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第三章
21.垢抜けた自分
しおりを挟むーー翌朝。
洗面所の鏡で見慣れない自分を見て驚いた。
それもそのはず。
記憶の中は変わる以前の姿を根強く描いているから。
あ、そうだ!
髪型が変わった事だし、アレを使ってみようかな。
別の事にも挑戦したくなったのは、心に小さな変化が現れた証拠。
洗面所の上から二段目の引き出しを開けてコンタクトケースを二つ取り出した。
開封して片目分のコンタクトを指に乗せて、空いてる指を支えに目を大きくさせて装着する。
このコンタクトは、着ぐるみバイトをしていた時に購入したもの。
被り物をするとメガネが装着できなくて不自由だったからワンデーのコンタクトを使っていた。
学校に装着していくのは初めてだけど、どうせ変わるなら思いっきり変わった方がいい。
学校に到着して教室に入ると、普段はスルーをしていたクラスメイトが「誰?」とか「見て見て、別人みたい」と言って私に注目を始めた。
指をさしてきたり、噂話をしたり。
昨日まで透明人間だったせいか、気にされる事が不慣れで少し恥ずかしい。
またバカにされたらどうしよう。
弱気な殻が破りきれてないけど、生まれ変わると決めたからには腹をくくりたい。
「よっ、早川。おはよ」
最初に声をかけてきたのは渡辺くん。
同じクラスになってから一度もしゃべった事がないけど、座席の横の通路を通った際に声をかけてくれた。
それが、なんか不思議な気分だった。
「お……おはよ」
戸惑いながら返事をすると、前方から登校したばかりの日向がすれ違いざまに「評判いいじゃん」と呟いて席についた。
……なんか、いろんな意味でムカつく。
彼は昨日の昼間と同じで、黒縁メガネにマスク姿で黒髪のカツラをかぶっている。
昨日は金髪姿が衝撃的で目に焼き付いてしまったけど、声が彼本人だと確信させる。
でも、隠キャの日向の方が見慣れてるからしっくりくる。
「早川。おはよ。……あれ、髪切った? ……それに、コンタクトにしたの?」
教室の前方扉から二階堂くんが入ってきて私の変化に気付くと、笑顔で声をかけてきた。
「あっ、うん。ショートカットにしたんだけど似合うかなぁ……」
「うん、めちゃくちゃ似合うよ」
そう言って頭をポンポンしてから自分の席へ向かった。
なんか嬉しくなって頬が熱くなっていく。
登校してから5分足らずだけど、昨日とは違う1日が始まりを迎えた。
高校に進学してから一度も注目される事なんてなかったのに、今日はクラスメイトの見る目が違う。
ようやくクラスの一員として溶け込んだような気がして心が躍っていた。
一方、隣の席でその様子を一部始終見ていた杏は、ムスッとしたままジャージ袋を枕にしてバサっとふて寝をした。
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