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第六章 エルメス奴隷商会と獣人奴隷
第77話 ハラス獣人王国
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シリウスにジュードのもとへ案内を求めたところ、彼はその鋭い目で一瞬こちらを見つめると、「こちらです!三階へ!」と力強い声で言い放った。
次の瞬間、彼の動きはまるで一陣の風のように迅速で、ドアがきしむ音とともに客間から飛び出していった。
シリウスは軽やかに階段を駆け上がり、その後を俺と源さん、サイモン、そして数人の使用人たちが追いかけた。廊下には俺たちの足音が響き渡り、その音が緊張を煽る。
シリウスは「これは神の意志か、それとも先代のお導きなのか...」と呟きながら、軽やかな足取りで廊下の奥へと進んでいく。
一方、そんなシリウスの後ろ姿を目で追いながら、サイモンが俺に語りかけてきた。
「太郎様、申し訳ございません。正直なところ、こうなることは予想しておりました。シリウスは私の顔を見るたびに、『伝説のエリクサーはまだ見つからないのか!一刻も早く持って来てくれ!』と繰り返し頼んできましたので...」とサイモンは、ため息混じりに静かに語りつつ、その声には困惑と申し訳なさが滲んでいた。
「しかし、ジュード様を元の状態に戻すことは、重大な問題を引き起こしかねません。この選択によって、太郎様ご自身や周囲の方々が深刻な影響を被る恐れがあり、一度進めば...もはや後戻りはできないでしょう」
サイモンの険しい表情は、その言葉に宿る重みを如実に物語っていた。彼の声には微かな震えが混じり、その奥底に秘められた感情が、何よりも雄弁に彼の内心を映し出していた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二階フロアに到着したシリウスは、そのまま階段を駆けあがり三階へ向かうかと思われた。しかし、不意に足を止めると、廊下を西へと進み始めた。振り返りざまに「こちらです!」と短く告げるや否や、その足取りはさらに速まり、俺たちに急ぐよう促してきた。
どうやら、今使っている階段を避け、別のルートを通って上階へ向かうつもりのようだ。不思議に思っていると、サイモンが静かに説明を始めた。
「ジュード様がお休みのお部屋は、重要な方々をお守りするために設計された特別な場所です。そのため、簡単には辿り着けない場所にあり、館内を幾度も行き来し、階段を上り下りする必要があります」
廊下を足早に進む俺たちに、周囲の視線が集まる。その視線の主は、筋骨隆々とした屈強な奴隷たちだ。彼らの佇まいは、さながら某アニメ”北北西の拳”に登場する悪役を彷彿とさせる。その圧倒的な存在感に、思わず身構えそうになるほどだ。
そんな中、シリウスが振り返りざまに「一度階段を下ります!」と強い口調で告げてきた。その響きには、躊躇を許さない力強さが込められていた。
体力の無かった頃の俺だったら、きっと息が上がっていただろうな...。
しかし、これほどまでに厳重に守られた部屋で保護されているジュードとは、一体どのような人物なのだろうか?その疑問が心の中で膨らみ、俺はサイモンに率直に尋ねることにした。
「ちなみにジュードとは、どんな人物なんだ?ヒルメス奴隷商会とは、どんな関係があるんだ?」
サイモンは一瞬思案し、真剣な表情を俺に向けた。
「ジュード様は、かつてハラス獣人王国の最高司令官を務めておられました。卓越した知性と義理堅いお人柄から、国民の信頼も極めて厚かったお方です」と、サイモンは静かに語り始めた。
ハラス獣人王国...。獣人の国か...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「数十数年前、ヒルメス奴隷商会は、人国にあるガーナッド奴隷商会の策略により、獣人奴隷の違法販売の濡れ衣を着せられました。その結果、サーマレット国の首都モルゼンに所在する最高裁判所から、無期限の営業停止処分を言い渡される事態となりました」
ヒルメスといえば、シリウスの父親か...。
「しかし、その裁判でヒルメス奴隷商会の無実を証言し、真の黒幕である人国のガーナッド奴隷商会の存在を暴いたのがジュード様でした。この証言を受け、再調査が行われた結果、ヒルメス奴隷商会の潔白が証明され、一方でガーナッド奴隷商会は取り潰されました」と、サイモンは静かに語った。
一歩間違えれば、取り潰されたのはヒルメス奴隷商会の方だっただろう。ジュードへの感謝の念は、言葉では到底尽くせないほど深いものに違いない。
「ジュード様はただ一言、『当然のことをしたまでよ』とおっしゃったそうです。お礼の品を一切受け取ることなく、『なりたくて奴隷になる者などおらん。なるべく手厚くな』と、まるで風に乗せるように優しく語られたと聞いています」
くぅ~!ジュード、かっこいい!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「この件をきっかけに、ヒルメス奴隷商会は奴隷たちの環境や健康、さらには食事に至るまで細やかな配慮を行うようになり、優良な奴隷商会として大きな成長を遂げました」
ジュードとの約束を果たしたのだろう。初代ヒルメスも、その跡を継いだシリウスも...かっこいい!
「初代ヒルメスは、『ジュード様には返しきれない恩義を受けた。もしその恩を返せる日が来るのならば、全財産を投げうってでもお返ししたい』と、折に触れて語っておられたそうです」
だよな~、分かるわ。俺もヒルメスの立場なら、同じように感じるよな。
その深い感謝の思いを胸に抱きながら、ヒルメス奴隷商会は次の世代へと受け継がれていった。二代目シリウスの手により新たな道を歩み始める中、ヒルメスは静かにその生涯に幕を下ろした。
だが、時を経て、思いも寄らぬ形でジュードへの恩を返す機会が巡ってくることとなる。
「ハラス獣人王国は現在、深刻な混乱に陥っています。国王陛下が原因不明の病に倒れ、長期間にわたり床に伏せておられるため、国内情勢は大きく揺れ動いております!そして、第一王子と第二王子の権力闘争が表面化し、激しい対立が続いています」と、サイモンの声には静かな緊張感が滲んでいた。
血縁同士での闘争か...。まるで韓流ドラマのような展開だな...。
「バッカル第二王子は、『国王がこのような状況にある今こそ、新たな指導者が必要だ。王たる者に求められるのは実力であり、血筋の順序など些細な問題に過ぎない!』と、強く主張しています。そして、サーベル第一王子の国王代理就任案には断固反対し、この反対が火種となって、国政は激しい議論と対立の渦に巻き込まれています」
国王が原因不明の病に陥った理由には、第二王子が密かに関与しているのかもしれない、そんな不安な予感が胸に込み上げる。
それとも、その裏にはさらに深い企てが隠されているのだろうか?知られざる陰謀の影が、国政の足元を揺るがしているのかも...しれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここで、王家の構図を整理してみましょう。ハラス国王には、サーベル第一王子、バッカル第二王子、リーベル第一王女、そしてブッタル第三王子の他に、さらに二人のお子様がいらっしゃいます。ただし、そのお二人は既に王位継承争いから退いております」
俺は一人っ子だから分からないけど、兄弟が多いというのも、何かと大変そうだな。
「ハラス国王は聡明であり、獣人ならではの力強さを持ったお方です。多くの子宝にも恵まれ、獣人国も安泰かと思われましたが...」と、サイモンはどこか寂しげな表情を浮かべた。
「第一王子であられるサーベル王子は、温和で慈愛に満ちたお人柄です。また、剣技においても国内随一の腕前を誇り、その卓越した技術には多くの者たちが深い尊敬を寄せています。ただし、法を犯すことや義を損なう行為については、一切の妥協を認めないお方です。そんなサーベル王子を国王にふさわしいと推挙しているのが、リーベル第一王女です」
サーベル第一王子は、まさに理想的な王子と言えるだろう。その気品と風格には、敬意を抱かずにはいられない。それに比べると...バッカル第二王子は...。
そう考えを巡らせていると、まるで俺の胸の内を見透かしたかのように、サイモンが静かに語り始めた。
「かつてのバッカル第二王子は、その豪放磊落な性格で知られ、斧を自在に操るその勇猛な姿から、”戦場の荒武者”とも称されていました。その堂々たる立ち振る舞いは周囲を圧倒し、誰もがその存在感を認めていました。また、兄である第一王子に対し深い敬愛を抱き、『俺がサーベル王子を支える!』と、常に献身的な態度を示していました。しかし...」
サイモンの声が一瞬途切れた。そして、まるで底なしの深い井戸に響くような、沈んだ低音へと変わった。
「ハラス国王が病に倒れて以降、バッカル王子は劇的に変貌を遂げました。粗暴さは日に日に増し、意見の異なる者を容赦なく排除するようになったのです。かつて第一王子に向けていた優しさや思いやりは消え去り、今では恐怖を振りまく存在へと変わり果ててしまいました」
サイモンの語る内容に耳を傾けるうちに、胸の内には徐々に疑念が広がっていった。
どうも俺の想像していた展開とは違う。第一王子と第二王子は元々険悪な関係だったと思っていた。しかし、実際にはそうではなく、つい最近になって急激に対立するようになったという。一体その裏には、どのような事情が潜んでいるんだ?
サイモンは一瞬ためらいを見せた後、深く息をつき、慎重に口を開いた。その表情には曇りが差し、言葉を選ぶように視線をわずかに落とす。
「第三王子についても、また別の変化がございます」
サイモンは静かに話し始めたが、その声にはどこか沈痛な響きが含まれていた。
おいおい...第三王子まで何かあるのか?
「第三王子は、もともと控えめな性格で、豊富な知識を活かして兄たちを支えることに尽力していました。しかし、ハラス国王様が倒れられた頃から、その振舞いは次第に奇妙さを帯び始め、周囲の従者たちの心に不安の影を落としています」
そんな折、シリウスがサイモンの話を遮るように振り返り、「もうすぐ、目的の場所です!お急ぎ下さい!」と声を張り上げた。その言葉とともに、シリウスの足取りはさらに速まり、ほとんど駆け足ともいえる勢いで進んで行く。
シリウスの行動に呼応するように、サイモンは足取りを速めつつ、「第三王子の部屋には深夜まで灯りが絶えず、魔術や禁術、薬品に関する得体の知れない書籍を集めているという話が広がっています。使用人たちの間では、彼が禁忌に触れようとしているのではないか?という憶測も飛び交っている様です」と、第三王子の様子を焦燥感を込めた口調で俺に伝えた。
俺は困惑を隠せずにいた。第二皇子に続き、第三王子までもが異変を見せているというのか?それも、国王が床に伏された時期と符合するとは...。一体、何が起きているというのだ⁉
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
奴隷商会の廊下には、男たちの慌ただしい足音が響き渡り、その一団が勢いよく駆け抜けていった。彼らが去った後、事情を知らない使用人や奴隷たちがざわめき始め、「一体何があったのだ?」と不安げな表情を浮かべていた。
そんな折、サイモンは再び口を開き、足取りの速さを反映するような切迫感のある口調で、俺に語り始めた。
「ジュード様は、かつてハラス国王の命を受け、第一王子、サーベル様を支えておられました。しかし、世襲争いの最中、最も信頼していた部下に裏切られ、背後から襲撃を受けたのです。その際、右腕と左脚を切断されるという非道な仕打ちを受けました。それだけではございません!毒を塗った刃で傷つけられたため、現在もその毒が体内に残り、命を脅かす状態が続いているのです」
その話を聞き、俺は思わず息を呑んだ。そりゃあ、シリウスが急ぐのも無理はない...。
しかし...それにしても、あまりにも残酷だ。毒を塗った刃で手足を切り落とすなど、これほど非道な行為が他にあるだろうか...。
「とどめを刺される寸前のところで、アーレント商会の暗部がジュード様を救い出しました。そして、誰にも知られぬよう密かにこの場所へと運び込んだのです」
その話を聞き、俺は心底驚愕した。アーレント商会の暗部とは、一体どれほどの力を秘めているのだろうか。サーマレント地方のみならず、獣人国にまでその影響力を及ぼしているとは...。
「現在、商会内では厳重な管理体制のもと、治療が続けられています。しかし、毒の影響が深刻で、病状の回復は思わしくありません。そのような状況の中、ジュード様は静かにこう仰ったのです。『これも運命というものだ。もう十分、借りを返してもらった。ありがとう...シリウス...』と」
運命、か...。本当にジュードは死を受け入れる覚悟ができているのだろうか?未練は何も残っていないのだろうか?もし助けられるのなら、何としてでも力になりたい。そして彼の本心を...直接、確かめたい。
そんな思いに囚われていると、サイモンが申し訳なさそうな表情を浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。
「本来であれば、太郎様が回復魔法をお使いになれると分かった時点で、直ちにジュード様のもとへご案内したかった...。しかし、それが本当に太郎様のためになるのか...。太郎様には何の関わりもない話である上、獣人国で今まさに進行している複雑な問題に巻き込んでしまう恐れがあると考えると...どうしてもその一歩を踏み出せなかったのです」
その言葉に、俺はサイモンの苦悩を感じ取った。彼は俺を巻き込まないように配慮しながらも、シリウスとの間で板挟みとなり、最善を尽くそうとしていたのだろう。
「しかし、太郎様が奴隷の購入をお考えだと伺い、大変驚きました。しかも、その条件が『知識を持ち、身体に欠陥や欠損があり、死期が近い』というもの...!そのお話を聞いた時、ジュード様と太郎様の間には、運命的な絆が存在しているのではないかと、つい確信めいた思いを抱いてしまいました」と、サイモンは語気を強めながら熱心に語りかけてきた。
確かに、それは俺が設定した条件そのものだった。まるでジュードに出会うために、この奴隷商館を訪れたかのような、そんな気さえしてくる...。
「ジュード様は、かつて獣人王国の最高司令官を務め、その深い知識と誠実なお人柄で広く知られております。このご縁を通じて、ジュード様が太郎様に忠誠を誓い、共に新たな未来を築かれる可能性も大いにございます」
確かにその通りだ。しかし、今は何よりもジュードの命を救うことが最優先だ。話を聞けば聞くほど、ジュードを失うにはあまりにも惜しい存在だと痛感する。
「ジュード様は、まだその尊いお命を手放すべき時ではございません!どうか、ジュード様をお救い下さい。この願いは、シリウスの為のものではございません!ジュード様のご尽力なくして、我々アーレント商会が獣人王国との貿易を円滑に進めることは不可能だったのです。どうか、ジュード様が再びその力を取り戻されることを心より切望しております!」
そう語りかけるサイモンの表情は、真剣そのものだった。
確かにジュードは、深い知識と類い稀なカリスマ性を兼ね備えた人物のようだ。もし彼を救い、俺のもとで力を貸してもらえるなら、これほど頼もしいことはない。
しかし、彼は獣人国の重鎮。健康を取り戻した後は、獣人国に帰りたいと望むことも十分考えられる。それに、獣人国としても彼の帰還を強く願うに違いない。
だからこそ、いざその時が来れば、ジュードの意思を何よりも尊重し、静かに送り出してあげたい。「自分が助けたのだから従うべきだ」などという、浅ましい考えを持つつもりは無い。今はただ、ジュードの命を救うために、できる限りの最善を尽くすことに集中するのみだ。
もちろん、ジュードが俺を選び、共に歩みたいと望んでくれるなら、それほど嬉しいことはないのだが...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シリウスの後を追い、ヒルメス奴隷商会内を駆け抜けた。やがて商会三階の最奥にある部屋の前で、シリウスが足を止める。その扉は幾重にも施錠され、廊下には屈強な護衛たちが鋭い目つきで見張っている。その視線の圧力に、思わず身が引き締まる思いがした。いくら魔法で何でもできるようになったとはいえ、心の奥底ではまだ昔の自分が顔を覗かせる。
そんなことを考えている間に、シリウスは手際よく鍵を解錠していく。最後の鍵が静かに外され、重厚な扉がゆっくりと開かれた。
ギギィィィィィ...。
扉が開かれると、柔らかな日差しが静かな部屋全体に広がり、どこか安らぎを感じさせる温かな空気が漂っていた。
部屋の中央には大きなベッドが据えられ、その周囲には簡素だが上品なテーブルと椅子、大きな窓と落ち着いた色合いのカーテンが控えめに配置されている。それらには一切の華美な装飾はなくとも、ひとつひとつに一流の職人による精緻な技が光り、確かな品格が感じられた。
そして、ベッドの上には一人の人物が静かに横たわっていた。顔に至るまで包帯で覆われ、弱々しい唸り声をあげながら苦しんでいる。俺たちが部屋に入ったことにも気づいていない様だ。
この人物が...ジュードなのか?
包帯に覆われたその姿に目を向ける。弱々しい唸り声が響く中、この先どのような言葉を交わすことになるのか、まだ想像もつかない。それでも、何かが始まろうとしていることだけは確かであった。
次の瞬間、彼の動きはまるで一陣の風のように迅速で、ドアがきしむ音とともに客間から飛び出していった。
シリウスは軽やかに階段を駆け上がり、その後を俺と源さん、サイモン、そして数人の使用人たちが追いかけた。廊下には俺たちの足音が響き渡り、その音が緊張を煽る。
シリウスは「これは神の意志か、それとも先代のお導きなのか...」と呟きながら、軽やかな足取りで廊下の奥へと進んでいく。
一方、そんなシリウスの後ろ姿を目で追いながら、サイモンが俺に語りかけてきた。
「太郎様、申し訳ございません。正直なところ、こうなることは予想しておりました。シリウスは私の顔を見るたびに、『伝説のエリクサーはまだ見つからないのか!一刻も早く持って来てくれ!』と繰り返し頼んできましたので...」とサイモンは、ため息混じりに静かに語りつつ、その声には困惑と申し訳なさが滲んでいた。
「しかし、ジュード様を元の状態に戻すことは、重大な問題を引き起こしかねません。この選択によって、太郎様ご自身や周囲の方々が深刻な影響を被る恐れがあり、一度進めば...もはや後戻りはできないでしょう」
サイモンの険しい表情は、その言葉に宿る重みを如実に物語っていた。彼の声には微かな震えが混じり、その奥底に秘められた感情が、何よりも雄弁に彼の内心を映し出していた。
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二階フロアに到着したシリウスは、そのまま階段を駆けあがり三階へ向かうかと思われた。しかし、不意に足を止めると、廊下を西へと進み始めた。振り返りざまに「こちらです!」と短く告げるや否や、その足取りはさらに速まり、俺たちに急ぐよう促してきた。
どうやら、今使っている階段を避け、別のルートを通って上階へ向かうつもりのようだ。不思議に思っていると、サイモンが静かに説明を始めた。
「ジュード様がお休みのお部屋は、重要な方々をお守りするために設計された特別な場所です。そのため、簡単には辿り着けない場所にあり、館内を幾度も行き来し、階段を上り下りする必要があります」
廊下を足早に進む俺たちに、周囲の視線が集まる。その視線の主は、筋骨隆々とした屈強な奴隷たちだ。彼らの佇まいは、さながら某アニメ”北北西の拳”に登場する悪役を彷彿とさせる。その圧倒的な存在感に、思わず身構えそうになるほどだ。
そんな中、シリウスが振り返りざまに「一度階段を下ります!」と強い口調で告げてきた。その響きには、躊躇を許さない力強さが込められていた。
体力の無かった頃の俺だったら、きっと息が上がっていただろうな...。
しかし、これほどまでに厳重に守られた部屋で保護されているジュードとは、一体どのような人物なのだろうか?その疑問が心の中で膨らみ、俺はサイモンに率直に尋ねることにした。
「ちなみにジュードとは、どんな人物なんだ?ヒルメス奴隷商会とは、どんな関係があるんだ?」
サイモンは一瞬思案し、真剣な表情を俺に向けた。
「ジュード様は、かつてハラス獣人王国の最高司令官を務めておられました。卓越した知性と義理堅いお人柄から、国民の信頼も極めて厚かったお方です」と、サイモンは静かに語り始めた。
ハラス獣人王国...。獣人の国か...。
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「数十数年前、ヒルメス奴隷商会は、人国にあるガーナッド奴隷商会の策略により、獣人奴隷の違法販売の濡れ衣を着せられました。その結果、サーマレット国の首都モルゼンに所在する最高裁判所から、無期限の営業停止処分を言い渡される事態となりました」
ヒルメスといえば、シリウスの父親か...。
「しかし、その裁判でヒルメス奴隷商会の無実を証言し、真の黒幕である人国のガーナッド奴隷商会の存在を暴いたのがジュード様でした。この証言を受け、再調査が行われた結果、ヒルメス奴隷商会の潔白が証明され、一方でガーナッド奴隷商会は取り潰されました」と、サイモンは静かに語った。
一歩間違えれば、取り潰されたのはヒルメス奴隷商会の方だっただろう。ジュードへの感謝の念は、言葉では到底尽くせないほど深いものに違いない。
「ジュード様はただ一言、『当然のことをしたまでよ』とおっしゃったそうです。お礼の品を一切受け取ることなく、『なりたくて奴隷になる者などおらん。なるべく手厚くな』と、まるで風に乗せるように優しく語られたと聞いています」
くぅ~!ジュード、かっこいい!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「この件をきっかけに、ヒルメス奴隷商会は奴隷たちの環境や健康、さらには食事に至るまで細やかな配慮を行うようになり、優良な奴隷商会として大きな成長を遂げました」
ジュードとの約束を果たしたのだろう。初代ヒルメスも、その跡を継いだシリウスも...かっこいい!
「初代ヒルメスは、『ジュード様には返しきれない恩義を受けた。もしその恩を返せる日が来るのならば、全財産を投げうってでもお返ししたい』と、折に触れて語っておられたそうです」
だよな~、分かるわ。俺もヒルメスの立場なら、同じように感じるよな。
その深い感謝の思いを胸に抱きながら、ヒルメス奴隷商会は次の世代へと受け継がれていった。二代目シリウスの手により新たな道を歩み始める中、ヒルメスは静かにその生涯に幕を下ろした。
だが、時を経て、思いも寄らぬ形でジュードへの恩を返す機会が巡ってくることとなる。
「ハラス獣人王国は現在、深刻な混乱に陥っています。国王陛下が原因不明の病に倒れ、長期間にわたり床に伏せておられるため、国内情勢は大きく揺れ動いております!そして、第一王子と第二王子の権力闘争が表面化し、激しい対立が続いています」と、サイモンの声には静かな緊張感が滲んでいた。
血縁同士での闘争か...。まるで韓流ドラマのような展開だな...。
「バッカル第二王子は、『国王がこのような状況にある今こそ、新たな指導者が必要だ。王たる者に求められるのは実力であり、血筋の順序など些細な問題に過ぎない!』と、強く主張しています。そして、サーベル第一王子の国王代理就任案には断固反対し、この反対が火種となって、国政は激しい議論と対立の渦に巻き込まれています」
国王が原因不明の病に陥った理由には、第二王子が密かに関与しているのかもしれない、そんな不安な予感が胸に込み上げる。
それとも、その裏にはさらに深い企てが隠されているのだろうか?知られざる陰謀の影が、国政の足元を揺るがしているのかも...しれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここで、王家の構図を整理してみましょう。ハラス国王には、サーベル第一王子、バッカル第二王子、リーベル第一王女、そしてブッタル第三王子の他に、さらに二人のお子様がいらっしゃいます。ただし、そのお二人は既に王位継承争いから退いております」
俺は一人っ子だから分からないけど、兄弟が多いというのも、何かと大変そうだな。
「ハラス国王は聡明であり、獣人ならではの力強さを持ったお方です。多くの子宝にも恵まれ、獣人国も安泰かと思われましたが...」と、サイモンはどこか寂しげな表情を浮かべた。
「第一王子であられるサーベル王子は、温和で慈愛に満ちたお人柄です。また、剣技においても国内随一の腕前を誇り、その卓越した技術には多くの者たちが深い尊敬を寄せています。ただし、法を犯すことや義を損なう行為については、一切の妥協を認めないお方です。そんなサーベル王子を国王にふさわしいと推挙しているのが、リーベル第一王女です」
サーベル第一王子は、まさに理想的な王子と言えるだろう。その気品と風格には、敬意を抱かずにはいられない。それに比べると...バッカル第二王子は...。
そう考えを巡らせていると、まるで俺の胸の内を見透かしたかのように、サイモンが静かに語り始めた。
「かつてのバッカル第二王子は、その豪放磊落な性格で知られ、斧を自在に操るその勇猛な姿から、”戦場の荒武者”とも称されていました。その堂々たる立ち振る舞いは周囲を圧倒し、誰もがその存在感を認めていました。また、兄である第一王子に対し深い敬愛を抱き、『俺がサーベル王子を支える!』と、常に献身的な態度を示していました。しかし...」
サイモンの声が一瞬途切れた。そして、まるで底なしの深い井戸に響くような、沈んだ低音へと変わった。
「ハラス国王が病に倒れて以降、バッカル王子は劇的に変貌を遂げました。粗暴さは日に日に増し、意見の異なる者を容赦なく排除するようになったのです。かつて第一王子に向けていた優しさや思いやりは消え去り、今では恐怖を振りまく存在へと変わり果ててしまいました」
サイモンの語る内容に耳を傾けるうちに、胸の内には徐々に疑念が広がっていった。
どうも俺の想像していた展開とは違う。第一王子と第二王子は元々険悪な関係だったと思っていた。しかし、実際にはそうではなく、つい最近になって急激に対立するようになったという。一体その裏には、どのような事情が潜んでいるんだ?
サイモンは一瞬ためらいを見せた後、深く息をつき、慎重に口を開いた。その表情には曇りが差し、言葉を選ぶように視線をわずかに落とす。
「第三王子についても、また別の変化がございます」
サイモンは静かに話し始めたが、その声にはどこか沈痛な響きが含まれていた。
おいおい...第三王子まで何かあるのか?
「第三王子は、もともと控えめな性格で、豊富な知識を活かして兄たちを支えることに尽力していました。しかし、ハラス国王様が倒れられた頃から、その振舞いは次第に奇妙さを帯び始め、周囲の従者たちの心に不安の影を落としています」
そんな折、シリウスがサイモンの話を遮るように振り返り、「もうすぐ、目的の場所です!お急ぎ下さい!」と声を張り上げた。その言葉とともに、シリウスの足取りはさらに速まり、ほとんど駆け足ともいえる勢いで進んで行く。
シリウスの行動に呼応するように、サイモンは足取りを速めつつ、「第三王子の部屋には深夜まで灯りが絶えず、魔術や禁術、薬品に関する得体の知れない書籍を集めているという話が広がっています。使用人たちの間では、彼が禁忌に触れようとしているのではないか?という憶測も飛び交っている様です」と、第三王子の様子を焦燥感を込めた口調で俺に伝えた。
俺は困惑を隠せずにいた。第二皇子に続き、第三王子までもが異変を見せているというのか?それも、国王が床に伏された時期と符合するとは...。一体、何が起きているというのだ⁉
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
奴隷商会の廊下には、男たちの慌ただしい足音が響き渡り、その一団が勢いよく駆け抜けていった。彼らが去った後、事情を知らない使用人や奴隷たちがざわめき始め、「一体何があったのだ?」と不安げな表情を浮かべていた。
そんな折、サイモンは再び口を開き、足取りの速さを反映するような切迫感のある口調で、俺に語り始めた。
「ジュード様は、かつてハラス国王の命を受け、第一王子、サーベル様を支えておられました。しかし、世襲争いの最中、最も信頼していた部下に裏切られ、背後から襲撃を受けたのです。その際、右腕と左脚を切断されるという非道な仕打ちを受けました。それだけではございません!毒を塗った刃で傷つけられたため、現在もその毒が体内に残り、命を脅かす状態が続いているのです」
その話を聞き、俺は思わず息を呑んだ。そりゃあ、シリウスが急ぐのも無理はない...。
しかし...それにしても、あまりにも残酷だ。毒を塗った刃で手足を切り落とすなど、これほど非道な行為が他にあるだろうか...。
「とどめを刺される寸前のところで、アーレント商会の暗部がジュード様を救い出しました。そして、誰にも知られぬよう密かにこの場所へと運び込んだのです」
その話を聞き、俺は心底驚愕した。アーレント商会の暗部とは、一体どれほどの力を秘めているのだろうか。サーマレント地方のみならず、獣人国にまでその影響力を及ぼしているとは...。
「現在、商会内では厳重な管理体制のもと、治療が続けられています。しかし、毒の影響が深刻で、病状の回復は思わしくありません。そのような状況の中、ジュード様は静かにこう仰ったのです。『これも運命というものだ。もう十分、借りを返してもらった。ありがとう...シリウス...』と」
運命、か...。本当にジュードは死を受け入れる覚悟ができているのだろうか?未練は何も残っていないのだろうか?もし助けられるのなら、何としてでも力になりたい。そして彼の本心を...直接、確かめたい。
そんな思いに囚われていると、サイモンが申し訳なさそうな表情を浮かべながら、ゆっくりと口を開いた。
「本来であれば、太郎様が回復魔法をお使いになれると分かった時点で、直ちにジュード様のもとへご案内したかった...。しかし、それが本当に太郎様のためになるのか...。太郎様には何の関わりもない話である上、獣人国で今まさに進行している複雑な問題に巻き込んでしまう恐れがあると考えると...どうしてもその一歩を踏み出せなかったのです」
その言葉に、俺はサイモンの苦悩を感じ取った。彼は俺を巻き込まないように配慮しながらも、シリウスとの間で板挟みとなり、最善を尽くそうとしていたのだろう。
「しかし、太郎様が奴隷の購入をお考えだと伺い、大変驚きました。しかも、その条件が『知識を持ち、身体に欠陥や欠損があり、死期が近い』というもの...!そのお話を聞いた時、ジュード様と太郎様の間には、運命的な絆が存在しているのではないかと、つい確信めいた思いを抱いてしまいました」と、サイモンは語気を強めながら熱心に語りかけてきた。
確かに、それは俺が設定した条件そのものだった。まるでジュードに出会うために、この奴隷商館を訪れたかのような、そんな気さえしてくる...。
「ジュード様は、かつて獣人王国の最高司令官を務め、その深い知識と誠実なお人柄で広く知られております。このご縁を通じて、ジュード様が太郎様に忠誠を誓い、共に新たな未来を築かれる可能性も大いにございます」
確かにその通りだ。しかし、今は何よりもジュードの命を救うことが最優先だ。話を聞けば聞くほど、ジュードを失うにはあまりにも惜しい存在だと痛感する。
「ジュード様は、まだその尊いお命を手放すべき時ではございません!どうか、ジュード様をお救い下さい。この願いは、シリウスの為のものではございません!ジュード様のご尽力なくして、我々アーレント商会が獣人王国との貿易を円滑に進めることは不可能だったのです。どうか、ジュード様が再びその力を取り戻されることを心より切望しております!」
そう語りかけるサイモンの表情は、真剣そのものだった。
確かにジュードは、深い知識と類い稀なカリスマ性を兼ね備えた人物のようだ。もし彼を救い、俺のもとで力を貸してもらえるなら、これほど頼もしいことはない。
しかし、彼は獣人国の重鎮。健康を取り戻した後は、獣人国に帰りたいと望むことも十分考えられる。それに、獣人国としても彼の帰還を強く願うに違いない。
だからこそ、いざその時が来れば、ジュードの意思を何よりも尊重し、静かに送り出してあげたい。「自分が助けたのだから従うべきだ」などという、浅ましい考えを持つつもりは無い。今はただ、ジュードの命を救うために、できる限りの最善を尽くすことに集中するのみだ。
もちろん、ジュードが俺を選び、共に歩みたいと望んでくれるなら、それほど嬉しいことはないのだが...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シリウスの後を追い、ヒルメス奴隷商会内を駆け抜けた。やがて商会三階の最奥にある部屋の前で、シリウスが足を止める。その扉は幾重にも施錠され、廊下には屈強な護衛たちが鋭い目つきで見張っている。その視線の圧力に、思わず身が引き締まる思いがした。いくら魔法で何でもできるようになったとはいえ、心の奥底ではまだ昔の自分が顔を覗かせる。
そんなことを考えている間に、シリウスは手際よく鍵を解錠していく。最後の鍵が静かに外され、重厚な扉がゆっくりと開かれた。
ギギィィィィィ...。
扉が開かれると、柔らかな日差しが静かな部屋全体に広がり、どこか安らぎを感じさせる温かな空気が漂っていた。
部屋の中央には大きなベッドが据えられ、その周囲には簡素だが上品なテーブルと椅子、大きな窓と落ち着いた色合いのカーテンが控えめに配置されている。それらには一切の華美な装飾はなくとも、ひとつひとつに一流の職人による精緻な技が光り、確かな品格が感じられた。
そして、ベッドの上には一人の人物が静かに横たわっていた。顔に至るまで包帯で覆われ、弱々しい唸り声をあげながら苦しんでいる。俺たちが部屋に入ったことにも気づいていない様だ。
この人物が...ジュードなのか?
包帯に覆われたその姿に目を向ける。弱々しい唸り声が響く中、この先どのような言葉を交わすことになるのか、まだ想像もつかない。それでも、何かが始まろうとしていることだけは確かであった。
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