勘違いは日常茶飯事!!

椚都無羅

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プロローグ

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ここは魔界。うす気味悪い闇の奥深くにそびえ立つ魔王城で事件は発生した。いつものように悪の所業をおこなっていた大魔王を含む総勢一万の悪魔がたった半日で半壊したのだ。大魔王は魔界の中で最強と呼べる存在。魔王の部下達も相応の実力を持っているはずだ。その者達を容易く倒し、半壊まで追い込むのは相当の実力者であろう。それを見越してか魔王は、各地域に配属させている幹部を魔王城に召集をかけた。

 「一体何者の仕業だ...起きたらこの様だ」

 眉間にしわを寄せ、考え込んでると、流れ弾である火の矢がとんできた

 「ふぅー危ない危ない、お父様気を付けてください」

 汗を拭う仕草をし、ほっと安堵した様子でいる赤髪の美少女は火の矢を軽々と掴んだ。

 「そんな魔法わしには効かないのはしってるだろう」

 嘲笑まみれに一人娘の掴んでいる矢に触れ抹消してみせた。

 「ほらな、わしの加護である中級魔法以下無効がある限り大抵の魔法は効かんよ」

 「さすがお父様。中級魔法以下の攻撃は全て触れた瞬間抹消される。魔王たるお父様にふさわしい加護ですわ」

 魔王である父は娘の前でしか見せない照れくさい表情を浮かべ、娘にニッコリと笑みを浮かべた。

 「お父様がいると魔界は安定ですわね、お父様がいないと強弱の均衡が崩れてしまいます」

 「うぬ。そのためにも、この戦いは負けられない。ここもいつ攻めてくるか分からぬ。幹部が到着するまで十分に警戒を怠らぬことだ」

 娘に悪魔達の援護にまわるように命令を出し、娘は了解しましたといい外へと飛んでいった。魔王は現状把握するために千里眼を使い辺りを見渡した。

 「何っ...いるのは同じ悪魔ではないか。悪魔は全て我が支柱に収めてるはずだ...ッ」

 ありえないものを見てしまい頭をふらつかせた。現状を完全に把握した魔王はこの戦いに勝つことは0に等しいことが分かり、急いでワープゲートを生成した。このままでは我が軍は崩壊してしまい、娘も失ってしまう。そう考えるだけで汗がにじみ出で、力身出でしまう。


  ◆◆◆  ◆◆◆ ◆◆◆

 「魔王様が幹部達をお呼びになりましたわ。あともう踏ん張り頑張っていくわよー!」

 彪雅に飛び降り、喝を入れる勢いで叫んだ

 (さぁーて私もお父様にいい所お見せしませんと)

 気合十分で力が湧き出でくる赤髪の美少女は敵を薙ぎ払っていき、味方に援助もおこない魔王軍のモチベーションはマックスである

 「お嬢様がきたぞー!」

 「これで我が幹部もそろえば鬼に金棒だー!」

 「あともう踏ん張り頑張るぞー!」

 「お嬢様に続けー!」

 言っている事はバラバラであるがどれも魔王様、その娘の事信じての発言である。あともう少しで幹部達がくると思うと疲れていた事も忘れ逆に力がみなぎってくるのだ。

 「前衛から強い魔力を感じます。」

 「全体警戒態勢!!」

 指揮をとっているのは幹部とはいかないものの相当な実力者であるA級悪魔ブリッケである。敵の魔人はほぼ片付き残りは強い魔力をもつ謎の黒影を残すのみだ。ブリッケは、待てと命令し、魔王の娘である赤髪の美少女と一緒に前へ出た。

 「あ、あれは幹部のマモン様ではございませんか!」

 幹部が来たことに安心したブリッケは、マモンの名を呼びながら駆けていった。その様子を見たB級魔人達も安心し警戒態勢を解いた。ブリッケに取り残された赤髪の美少女も安堵し、肩の力を抜いた。

 「マモン様現状をつたえ———」

 何が起きたのか分からずブリッケの首がとんだ。奇襲かとB級悪魔は再び全体に警戒態勢をとった。しかし、赤髪の美少女は全体ではなくある方にのみ警戒をとったのだ。

 「マモン何してるのよ!」  

 「あらら~お嬢様に見られてましたか。作戦では奇襲と見せかけて全員殺すつもりでしたのに~」

 B級悪魔達が絶句してる中、ゆっくりな口調で述べるマモンはそのまま舌をぺろりと舐めブリッケの血を味わいながら答えた。

 「A級悪魔ともなるとなかなかに美味ですな、もうちょっと頂こうかな」

 マモンが一歩足を踏み入れただけで分かる膨大な魔力量、対人するだけでもやっとだがA級悪魔ブリッケがやられてしまった今では私が先陣をきらないと皆がやられてしまう。それだけは阻止しないいけないと思い赤髪の美少女は一歩踏み出した。

 「やめとけよ、お嬢様あんたじゃ僕には勝てないよ。そこらにいる雑魚共もな~。雑魚の血程まずいもんは無いからな、何もしなかったら命まではとらねぇよ。強くなるまでお預けだ~」

 のんびりとした雰囲気で述べるがいう事は残酷で残虐である。

 未だに混乱してる魔王軍だが一緒にいた時間が長く、優しい嬢様の言動ぶりを見て、マモンが我らの敵であると判断した。

 何故幹部であるマモンが魔王様を裏切ったのか疑問に思う赤髪の美少女と悪魔達、しかしそれ以上に今は仲間であるブリッケを殺したマモンが許せなかった。ブリッケはA級悪魔であり、そう簡単には負けることはない。しかしマモンに一撃でやられた。その実力は、目の前で見た者が一番わかってる。勝てないと分かっているが己の心が逃げることを許さないのだ。

 「おまえらー!我らの仲間であるブリックを殺したマモン、そして我が主君である魔王様を裏切ったマモン決して許してはいけない!!」

 「おおぉーー!!!」

 悪魔の一人がそう叫んだ時、悪魔の雄叫びがあちらこちらと鳴り響き、マモンへ攻撃を開始した。呆れ果てたマモンは、腕を横へ振り悪魔軍を一瞬のうちに薙ぎ払った。

 「君たちはまだ弱いから殺さないよ、ちょっと寝ててね~」

 魔法も使わず相手を倒す。これがS級悪魔とB級悪魔の格差なのであろう。しかしそれでも倒れていない悪魔がいた。魔王の一人娘である赤髪の美少女だ。実際立っているのもやっとであるが、その身振りを見せず堂々と立っている。流石魔王の子だ。
 
 「お、お、おおお倒れてない、この中では一番強いのかな、小腹空いちゃったし食べようかな」

 お腹を鳴らしものほしそうにお嬢様を見つめるマモンはゴクリと喉を鳴らした。

 「食べようっと..ちょっとぐらいいいよね」

 舌をさえずり、涎をたらしたマモンは猛スピードでお嬢様に襲いかかってきた。

 「っう..あのスピード避けられない...」

 「いっただきまーす..っぐ」

 お嬢様の首にかじりつこうとしたマモンは急に出現したワープゲートにより吹き飛ばされた。ワープゲートから出てきたのは鎧の上からでも分かる程の強靭な肉体、両法のこめかみから生えている角そして威圧のあるオーラを醸し出していた。

 「おとう、魔王様!!」

 お父様と呼ぼうとしたが計り知れない威圧のあるオーラにあてられ魔界で最強の称号である魔王様と呼ばずにはいられなかったのだ。

 「己、マモン裏切ったな!!」

 「そうですね、はい、うらぎりましたよ~」

 「その口調は変わらぬようだな、へし折ってくれるわ!!」

 「はっはぁ~」

 挑発をしたマモンはすかさず魔法を詠唱し始めたが詠唱を唱え終わると同時にマモンの顔が抹消した。残った体にも容赦なく殴りかかり、遂には原型を留めなくなっていた。

 「はぁー歳はとりたくないもんじゃの」

 赤髪の美少女は言葉もでずただ見てることしか出来なかった。あのS級悪魔マモンが一瞬で殺され、5分で原型を留めない残酷な姿になっているのだ。驚きを隠せないのも無理はない。

 赤髪の美少女はこんなに怒っている姿を初めて見る。仲間を傷つけられ、なにより自分の一人娘が殺されそうになったのだ。本気を出さないと守れない、そう思い自分のリミッターを解除したのだ。今の魔王は誰にも倒せない

 ——はずだった...

「ううぅっ」

 魔王の胸に光の刃が突き刺さった。魔王に当たるという事は上級魔法以上という事であろう。不意を突いたとはいえ普通なら避けれるものを避けられなかった。歳と疲労のせいであろう。

 「魔王様ぁぁ」

 倒れた父の姿を見た赤髪の美少女は泣き叫んだ。先程の無類の強さとは対に弱々しい姿である。邪念を抱き刃のとんできた先を睨むとそこには予想だにしていない顔ぶれが勢ぞろいしていた。  

 「何故だ何故だぁ揃いも揃って!!」

 「私達元魔王幹部はある方についていくことに決めましたので、すいませんが脱退させていただきます...そしてこの魔王城を我が主君に捧げたいと考えておりますので、ここから立ち去っていただけないでしょうか?」

 「裏切っただけでは物足りずここを受け渡せとは無理に決まってますわ!!」

 「そうですか、しょうがないですね。では殺させていただきますね!」

 魔王元幹部六人いるがせめての情けのつもりか、先程まで話していた悪魔一人だけが赤髪の美少女のもとへと近づいてきたが巨体がそれを阻んだ。

 「ぅう..ここは通さんぞ!!」

吐血してまで立ち上がり手をひろげてゆく手を阻んだ。

 「まだ生きていたのですか。いくら魔王様とはいえ光の刃で生きていられるはずがありません、時期死にますよ」

 不敵な笑みを浮かべ魔法を放っていく。

 「あ~中級魔法以下無効の加護があったんでしたね。これじゃなぶり殺しも出来やしませんね」

 「お、お父様逃げましょう、今の状態では勝てませんわ」

 「無理だ。わしはもう長く持たん、昔の古傷も開いてきてるからの、お前だけでもにげるのじゃ」

 魔王様はふところからノートを取り出し赤髪の美少女に渡した。古く汚れていてノートの最初のページに【選ばれし者】をと書かれていて後は汚れていて読めない。

 「お父様これは一体なんですの?何故私に?」

 涙目で心配そうに魔王の顔を覗き質問をした。

 「このノートに記されていることはこれからの未来に役立つのじゃ、後は任せたぞ」

 娘の性格上戦うという選択肢をとる可能性があるとみた魔王は苦渋の選択であったが魔法で娘を眠らせ、目から出た涙を拭い元魔王幹部から娘を守るようにしてたちはだかった。

 「こちらの話を無視とはね...お前ら全力でこいつらを潰せ!!」

 残りの元魔王幹部も襲いかかってきて勝ち目はないと分かった魔王は娘だけでも逃がすべく、どこに繋がるか分からない不安定な魔力でワープゲートを生成し始めた。ワープゲートを作っている最中は魔法が一切使えないので魔王は娘を守りながら戦い続けた。腕を凍らせられ、足が麻痺し、腹に穴が開いてもワープゲートが完成するまで意識を失わないように懸命に戦った。

 ワープゲートが完成したのち魔王は最後の力を振り絞って赤髪の美少女をワープゲートに投げ込んだ。

 「これで娘は生き残れる...あとは頼んだぞ!!」

 最後の言葉を残し、光の光線が胸に突き刺さり、魔王は命尽きたのだった。


  ◆◆◆  ◆◆◆ ◆◆◆

 「んんん..っは..ここはどこだ!!」
 
 車のクラクションで目を覚ました赤髪の美少女は辺りを見渡したが見覚えのない建物、物体ばかりで混乱していたが、ふと手に持っているノートを見た瞬間さっき何があったのかすべて思い出した。

 「そうだお父様どこですの、お父様ー」

 いないと分かっているはずなのに喉が枯れるまで叫び続けた。いないと分かっていてもいて欲しいと願う赤髪の美少女。何処か分からない場所、不安でいっぱいでどうしたらいいのか分からない赤髪の美少女は魔王が最後に言った言葉を思い出して、ノートを開けた。そこには見覚えのある字が書かれていたのだ。【選ばれし者】を探せと。ノートによると【選ばれし者】とは人間という地球上の最上級の生物、魔力を持っていないが優れた知能を持っている者。その中でも魔力とは違う特別な力を宿している者のことである。と記されている。

 「もしや【選ばれし者】なら我が魔王の城を取り戻せるかもしれない、あの幹部共と戦えるかもしれないわ。」

 赤髪の美少女は【選ばれし者】を探そうとしたが探し方が分からず再びノートを見た。  
 「ふむふむ、つまり【選ばれし者】はこのノートにひきつけられるのか..では行くか!」

 ノートを片手に赤髪の美少女は何処にいるか分からない【選ばれし者】を探すべく、狭い路地裏から出でノートを頼りに町の方へと駆けて行ったのだ。

 
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