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第4章
ふくごの郷④麻田村へ
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「うまい!」
夜行列車の車両中に、烈生の闊達な声が響き渡る。
「うまい!うまいッ!!」
駅弁の美味さに、感動が止まらないのだ。
「あ…あの、穂村。ちょっと、周りにご迷惑…」
「うまいッッ!!」
あまりの大声に、向かいの席で駅弁を広げる村田が、おろおろと注意するのだが、とても耳に入る様子はない。
「…放っておけ。胸に仕舞うことなど、できん奴だ」
烈生の隣で、月衛が文庫本で口元を覆って、小さく欠伸する。
「いや、そうは言っても…。お前もよくこんなのの側で、うたた寝できるな…」
村田の生き別れの妹から届いた短い電報。助けて、との訴えに、ミステリー研究会の総力をあげて取り組むべく、A県に向かう道中である。烈生は、“寝候”の銀螺も一緒に、と張り切っていたが、「やだね。俺ァ、シティー・ボーイなの」と言い置いて逃げてしまった。
東京府からA県へは、汽車で丸一晩かかる。汽車の旅ともなれば、お楽しみは各地の特色溢れる駅弁だ。車窓の外に売りに来る弁当屋から、いそいそと何種類も買い求める烈生の横で、月衛は関心もなさそうに文庫本に読みふけっていた。そして、烈生の横から漬け物を少し戴いた後は、窓に寄りかかってトロトロとうたた寝し始めてしまったのである。
「これの叫びは、俺の養分でな」
呆れかえったような村田に、薄い唇の端で笑って、月衛はまた瞳を閉じた。
朝靄たなびく駅で降りれば、そこは瑞穂町。小さな田舎町だが、一応、目抜き通りがあって、宿屋や町役場、郵便局などが並んでいる。麻田村は、この麓の町から山に入った奥にあるという。
「腹が減ったな!朝飯を出すところはないのか!?」
静かな町並みに烈生の声が響いた。通りの家の犬が吠え、雄鳥が対抗するかのように声を張り上げる。
「うーん…俺も、実際に来るのは初めてで」
村田が、きょろきょろと通りを見回した。
「駅前の宿屋が、湯気を立てていた。頼めば、賄いでも食わして貰えるんじゃないか?」
月衛の発案で、駅まで引き返す。宿屋を覗けば、ちょうど飯屋も兼ねているという。愛想のよい女将が、学生さんなら半額でよいと、飯をてんこ盛りにしてくれた。
「ときに、女将!俺達は麻田村を目指しているのだが、ここからどう行けばよいのだろうか!?」
烈生が、おかわりの飯椀を突き出す。
「麻田村、ねェ…。随分と奥に行きなさるね。ウチの亭主が荷馬車を出しているから、それに乗っかって行くといいよ」
女将が不思議そうな顔で、飯をよそう。
「お菊という、十七になる娘がいるはずだが」
月衛が茶を啜って問いかけた。
「へェ、お菊、お菊ねェ…。あたしは麻田村へは行ったことないから、わからないけど」
「あの!フキという女の娘で!俺、兄です。母…フキのことは何か、わかりますか?」
村田が食い下がった。8歳で生き別れになった母は、もう顔もよく憶えていないが、ふとしたときに、歌ってくれた歌や抱き上げられた感触などを思い出すのだ。ちょうど、年の頃で言えば、この女将と同じくらいではないだろうか。
「いいえェ…。麻田村の人達は、あまり麓には降りてこんのよ。村長さんなんかは時々いらっしゃるけど。女はねェ…山道も危ないし、村から出さんようにしているんじゃないのかね」
3人が顔を見合わせる。随分と謎めいた村のようだ。
少し陽が高くなる頃、宿屋の亭主が荷馬車を出してくれた。山道に入れば、うるさいほどの蝉の声が降ってくる。
「ご主人は、麻田村へはよく行くんですか?」
村田が、馬の手綱を取る亭主に話しかける。
「そうさね…郵便を預かったり、ちょっとした買い物なんか代わってやったりね」
「じゃ、じゃぁ…あの、お菊という娘のことは?」
「さぁてね。カカアにも聞かれたが…。儂も、麻田村へは入口までしか行ったことないから」
村田が、しょんぼりと肩を落とした。
「…ご主人。麻田村からは、電報など打てるのか?」
ふと気付いたように、月衛が問う。郵便を瑞穂町から運ぶということは、電報も町まで降りないと打てないのではないか。
「いやいや、町に降りないと。村長さんからウチで預かることもあるがね」
ふむ、と藍色の瞳が考え込む。すると、お菊は村長に頼んで電報を打ってもらったのだろうか?
「お客さん方、学生さんだってねェ。麻田村へは、何か、学校の調べ物ですかい?」
今度は亭主が話しかけてきた。
「いや、ここにいる村田の妹から、助けを求める電報が来たのでな!馳せ参じた次第だ!!」
烈生が胸を張る。
「へェ、助けを…。何だろうねェ、金でも足りなくなったか」
「カネ?」
村田が聞き返す。まさか、金の無心だとは思わなかったが。
「ええ、ええ。麻田村は、もともと小さい寒村だったんですがねェ。ここ3年くらいで急に贅沢な物を頼まれることが多くなって。年頃の娘が好みそうな反物や小間物なんかもねェ」
亭主は、面白くなさげに、馬に鞭を当てた。
古ぼけた道祖神の前で、荷馬車は停まった。
「この道をずーっと上がって行くんでさァ。いつもは、麻田村のモンがここまで出てくるんだが」
亭主は、木立の間に伸びる細い獣道を指差した。礼を言い、駄賃を渡して、3人して獣道を見上げる。
「いよいよ、秘村といった風情になってきたな!」
すっかり探検気分の烈生が、鳶色の瞳を輝かせて獣道に分け入る。村田も、さすがにここまでとは思わなかったようだ。ごめん、とかなんとかゴニョゴニョ言いながら斜面に踏み出した。
「…暗くなる前に着ければいいんだがな」
月衛が溜息をついた。
獣道を追って、斜面を上がること1時間。唐突に目の前が開ける。峠の眼下には畑や瓦葺きの民家が並んでいた。
「ここが…麻田村…」
ここに、母と妹がいるのか。村田は逸る気持ちを抑えられない足取りで、峠を駆け下りる。
「あの、すみません!麻田村の人ですか!?」
ちょうど、畑道具を担いだ大柄な男達が先を歩いていたので、最後尾の男に声を掛けた。男は振り向きもしない。追いついた烈生と月衛が、並んで歩き出した途端。
「オ…アアアアアア!!」
男が雄叫びを上げ、月衛に飛びかかった。細い身体を地べたに押し倒して、馬乗りになる。
「およしっ!ロク!!こっちに来な!!」
風を切る音と共に、男の背に鞭が鳴る。男が悲鳴を上げて、月衛を解放する。駆け戻った先には、長鞭を携えた女がいた。
「あんりゃァ…。女子と間違えたんね。すみませんねェ」
村田がホッと息をつく。どうやら、話が通じるようだ。
「へェ、お菊の兄さん」
村長の片江兵衛門が、ゆったりとキセルを吸う。長鞭の女が案内してくれた村長宅では、突然の来訪者に驚きながらも、座敷に上げて茶や饅頭を振る舞ってくれた。
「はい、東京から出戻ったフキの息子です。母は、妹は元気に暮らしているでしょうか」
村田が、身を乗り出さんばかりに尋ねる。
「へェへェ、出戻り女のフキ。フキは、もう三月ほど前に亡くなりましてね」
村長が、灰吹きをポンと打つ。
「お菊は、1人じゃ暮らせんから。ウチで預かっとります」
月衛が、ちらと庭に目をやる。もうだいぶ陽は傾いてきている。薄暗がりの夕闇の中、大仰な山水の岩陰にヒョコッと何かが隠れた。
「お客さん、客間が用意できましたよゥ」
長鞭の女が廊下から声を掛ける。どうやら、村長宅の女中のようだ。3人が荷物を持って、女の案内についていく。女はシヅと名乗った。
「さっきは、すみませんねェ。びっくりなさったでしょう」
月衛を労るようにシヅが声を掛ける。
「あれは…村の男か?尋常な様子ではなかったが」
あのような巨体で暴れられてはかなわない。
「いいえェ、あれは人じゃありません。“ふくご”ですよ」
シヅがホッホッと笑った。
「…“ふくご”?」
月衛が瞳を瞬く。
「ええ、妖怪です。普通は、雄は生まれてすぐにタマを抜いてしまうんだけども、あれは力仕事用でタマを抜いとらんものだから、気性が荒くて」
村田と烈生も、目をぱちくりさせる。
「でも、悪さできんように、サオは切ってありますからねェ。大丈夫ですよ」
3人を客間に案内したシヅは、そう言い置いて襖を閉じてしまった。
「不思議な…。妖怪を使って力仕事とは!?」
烈生が、鞄から浴衣を取り出す。麻田村には宿屋はないそうで、村長宅に泊めてもらえることになったのだ。
「まぁ…妖怪や狐狸の類いが、人に実りをもたらす伝承はよくあるが」
月衛が応じる。だが、あくまで伝承であって、今現在進行中の話など聞いたこともない。
「でも、妖怪って…、並みの人間に見えるモンなのか?なんか、こう、霊能者とかじゃないと」
村田が首を捻る。
「さてな。少なくとも、伝承では妖怪に出くわすのは“並みの人間”が多いが」
月衛が、しらっとした顔で混ぜっ返した。のっぺらぼうに会って、ひっくり返ったり。一つ目小僧に仰天したり。河童と相撲を取ったり。鶴の精と結婚したり。妖怪は、常に人の世のすぐそばにいる。
「…サオとタマ…って、やっぱり」
村田が、ブルッと身を震わせた。男としては身に迫る話だ。
「まるで家畜の話をしているようだったな」
牛馬なら、去勢すれば大人しく、扱いやすくなるし、肉も柔らかくなる。繁殖に使うのでもなければ、生まれてすぐ去勢するのも不思議はない、が…。
藍の瞳がじっと考え込んだ。
夜行列車の車両中に、烈生の闊達な声が響き渡る。
「うまい!うまいッ!!」
駅弁の美味さに、感動が止まらないのだ。
「あ…あの、穂村。ちょっと、周りにご迷惑…」
「うまいッッ!!」
あまりの大声に、向かいの席で駅弁を広げる村田が、おろおろと注意するのだが、とても耳に入る様子はない。
「…放っておけ。胸に仕舞うことなど、できん奴だ」
烈生の隣で、月衛が文庫本で口元を覆って、小さく欠伸する。
「いや、そうは言っても…。お前もよくこんなのの側で、うたた寝できるな…」
村田の生き別れの妹から届いた短い電報。助けて、との訴えに、ミステリー研究会の総力をあげて取り組むべく、A県に向かう道中である。烈生は、“寝候”の銀螺も一緒に、と張り切っていたが、「やだね。俺ァ、シティー・ボーイなの」と言い置いて逃げてしまった。
東京府からA県へは、汽車で丸一晩かかる。汽車の旅ともなれば、お楽しみは各地の特色溢れる駅弁だ。車窓の外に売りに来る弁当屋から、いそいそと何種類も買い求める烈生の横で、月衛は関心もなさそうに文庫本に読みふけっていた。そして、烈生の横から漬け物を少し戴いた後は、窓に寄りかかってトロトロとうたた寝し始めてしまったのである。
「これの叫びは、俺の養分でな」
呆れかえったような村田に、薄い唇の端で笑って、月衛はまた瞳を閉じた。
朝靄たなびく駅で降りれば、そこは瑞穂町。小さな田舎町だが、一応、目抜き通りがあって、宿屋や町役場、郵便局などが並んでいる。麻田村は、この麓の町から山に入った奥にあるという。
「腹が減ったな!朝飯を出すところはないのか!?」
静かな町並みに烈生の声が響いた。通りの家の犬が吠え、雄鳥が対抗するかのように声を張り上げる。
「うーん…俺も、実際に来るのは初めてで」
村田が、きょろきょろと通りを見回した。
「駅前の宿屋が、湯気を立てていた。頼めば、賄いでも食わして貰えるんじゃないか?」
月衛の発案で、駅まで引き返す。宿屋を覗けば、ちょうど飯屋も兼ねているという。愛想のよい女将が、学生さんなら半額でよいと、飯をてんこ盛りにしてくれた。
「ときに、女将!俺達は麻田村を目指しているのだが、ここからどう行けばよいのだろうか!?」
烈生が、おかわりの飯椀を突き出す。
「麻田村、ねェ…。随分と奥に行きなさるね。ウチの亭主が荷馬車を出しているから、それに乗っかって行くといいよ」
女将が不思議そうな顔で、飯をよそう。
「お菊という、十七になる娘がいるはずだが」
月衛が茶を啜って問いかけた。
「へェ、お菊、お菊ねェ…。あたしは麻田村へは行ったことないから、わからないけど」
「あの!フキという女の娘で!俺、兄です。母…フキのことは何か、わかりますか?」
村田が食い下がった。8歳で生き別れになった母は、もう顔もよく憶えていないが、ふとしたときに、歌ってくれた歌や抱き上げられた感触などを思い出すのだ。ちょうど、年の頃で言えば、この女将と同じくらいではないだろうか。
「いいえェ…。麻田村の人達は、あまり麓には降りてこんのよ。村長さんなんかは時々いらっしゃるけど。女はねェ…山道も危ないし、村から出さんようにしているんじゃないのかね」
3人が顔を見合わせる。随分と謎めいた村のようだ。
少し陽が高くなる頃、宿屋の亭主が荷馬車を出してくれた。山道に入れば、うるさいほどの蝉の声が降ってくる。
「ご主人は、麻田村へはよく行くんですか?」
村田が、馬の手綱を取る亭主に話しかける。
「そうさね…郵便を預かったり、ちょっとした買い物なんか代わってやったりね」
「じゃ、じゃぁ…あの、お菊という娘のことは?」
「さぁてね。カカアにも聞かれたが…。儂も、麻田村へは入口までしか行ったことないから」
村田が、しょんぼりと肩を落とした。
「…ご主人。麻田村からは、電報など打てるのか?」
ふと気付いたように、月衛が問う。郵便を瑞穂町から運ぶということは、電報も町まで降りないと打てないのではないか。
「いやいや、町に降りないと。村長さんからウチで預かることもあるがね」
ふむ、と藍色の瞳が考え込む。すると、お菊は村長に頼んで電報を打ってもらったのだろうか?
「お客さん方、学生さんだってねェ。麻田村へは、何か、学校の調べ物ですかい?」
今度は亭主が話しかけてきた。
「いや、ここにいる村田の妹から、助けを求める電報が来たのでな!馳せ参じた次第だ!!」
烈生が胸を張る。
「へェ、助けを…。何だろうねェ、金でも足りなくなったか」
「カネ?」
村田が聞き返す。まさか、金の無心だとは思わなかったが。
「ええ、ええ。麻田村は、もともと小さい寒村だったんですがねェ。ここ3年くらいで急に贅沢な物を頼まれることが多くなって。年頃の娘が好みそうな反物や小間物なんかもねェ」
亭主は、面白くなさげに、馬に鞭を当てた。
古ぼけた道祖神の前で、荷馬車は停まった。
「この道をずーっと上がって行くんでさァ。いつもは、麻田村のモンがここまで出てくるんだが」
亭主は、木立の間に伸びる細い獣道を指差した。礼を言い、駄賃を渡して、3人して獣道を見上げる。
「いよいよ、秘村といった風情になってきたな!」
すっかり探検気分の烈生が、鳶色の瞳を輝かせて獣道に分け入る。村田も、さすがにここまでとは思わなかったようだ。ごめん、とかなんとかゴニョゴニョ言いながら斜面に踏み出した。
「…暗くなる前に着ければいいんだがな」
月衛が溜息をついた。
獣道を追って、斜面を上がること1時間。唐突に目の前が開ける。峠の眼下には畑や瓦葺きの民家が並んでいた。
「ここが…麻田村…」
ここに、母と妹がいるのか。村田は逸る気持ちを抑えられない足取りで、峠を駆け下りる。
「あの、すみません!麻田村の人ですか!?」
ちょうど、畑道具を担いだ大柄な男達が先を歩いていたので、最後尾の男に声を掛けた。男は振り向きもしない。追いついた烈生と月衛が、並んで歩き出した途端。
「オ…アアアアアア!!」
男が雄叫びを上げ、月衛に飛びかかった。細い身体を地べたに押し倒して、馬乗りになる。
「およしっ!ロク!!こっちに来な!!」
風を切る音と共に、男の背に鞭が鳴る。男が悲鳴を上げて、月衛を解放する。駆け戻った先には、長鞭を携えた女がいた。
「あんりゃァ…。女子と間違えたんね。すみませんねェ」
村田がホッと息をつく。どうやら、話が通じるようだ。
「へェ、お菊の兄さん」
村長の片江兵衛門が、ゆったりとキセルを吸う。長鞭の女が案内してくれた村長宅では、突然の来訪者に驚きながらも、座敷に上げて茶や饅頭を振る舞ってくれた。
「はい、東京から出戻ったフキの息子です。母は、妹は元気に暮らしているでしょうか」
村田が、身を乗り出さんばかりに尋ねる。
「へェへェ、出戻り女のフキ。フキは、もう三月ほど前に亡くなりましてね」
村長が、灰吹きをポンと打つ。
「お菊は、1人じゃ暮らせんから。ウチで預かっとります」
月衛が、ちらと庭に目をやる。もうだいぶ陽は傾いてきている。薄暗がりの夕闇の中、大仰な山水の岩陰にヒョコッと何かが隠れた。
「お客さん、客間が用意できましたよゥ」
長鞭の女が廊下から声を掛ける。どうやら、村長宅の女中のようだ。3人が荷物を持って、女の案内についていく。女はシヅと名乗った。
「さっきは、すみませんねェ。びっくりなさったでしょう」
月衛を労るようにシヅが声を掛ける。
「あれは…村の男か?尋常な様子ではなかったが」
あのような巨体で暴れられてはかなわない。
「いいえェ、あれは人じゃありません。“ふくご”ですよ」
シヅがホッホッと笑った。
「…“ふくご”?」
月衛が瞳を瞬く。
「ええ、妖怪です。普通は、雄は生まれてすぐにタマを抜いてしまうんだけども、あれは力仕事用でタマを抜いとらんものだから、気性が荒くて」
村田と烈生も、目をぱちくりさせる。
「でも、悪さできんように、サオは切ってありますからねェ。大丈夫ですよ」
3人を客間に案内したシヅは、そう言い置いて襖を閉じてしまった。
「不思議な…。妖怪を使って力仕事とは!?」
烈生が、鞄から浴衣を取り出す。麻田村には宿屋はないそうで、村長宅に泊めてもらえることになったのだ。
「まぁ…妖怪や狐狸の類いが、人に実りをもたらす伝承はよくあるが」
月衛が応じる。だが、あくまで伝承であって、今現在進行中の話など聞いたこともない。
「でも、妖怪って…、並みの人間に見えるモンなのか?なんか、こう、霊能者とかじゃないと」
村田が首を捻る。
「さてな。少なくとも、伝承では妖怪に出くわすのは“並みの人間”が多いが」
月衛が、しらっとした顔で混ぜっ返した。のっぺらぼうに会って、ひっくり返ったり。一つ目小僧に仰天したり。河童と相撲を取ったり。鶴の精と結婚したり。妖怪は、常に人の世のすぐそばにいる。
「…サオとタマ…って、やっぱり」
村田が、ブルッと身を震わせた。男としては身に迫る話だ。
「まるで家畜の話をしているようだったな」
牛馬なら、去勢すれば大人しく、扱いやすくなるし、肉も柔らかくなる。繁殖に使うのでもなければ、生まれてすぐ去勢するのも不思議はない、が…。
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