先生の秘密はワインレッド

伊咲 汐恩

文字の大きさ
4 / 8

4.勝負眼鏡

しおりを挟む


「あれ? 先生、新しい眼鏡に変えたんッスか?」


 ……えっ、と思って耳を傾けた。
 彼は普段から黒縁とワインレッドの眼鏡を併用していたから。
 確認のためにスマホを開いて過去の画像を辿った。
 ざっと見たけど、確かに黒縁眼鏡の日が多い。体育祭とか文化祭などの行事の日もそう。
 だけど、私にはワインレッドの印象が根強い。こんなに黒縁の日が多いのに……。


 そこで見つけた一枚の画像。
 先生と二人きりの教室で数学のわからない所を聞いていた時にふざけて撮ったもの。
 唯一、至近距離で撮れたし、毎日眺めていたからかな。


「ははっ。これは君たちが高校生の頃から使ってるよ」

「へぇ~、見た事ないけど……」

「実はこれ、”勝負眼鏡”なんだ。特別な日にかけるものと決めててね」


 ……勝負、眼鏡?
 どういう意味かな。


「なんッスか、それ。今日かけてるってことは、もしかして、これから特別ななにかが?」

「あはは、それは内緒!」

「えぇーっ!! 勿体ぶらないでなにに勝負するか教えてくださいよ~。……あ、わかった~!! 女ッスよね?」

「こらこら、人をからかうんじゃないよ」


 嫌な予感がよぎった。
 あの眼鏡に特別な意味が含まれていたなんて。
 もしかして、これから恋人にプロポーズでもするのかな。先生ほど素敵な人なら彼女くらいいるよね。それに、もう結婚適齢期だし。

 私は当時から自分のことばかり考えてたから全然気づかなかった。
 だからあの時フラれたんだね。
 そう考えていたら、ワクワクしながら同窓会へ来た自分が恨めしくなった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

年上彼女と危険なバイト

月下花音
恋愛
時給1200円で始まった恋は、データじゃ測れないほど危険だった。 家賃滞納寸前の大学生・結城ゆうや(20)は、高時給の怪しいアルバイトに応募する。そこで彼を待っていたのは、心理学研究科の大学院生・水無瀬こころ(24)。知的でミステリアスな年上美女の彼女は、ゆうやに「恋愛感情の生理的反応を観察する実験」の“恋人役”を依頼する。 「これは実験よ。だから、手を繋ぐのも、キス寸前まで近づくのも、全てデータ収集のため。」 そう言い聞かせながら、二人の距離は30cm、10cm、そして0cmへと縮まっていく。心拍数、皮膚抵抗、瞳孔径――データは二人の感情の興奮を如実に示すが、ゆうやは次第に「演技」と「本音」の境界線に戸惑い始める。一方、こころも冷静な研究者の仮面の下で、ゆうやの純粋さに惹かれ、過去のトラウマと向き合うことに。 元カレの妨害、研究倫理の壁、そして「恋は再現不可能」という科学の結論。数々の困難を乗り越え、二人はデータでは測れない真の愛を見つけられるのか? これは、時給1200円のアルバイトから始まった、甘くて危険な心理学ラブコメディ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

一途な恋

凛子
恋愛
貴方だけ見つめてる……

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...