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第三章 フェンリルと獣人
第40話 奇跡の瞬間
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ボクのフェンリルとしての生も、これで終わりなんだろう。短い生だった。そう思った時、ガヤガヤと人族の声が聞こえた。
「主様、もう探すところがない様ですね」と、女性の声が聞こえた。
どうせ見つけられて、こんなブサイクと罵られるだけだ。また蹴飛ばされたりして虐められるぐらいなら、もう...このまま死んだ方がいい。
頼むから...見つけないで、ボクを...。
「いや、絶対にいるはずだ。ミルミルは「フェンリルは隠れ家にいる」と言った。その言葉に嘘はなかった。この屋敷のどこかにいるはずだ。探そう」
そんな最後の願いを打ち消すかのような言葉が聞こえた。
「まだこの屋敷からドラリル一味の財宝や貨幣も見つけていない。どこかに隠してあるはずだ。くまなく探すぞ!」
「「はい!」」
すぐ近くで3人ほどの男女の声が聞こえる。そして辺りの家具をどかしたり、壁を叩く音などが聞こえた。
「主様!こちらの本棚、横に動きます!」
「でかしたぞ!クラリス!よしメル!3人で横に動かしてみよう!」
「はい!ご主人様!」
ガラガラガラ!
ああ...見つかってしまうのかな。またブサイクと怒られるのかな。最後ぐらい静かに死にたいもんだ...。
「主様!こちらにすごい数の武器類、それに絵画などの美術品、装飾品が並べられております!宝箱もあります!それにあれはフェンリルでしょうか?檻の中で小さく縮こまった生き物がいます!」
確かに、ここはドラリル一味の宝物庫のようだ。クラリスの言うように、壁には剣や斧など、沢山の武器が飾られている。きらびやかな宝石や、真っ黒だが何かの力が秘められていそうな武器等が沢山ある。
隣の壁には鎧や兜といった防具が掛けられ、その隣の壁には高価に見える絵画が飾られている。最後の壁には、さまざまな種類のお面が展示されている。
顔全体を隠すようなお面から、ファントムマスク、それにダイヤなどの装飾が施されたお面など、さまざまな種類の物が飾られていた。
更に床には、壁に飾りきれない剣や防具、絵画や壺、宝箱に鉄の檻の様な物が所狭しと置かれている。
この鉄製の檻は小動物専用だ。中には茶色い毛並みの生き物がいる。足の部分は赤く染まり、その部分の毛がごわごわしている。
どうやら、右足を怪我しているようだ。
「おそらくその子は...フェンリルでしょう。周りに他の動物の気配はないようです。ただ、私の知るフェンリルは毛が灰色で光っているものです。今は汚れて茶色っぽく見えますが、本来は白い毛並みなのかもしれません」とクラリスはフェンリルをじっと見つめながら俺に語りかけた。
俺は弱ったフェンリルに目をやり、「可哀そうに、こんなに汚れて...。こんな狭い部屋に閉じ込められて一人ぼっちだなんて」と感情を込めてつぶやいた。
「また、その顔立ちは私たちと同じで、可愛そうな部類に属していますね。それが原因で群れから離れてしまったのか、あるいは囮として置き去りにされたのかもしれません」
この女性はボクのことを可哀そうと言ってくれた。確かに君も可哀そうだもんね。この女性が「主様」と呼ぶ男性を見ると、すごく恰好いい!
こんなに恰好いい人が、こんなに残念な人達と...なんで一緒にいるの?
そんな主様と呼ばれる人と僕は目が合った。すると僕を見て「うわ、可愛い顔をしているな!目がくりくりとしていて、口吻が膨らんでいるぞ!うちのチョッカクも可愛いけど、この子も可愛い顔をしているぞ!」
「確かに、主様の好みにぴったりの顔立ちをしていますね」とクラリスは言い、言葉にならない表情でフェンリルをじっと見つめた。
「足を怪我しているようだな。よし、すぐに治してあげるぞ。それに体力も回復してあげよう。クラリス、また頼めるかい?こんなに可愛い生き物が可哀そうに...寂しかっただろう。もう大丈夫だからな...」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
恰好いい人は、ボクの怪我を治し、弱っていた体も癒してくれた。
「よし、怪我が治ったようだな。じゃあ君もたくさんご飯を食べないとな。お腹が減っただろう」と言って、僕を抱っこしてくれた。
すごい。こんな血だらけで汚らしいボクを抱っこしてくれた。初めてだ。この人は本心でボクを可愛いと言ってくれた!そして可哀そうと心配してくれた。嬉しい!蹴ったり、殴ったり、冷たい目で見たりもしない。嬉しい!
周りにいる女性たちも、ボクを虐めたりすることはなさそう。彼女たちはボクを、同じような境遇の者を見るような目で労わってくれる。この人達となら、幸せに暮らせそうな気がする!
「ありがとう...」恰好いい人の腕の中でお礼を言った。
するとこの人は、「可愛いな!「く~ん」と言ったよ。少し元気が出たかな」そう嬉しそうにボクを見つめてくれた。
嬉しい。ボクは幸せになれるのかな?よかった死なないで...。
ブサイクと今まで散々ののしられ、一人で生きてきたフェンリルが、初めて最愛の人から愛情を受けた、そんな奇跡の瞬間であった。
「主様、もう探すところがない様ですね」と、女性の声が聞こえた。
どうせ見つけられて、こんなブサイクと罵られるだけだ。また蹴飛ばされたりして虐められるぐらいなら、もう...このまま死んだ方がいい。
頼むから...見つけないで、ボクを...。
「いや、絶対にいるはずだ。ミルミルは「フェンリルは隠れ家にいる」と言った。その言葉に嘘はなかった。この屋敷のどこかにいるはずだ。探そう」
そんな最後の願いを打ち消すかのような言葉が聞こえた。
「まだこの屋敷からドラリル一味の財宝や貨幣も見つけていない。どこかに隠してあるはずだ。くまなく探すぞ!」
「「はい!」」
すぐ近くで3人ほどの男女の声が聞こえる。そして辺りの家具をどかしたり、壁を叩く音などが聞こえた。
「主様!こちらの本棚、横に動きます!」
「でかしたぞ!クラリス!よしメル!3人で横に動かしてみよう!」
「はい!ご主人様!」
ガラガラガラ!
ああ...見つかってしまうのかな。またブサイクと怒られるのかな。最後ぐらい静かに死にたいもんだ...。
「主様!こちらにすごい数の武器類、それに絵画などの美術品、装飾品が並べられております!宝箱もあります!それにあれはフェンリルでしょうか?檻の中で小さく縮こまった生き物がいます!」
確かに、ここはドラリル一味の宝物庫のようだ。クラリスの言うように、壁には剣や斧など、沢山の武器が飾られている。きらびやかな宝石や、真っ黒だが何かの力が秘められていそうな武器等が沢山ある。
隣の壁には鎧や兜といった防具が掛けられ、その隣の壁には高価に見える絵画が飾られている。最後の壁には、さまざまな種類のお面が展示されている。
顔全体を隠すようなお面から、ファントムマスク、それにダイヤなどの装飾が施されたお面など、さまざまな種類の物が飾られていた。
更に床には、壁に飾りきれない剣や防具、絵画や壺、宝箱に鉄の檻の様な物が所狭しと置かれている。
この鉄製の檻は小動物専用だ。中には茶色い毛並みの生き物がいる。足の部分は赤く染まり、その部分の毛がごわごわしている。
どうやら、右足を怪我しているようだ。
「おそらくその子は...フェンリルでしょう。周りに他の動物の気配はないようです。ただ、私の知るフェンリルは毛が灰色で光っているものです。今は汚れて茶色っぽく見えますが、本来は白い毛並みなのかもしれません」とクラリスはフェンリルをじっと見つめながら俺に語りかけた。
俺は弱ったフェンリルに目をやり、「可哀そうに、こんなに汚れて...。こんな狭い部屋に閉じ込められて一人ぼっちだなんて」と感情を込めてつぶやいた。
「また、その顔立ちは私たちと同じで、可愛そうな部類に属していますね。それが原因で群れから離れてしまったのか、あるいは囮として置き去りにされたのかもしれません」
この女性はボクのことを可哀そうと言ってくれた。確かに君も可哀そうだもんね。この女性が「主様」と呼ぶ男性を見ると、すごく恰好いい!
こんなに恰好いい人が、こんなに残念な人達と...なんで一緒にいるの?
そんな主様と呼ばれる人と僕は目が合った。すると僕を見て「うわ、可愛い顔をしているな!目がくりくりとしていて、口吻が膨らんでいるぞ!うちのチョッカクも可愛いけど、この子も可愛い顔をしているぞ!」
「確かに、主様の好みにぴったりの顔立ちをしていますね」とクラリスは言い、言葉にならない表情でフェンリルをじっと見つめた。
「足を怪我しているようだな。よし、すぐに治してあげるぞ。それに体力も回復してあげよう。クラリス、また頼めるかい?こんなに可愛い生き物が可哀そうに...寂しかっただろう。もう大丈夫だからな...」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
恰好いい人は、ボクの怪我を治し、弱っていた体も癒してくれた。
「よし、怪我が治ったようだな。じゃあ君もたくさんご飯を食べないとな。お腹が減っただろう」と言って、僕を抱っこしてくれた。
すごい。こんな血だらけで汚らしいボクを抱っこしてくれた。初めてだ。この人は本心でボクを可愛いと言ってくれた!そして可哀そうと心配してくれた。嬉しい!蹴ったり、殴ったり、冷たい目で見たりもしない。嬉しい!
周りにいる女性たちも、ボクを虐めたりすることはなさそう。彼女たちはボクを、同じような境遇の者を見るような目で労わってくれる。この人達となら、幸せに暮らせそうな気がする!
「ありがとう...」恰好いい人の腕の中でお礼を言った。
するとこの人は、「可愛いな!「く~ん」と言ったよ。少し元気が出たかな」そう嬉しそうにボクを見つめてくれた。
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