだった。
「青の王国ってあの研究者たちが必死に解明を続けている海の底に沈んだ都市のことか。それをテーマにした雑貨とはまた面白いな」
二人はしばらくそのお店の商品を惹かれるように眺めていた。
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