異世界の力で奇跡の復活!日本一のシャッター街、”柳ケ瀬風雅商店街”が、異世界産の恵みと住民たちの力で、かつての活気溢れる商店街へと返り咲く!

たけ

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第八章 異世界での新たな出会い

第118話 楽しい夕食

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 ダイニングバーに俺達が足を踏み入れると、すでにほとんどの仲間が集まっていた。

 ダイニングバーの広さはおよそ七十平方メートルほど。ざっと見積もっても、五十人が一堂に食事を楽しめるだけの余裕がある。天井はやや高めで、開放感がありながらも、木材のハリが温もりを添えていた。

 天井からは大小さまざまなランプが吊るされていて、琥珀コハク色の光が料理の彩りを際立たせながら、空間全体に柔らかな温もりを漂わせている。

 中央には、半台形のカウンターキッチンが据えられており、その奥には本格的な厨房が広がっているようだ。壁に沿って設けられた棚には、使い込まれた皿やカップが整然と並び、ここが多くの旅人たちの空腹を満たしてきた場所であることを、静かに物語っている。

 カウンターの周囲には十四、五脚のバーチェアが並び、さらに十二、三人が同時に食事を楽しめる大きめのダイニングテーブルが二つ、ゆったりと配置されていた。加えて、六人掛けのテーブルが六脚、そして数脚のビストロテーブルが所狭しと並べられており、賑やかな宴の準備は万端といった様子だ。

 すべてのテーブルは折りたたみ式で、壁際には未使用のテーブルが数脚、立てかけられている。必要に応じてすぐに展開できるよう、機能性と柔軟性が両立された空間設計がなされていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 俺らがダイニングバーに到着すると、そこには明らかに「早く食べたい!」という空気が充満していた。

 空気が、ちょっと殺気立っている。

 誰もが空腹で、目の前にずらりと並ぶ豪華な料理の数々に、理性を保つのがやっとといった様子だ。肉の香ばしい匂い、果物の甘い香り、酒の芳醇ホウジュンな香りが入り混じり、鼻腔をくすぐるたびに、腹の虫が暴れ出す。

 ルミナはその圧に耐えきれず、「ひいっ!」と小さく悲鳴を上げて、隣にいたシュリンにしがみついた。

 シュリンは「おー可哀そうに」と優しく声をかけながら、なぜかルミナの尻を撫でまわした。再びルミナは「ひぃっ!」と叫び、身をすくめる。

 まあ、みんな腹が皆減っているし、目の前の料理が豪華すぎる。美味そうすぎる!

 テーブルの上には、色とりどりの果物、香ばしく焼かれた肉、湯気を立てるスープ、黄金色のパン、そして各種の酒やジュースが所狭しと並べられている。料理人たちは、俺たちが差し入れた食材をふんだんに使って、手際よく、しかも短時間で、見事に仕上げてくれた。

 食事はバイキング形式。好きな物を、好きなだけ食べられるスタイルだ。堅苦しい宴ではなく、自由に、豪快に、そして心ゆくまで楽しんでもらうために、クラシアルとジュードから事前に女将に伝えておいてもらった。

 今日は無礼講の日。俺が金を出したわけじゃない。流さんが出してくれたんだ。だからこそ、遠慮なくたらふく食べて、たらふく飲んで欲しい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 各テーブルには、所狭しと料理や飲み物がずらりと並べられていた。

 まず目に飛び込んでくるのは、グルートビール、エール、はちみつ酒、葡萄酒などの各種アルコール。その隣には、オレンジ、グレープ、リンゴなどの百%ジュースが色鮮やかに並び、さらにミルクや紅茶、珈琲まで揃った”何でも飲み放題だよ!飲み物コーナー”。

 綺麗に磨かれたグラスが整然と並べられ、どの飲み物を手に取るか迷うほどの充実ぶりだ。

 オレンジ、リンゴ、ぶどう、バナナ、ラズベリー、キウイ、パパイヤなどが美しく盛られ、皿の上で色とりどりの果実が宝石のように輝いている。瑞々ミズミズしい香りが漂い、見ているだけで口の中が潤ってくるこの”甘いもの好きにはたまらない!果物コーナー”は、まさに甘味と彩りの楽園だ。

 主食となる肉料理のコーナーは、まさに圧巻。オーク肉、ボア、ベアー,コカトリスに加え、ミノタウロスのサイコロステーキ、サーロイン、ランプ、Tボーン、リブロースなど、豪快なステーキが山のように積まれた”腹いっぱい食べようね肉コーナー”。

 さらに、ウインナー、ハンバーグ、シチュー、など、焼くだけではない多彩な調理が施された、”焼いた肉以外も美味しいよコーナー”も充実。エキゾチックな香りやスパイスの風味が鼻をくすぐり、食欲をさらに刺激してくる。

 ”今日は黒パンなしよ!パンコーナー”には、ライ麦パンや白パンが並び、隣には濃厚なチーズとたっぷりのバターが添えられている。

 ”忘れないでね!サラダコーナー”には、トマト、ビーンズ、キュウリ、パプリカ、ポテト、レタスなどの彩り野菜が並び、オリーブオイルが軽くかけられている。シャキシャキとした食感が想像できるほど、新鮮さが際立っている。

 そして最後のテーブルには、イカ、カニ、エビ、ホタテの地獄焼きが並ぶ、”俺たちも美味しいよ!海鮮料理コーナー”。香ばしい磯の香りが漂い、火を通した甲殻類の艶やかな殻が、食卓に豪華さを添えている。

 料理の香りが鼻腔をくすぐり、腹の虫が暴れ出す。誰もが今か今かと開始の合図を待ち構え、ジュードまでもが俺の到着を感じ取った瞬間から、じっと睨みつけている気がする。あれはもう、完全に“早くしろ!”の目だ。

 空腹の圧が場を満たし、誰もが理性を保つのに必死だ。やばいやばい。このままじゃ、空気が爆発する。 早く宴の開催を挨拶して、始めないと!

 俺は速足で、皆の視線が集まる場所へと歩み出る。 ひとつ咳払いをして、場の空気を掴むように声を張り上げた。

 「みんな、お疲れさん!今日はたらふく食べて、たらふく飲もう!そして今回も、これらの経費を稼いでくれた流さんに、まずはお礼を言ってから食べ始めるぞ!せーの!流さんありがとう!」

 その掛け声とともに、場が一気に弾けた。


 「「かんぱ~い!」」


 一斉に皆の歓喜の声が会場に響き渡り、グラスが打ち合わされた。瞬く間に、酒や飲み物がそれぞれの喉に吸い込まれていく。張り詰めていた空気が、まるで魔法でもかけられたように一気に和らぎ、笑顔と歓声が場を満たしていく。

 流さんはポヨーン、ポヨーンと体全体を弾ませながら、皆の声に応えるように揺れていた。その姿は、まるで感謝の言葉を全身で受け止めているかのようで、見ているこちらまで温かい気持ちになる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 場の空気はすっかり和らぎ、各テーブルでは笑顔と歓声が飛びかっていた。

 「何から食べる?」

 「肉コーナーから行こうよ!」

 「私はカニを食べたい!」 

 「酒だ!エールを飲むぞ!」

 そんな声があちこちから上がり、各テーブルでは賑やかな会話が花開いていた。

 うちの仲間奴隷には獣人が多いため、“腹いっぱい食べようね肉コーナー”が一番人気だ。何といっても、目の前で従業員が、好みの肉を好みの焼き加減で焼いてくれるのだから、たまらない。

 ステーキの焼き加減にも、彼らならではの嗜好が色濃く表れている。俺はミディアムレアが好みだが、獣人たちの多くは、表面をほんの数秒炙っただけの”ブルー”を好む。

 肉の中心はほぼ生。血の香りが残るその状態こそが、彼らにとっての“旨さ”なのだ。

 次に人気なのは、中心部分まで火をまったく通さない”ロー”。完全な生肉だ。メリシーやドリューは、ローの焼き加減の肉を七、八枚は軽々と平らげていた。皿の上に積まれた肉が、彼らの口に吸い込まれるように消えていく様は、もはや芸術的ですらある。

 肉が足りなければ、裏からどんどん補充すればいい。遠慮はいらない。好きなだけ食べてほしい。

 そんな”腹いっぱい食べようね肉コーナー”の一角に、源さんの姿もあった。

 「次、ボアをミディアムでお願いだわん!」

 耳をぴんと立てて、従業員のおねーさんに元気よく注文する源さんの姿があった。

 尻尾をふりふり、焼き台の前で肉の焼き上がりを待つその姿は、期待に満ちていて、見ているこちらまで楽しくなる。

 「このボアっという肉も好きだわん!野生の風味が色濃く残っていて、わんの好みだわん!」

 そう言いながら、源さんは皿に盛られたステーキにかぶりつき、がつがつと食べていた。尻尾は止まることなく揺れ続け、幸せそうな表情が顔いっぱいに広がっている。  

 お腹を壊さない程度にしてね、源さん。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 流さんはミノタウロスやオーク、ボア、ベアーなど、俺達が食べない骨の部分を包み込んで消化していった。
 
 そのたびに、「コロン」と音を立てて、床には貴金属が転がっていく。もう、このお宿の年間パスポートを全員分払えるだろうぐらいの貴金属を生み出たんじゃないだろうか?

 それぞれのテーブルには、豪華な料理や飲み物がふんだんに並べられていた。食べ物や飲み物が少なくなると、従業員たちがすかさず補充してくれる。

 素晴らしい動きだ。もう従業員の皆さんが魔族だろうがどうでもいい。

 ジュードもそんなことなど忘れて、ブルーの状態のオーク肉を五、六枚、むしゃむしゃと食べていた。

 「太郎様。大量の肉料理に、大量のお酒。さらには彩り豊かな果物まで...。ここに集う獣人たちは皆、心から喜んでおります。太郎様にお供できて、本当に良かったと申しておりますよ」

 いつもより饒舌なジュードは、穏やかな笑みを浮かべながら、グラスを掲げた。

 しかしその直後...。

 「わたくしや、ほかの獣人達をお救い下さり、本当に...本当に...ぐずっ...あろ゙、あじがどう、ござ、じま゙しだ...」

 言葉にならぬほどの感謝をこぼしながら、ジュードはその場に泣き崩れてしまった。

 その姿を見たドリューが、慌てて飛んできた。

 「すみません、お頭!ジュード様は、お酒が入るといつもこうなんです...!」

 どうやら、恒例のことらしい。

 足元には、空になったグルートビールの樽が転がっていた。まあ、いつものことならいいか。よし、次に行こう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 カレンとシュリン、そしてルミナの三人は、シチューや白パン、色とりどりの野菜や果物、そしてはちみつ酒を手に、穏やかな会話を楽しみながら、ゆったりと食事をしていた。

 テーブルの上には、彩り豊かな料理が並び、三人の笑い声が絶え間なく響いている。

 「私が奴隷商館で裸になった時も、太郎様ったら、どうしても正面から見られなくて...本当にかわいいんです♡」

 カレンののろけ話に、シュリンはグラスを傾けた。はちみつ酒の芳醇な香りが口に広がるのを楽しむように、しばし目を細めた。そのまま静かにもう一口含み、グラスをテーブルに戻すと、表情を少し引き締めて口を開いた。

 「でもね、ルミナ。あの人はダメよ。そういうことに関しては、ほんっとに鈍感だから。自分からしっかり伝えないと。あのメルシーだって...大変だったんだから」

 その言葉に、ルミナは真剣な面持ちでうなずきながら、拳をぎゅっと握りしめた。

 「なるほど...がんばります!絶対に、嫁順位...五番になります!」

 そんな、レースじゃないんだから。俺はそっと、ばれない様に席を外した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 その頃、嫁順位一位のクラシアルは、従業員たちとともに肉の解体作業にあたっていた。手際よく骨を外し、脂身を分け、筋を切るその動きは、まるで熟練の職人のようで、周囲の従業員たちも思わず見入ってしまうほどだった。

 「クラシアル、ちゃんと食べているのか?」

 声をかけると、クラシアルは手を止めて振り返り、柔らかな笑みを浮かべた。

 「旦那殿ではないか!旦那殿の方こそ、ちゃんと食べているか?」 

 その声は明るく、どこか誇らしげだ。

 「ああ、いろんなテーブルに顔を出して、皆と一緒に楽しんでいるよ」

 そう答えると、クラシアルは満足げに頷いた。

 クラシアルは他のドラゴン達と狩りをした際に、すでに半年分ぐらいの食料を平らげていたらしい。今はもう、十分に満たされているという。

 「この働き者の従業員達にも、食べさせてあげたいし」と、彼女は笑顔で言った。

 すげぇ...クラシアル。良妻じゃないか。

 そんな働き者の妻と、汗を流す従業員たちに向けて、俺はそっとフロアクリーンをかけた。魔法の光が床や壁に飛び散った肉片や脂、骨の欠片までもが、瞬く間に消えていく。空気が澄み、場が整ったその瞬間、クラシアルが振り返り声をかけてきた。

 「お、旦那殿。すまない。また解体作業がすべて終わったら、お願いできるか?」

 クラシアルは振り返り、作業用のエプロンの裾を軽く整えながら、穏やかな笑みを見せた。

 俺は頷きながら応じた。

 「ああ、任せてくれ。そうすれば、従業員たちも洗い物の手間が省けるしな」

 そう言いながら、魔法の効果に驚いている従業員たちへ視線を移す。

 俺たちが使った食器も、まとめてフロアクリーンで片づけてしまえばいい。食べ残した料理は、流さんに頼んでアメジストへと変えてもらおうか?そんなことを考えていた。

 その時、従業員のひとりがぽつりと声を漏らした。

 「すごいですね...クラシアル様の旦那様は、高名な魔法使いの方...なのですか?」

 その言葉に、クラシアルはどこか誇らしげな様子で胸を張った。

 「旦那は、私の窮地を救ってくれた。そして、ここにいる者の殆どは、死にかけておった者ばかりだ」

 彼女は手を止め、キッチンの奥に目を向けながら、静かに言葉を続けた。

 「あのビールの樽を抱えて寝ている獅子族の男...。ジュードは右腕と左足を切断され、毒まで盛られていた。旦那様がおらなければ、持って数時間の命であった者よ」

 クラシアルの言葉が落ち着いた瞬間、場の空気が変わった。従業員たちの手が止まり、女将の表情が凍りつく。


 カラン、カランカラン...


 女将の手元から滑り落ちた皿が、床に跳ねて乾いた音を立てた。音の余韻だけが、静まり返ったキッチンに残る。

 その静けさに背を押されるように、俺はそっと女将に近づいた。床に落ちた皿を拾いながら、女将の姿を纏う魔族に...そっと声をかけた。
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