「危険ですよ~危険ですよ~混ぜると危険ですよ~!」平凡スキルを混ぜ合わせ、最強スキルに変えちゃうEXスキルと、中年冒険者の成り上がり物語!

たけ

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第一章 EXスキル本との出会い

第2話 1冊のスキル本との出会い

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 敵がいないか、罠が仕掛けられていないかを耳を澄ませ目を凝らしながら、辺りの壁や床、さらには天井まで入念に探りつつ、慎重にゆっくりと歩を進めた。

 「そんなに慎重になる必要があるのか?」と言ってせせら笑った奴ほど、冒険者を辞めていった。

 俺はこうやって生き延びてきた。笑いたければ笑えばいい。

 内部はひんやりとした空気に満たされ、ぼんやりとした光が小さな空間を妖しく照らしている。

 隠し部屋は、貴重なスキル本や武器が手に入ることが多い。ただし、それを手にするまでの道のりは険しい。罠が仕掛けられていることもあれば、静寂の中に潜む強敵が立ちはだかることもある。

 「まあ、どうせ俺が死んでも、悲しんでくれる奴なんていないさ...」そんな皮肉を呟きながらも、どこか自嘲気味な笑みを浮かべ、俺はそっと一歩を踏み出した。

 しかし心の奥底では、まだ冒険者として生きていたい自分がいるのだろう。ダンジョン特有のぼんやりとした明かりの中、周囲に目を配りながら慎重に通路を進んでいった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 直線的な道を慎重に進むと、部屋の真ん中にぽつんと置かれている、神々しく光り輝く宝箱を見つけた!

 やった!

 すごく高級そうな宝箱がある!これで酒も飲み放題!娼館も行き放題だ!


 だが...。


 おかしいぞ...⁉

 その神々しく光り輝く宝箱の周囲には、敵やトラップなどの気配がまるで感じられない。

 経験上、これほどご立派な宝箱があれば、強敵が潜んでいたり、床が抜けたり、四方から槍が飛んできたりするのが常だ。疑う余地もなく怪しい。

 まるで...俺に見つけられるのを待っているかのようだ。一体どういうことだ⁉

 慎重に周囲を調べながら少しずつ近づく。その宝箱には罠などないようだが...それでもこれほど神々しく輝く存在が、ただ無造作に置かれているなんて、どう考えても不自然だ。

 その疑念が脳裏に渦を巻く中、一攫千金を夢見る欲望が胸を焦がした。じめっとした汗が額を伝い、俺は深く息を吸い込む。湿っぽい空気が肺に染み渡り、心臓の鼓動が耳を打つ。震える足取りにも関わらず、俺は手が届きそうな距離まで一歩ずつ、宝箱へと近づいていった。

 欲を言えば、誰もが欲しがる【回復】や【剣術】のスキル本、ランクBが出れば、もう一生遊んで暮らせる。いや、ランクCでも十分だ。

 これまでにダンジョンで発見されたスキル本の最高ランクはA。確認されている唯一のランクAのスキル本は、なんと【編み物】。

 冒険者をおちょくっていると思わないか?

 絶対にダンジョンの神様は、俺たちを見て笑っているであろう。茶目っ気のある奴だ。

 【剣術】、【槍術】、【回復】、【アイス】など、ダンジョン内の戦闘で役に立つスキル本は、すべてがランクBまでであった。

 しかし、冒険者たちの間で話題になるのは、伝説のランクSのスキル本だ。それはいつも酒の席で語られる話だ。まだ見たことのない、その伝説のランクS。出会ってみたい。そんな少年の頃の夢を抱き続けて、気がつけば俺ももう40歳...。

 そして俺の取得しているスキルは【剣術】と【回復】。共にランクDだ。

 いつか...ランクSのスキル本に出会えると信じて、そいつの為に、貴重な枠を一つ空けている。

 我ながら、しょーもない奴だと思う。

 周囲からも、”現実が見れていないオッサン”と馬鹿にされている。

 それでも、あるような気がしてならない。そう、この宝箱の中身こそ、俺が追い求めたランクSのスキル本に違いない!...はずだ。

 そうじゃなきゃ、俺のこの40年間は何だったのと言いたい。

 さあ、命運を左右する時が来た。この宝箱を開ける瞬間が、俺の未来を変えるかもしれない。

 いや、きっと変わる!変えてくれるはずだ!

 深く息を吸い込み、震える手を抑えながら、ゆっくりとその神々しく光り輝く宝箱の蓋に手を掛けた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 宝箱を開けると...そこには1冊のスキル本が入っていた。

 すげえ!黄金に輝いている!やった、大当たりだ!これで高級な酒も、性奴隷も、家も、高価な武器も...いやいや、欲望の全てが手に入る!

 う~ん、最高の気分だ!

 さあ、どんなスキル本だ?【回復】ランクSか?いや、まさかの【体術】ランクS?期待が膨らみすぎて息が止まりそうだ。俺は期待と興奮に胸を躍らせながら、宝箱の中からスキル本を手に取った。

 その表表紙オモテビョウシに目をやると、そこには...。


 【混ぜるな危険!】


 な、なんだこれは?しかも、ランクがどこにも記されていない!ランクのないスキル本なんて見たことがないぞ!もしかして...いや、まさかこれは、ハズレなのか?

 「くそ!」

 叫び声は虚しく部屋の静寂に吸い込まれていく。それでも、腹が立ったからといって、このスキル本を投げ捨てて帰るなんてことはしない。なんせ俺は貧乏だ。

 金になる物を粗末にはできない...。

 こいつで何日かは食いつなぐことが出来る。いや、黄金に輝いているんだ。案外高値がつくかもしれない。もしかすると、想像以上の値段になる可能性だってある。

 だがな...期待が大きかっただけに、その反動は深く胸に突き刺さる。まるで、ぽっかりと穴が開いてしまったような虚しさだ。

 まあいいさ。酒のつまみにはなるし、いつもの”バラモンの酒場”に行くとするか。

 落ち込んでいても仕方ない。今日の探索で拾い集めたスキル本は【剣術】2冊、【回復】3冊、【ファイア】1冊、そして【寝取り】1冊。すべてランクDのものだ。これらを詰め込んだズタ袋に、こいつもしまおうとした、その瞬間...!

 突如、【混ぜるな危険!】のページが勝手に開き、その内容が俺の脳内へと流れ込んできた。

 な、ちょっと待って!俺はお前みてーなスキルなんざいらねーよ!売って金にして、高級娼館で遊ぼうって...思っていたのに...。

 俺が呟いた、その瞬間にはもう手遅れだった。気づけば、黄金に輝くスキル本を取り込んでしまっていた。

 あーあ...。

 残ったのは、黄金に輝くスキル本。 かと思いきや、その役目を終えたのか、さらさらとチリのように細かくなり、消えてしまった。

 あーあ...。なんてこった、チクショウ!

 一体何をやっているんだ、俺は...。せっかく隠し扉を見つけたっていうのに。せっかく黄金のスキル本を見つけたと思ったのに...。全部パーだ。

 「まいったな...」落ち込んで独り言を呟いても、慰めてくれる者なんていやしない...。虚しさが胸に染み渡るだけだ。

 ところが次の瞬間、頭の中で声が響いた。


 『【剣術】ランクDのスキルを、?』
 

 ...⁉一体どういうことだ⁉
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