青の王国

第4章 国の発展

補助金政策

「アル様、次はこちらの書類にサインをお願いします」
「わかった」
翌日、まだ日が昇って間もない頃、アルはエドから束にまとめられた大量の書類を受け取った。その書類には家の住所、名前、収入額、そして補助金として配布される予定の額が漏れることなく書かれていた。
アルは一枚づつしっかり目を通すとその書類にサインをした。
「しばらく視察に行ってなかっとはいえ、ここまで貧富の差が広がってしまっていたとは…。国民位は辛い思いをさせてしまったな…」
暗く顔を落とすアルにエドははっきりこういった。
「何もアル様だけの責任ではありません。今まで苦しい思いをさせてしまった分、これからしっかりと国民にも目を向けていきましょう。そのためにはまずこの書類を片付けることが最善です」
「そうだな」
アルはペンを持ち直すと再び書類に目を通し始めた。



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「はい。これが明日の日程表ね」
「ありがとうございます」
アルが書類のサインに追われている頃、ロゼはイザベラから明日の日程表を受け取っていた。
「明日の朝８時に出発だから遅れないように。それからロゼが城に戻ってくるのはお昼１２時ごろよ。私たちとは別行動になるから間違えないでね」
書類には１２時ロゼ帰城、アル視察へ、と書かれていた。
「わかりました」
「メイド長にはまだ伝えられてないから仕事を抜けることと、１２時頃には戻るということをお伝えしておいてね」
「はい」
イザベラはそういうと仕事へ戻るべくその場を後にした。それと入れ替わるようにメイド長が顔を出した。
「メイド長」
「ロゼ、何かしら？」
「あの、明日のことなんですけど、私補助金政策に伴い一軒の家をアル様たちと訪問しに行くので朝８時からお昼１２時まで仕事を抜けさせていただきます」
ロゼはそう言って先ほどもらった日程表を見せた。
アレッサはその日程表に軽く目を通すとメモ帳を取り出してそのことを簡単に記載した。
「わかったわ。気をつけて行ってくるのよ」
「はい」
「さ、じゃあ仕事に戻って」
アレッサに許可をもらい、ロゼは中断していた窓拭きの仕事を再開した。



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その日の昼、ロゼたちはバルコニーの見える城外の広場に集られていた。そこにはメイドや衛兵を始め、令嬢や国民の人々までが集まっていた。そういうまでもない、補助金政策の発表だ。
しばらくしてバルコニーに顔を出したのは大臣とアルだった。大臣とアルは国民たちに軽く手を振った後、真剣な面持ちで口を開いた。
「これより、一ヶ月前から議論を続けていた補助金政策を発表する」
大臣がそう述べると周りの国民から歓声があがった。きっとその声は今まで苦しい生活をしてきた人たちなのだろう。
「補助金配布対象は月１０万ペル以下の労働者。支給額は月１５万ペルとする」
アルは最終決定となった金額を国民に伝えた。それを聞いた国民から再び歓声が上がった。
その歓声に応えるように大臣とアルは手を振ると静かに城内へと戻っていった。
その後もロゼたちの周りからは喜びの声が聞こえていた。喜びに溢れる国民たちを沈めるように衛兵たちが順に国民たちを城の外へと誘導し始めた。
「さ、城内に戻るわよ」
アレッサの指示でロゼたちも人並みをかき分けながら城内へと戻っていった。

「国民の方達、喜んでたわね」
「ああ。これでまた国が豊かになれば嬉しいな」
バルコニーから戻ったアルは待っていたイザベラ、エドと合流した。
「今日のこと、あの歓声忘れないようにしておきなさい」
「はい、大臣」
大臣は静かにそう述べるとその場を後にした。
「昼食後は視察についての話し合いね。この政策についてで手一杯だったから急ピッチで進める必要があるわね。エド、視察担当になっている衛兵たちを昼食後に会議室に集めておいてくれる？」
「はい。わかりました」
イザベラの指示をエドは真面目な面持ちで受け取り、もっていた書類をアルに渡した。アルは礼を言うとその書類を手に一度部屋の方へ戻っていった。