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第八章
46.今でも続いてる嫌がらせ
しおりを挟むーー最低気温が10度を下回り、朝晩が一段と肌寒くなってきた、11月上旬のある日。
紬と一緒に下校しようとしていたが、後ろから勝手についてきた蓮が新たに加わって三人で一緒に下駄箱へ向かった。
「ねぇねぇ、これから三人でカラオケに行かない?」
蓮は相変わらずノー天気。
今日も病気とは思えないほど明るい表情だ。
だけど、私達に病気と知られたくなくて無理している可能性もあるから反応に困る。
「いいね~! ねぇ、梓。蓮くんと三人で一緒にカラオケに行こうよ」
「えーっ。疲れから今日は帰りたい」
「断り方がババクセーな。本当は音痴だから行きたくないだけだろ」
「……(どうして余計なひと言を加えるのかなぁ)」
……とまぁ、こんな調子で会話をしながら、下駄箱に入っているローファーに指をかけた。
ところが、ローファーはいつもとは違う感触がした。
少し冷たいし湿ってる。
もしやと思って手前に引き出すと、ローファーは何故か水浸しになっていた。
かかとからはポタポタと水が滴っている。
「……」
久しぶりの顔が見えない嫌がらせに言葉を失う。
蓮の彼女だった頃は、こんな陰湿な嫌がらせなんてしょっちゅうだった。
蓮が把握していた嫌がらせなんて、ほんの一部に過ぎない。
でも、蓮がその現場に居合わせた時は一緒に解決してくれた。
泣いている私を抱きしめてくれて心を落ち着かせてくれたけど、蓮がいない時は余計な迷惑をかけたくなくて黙って一人で泣く日が多かった。
別れてからなくなったと思った嫌がらせは終わりが見えない。
私は自分でも知らぬ間に誰かに妬まれている事を思い知らされた。
「ヤダっ、梓の靴から水が滴ってる!」
愕然としながら靴を見ていると、隣で気付いた紬が悲鳴混じりの声を上げた。
すると、その隣で靴を履き替えていた蓮も異変に気付く。
蓮は紬の横をサッと通って梓の隣につくと、濡れたローファーをマジマジと眺めた。
「ひでー……。嫌がらせをした奴、相当頭がイッてんな」
蓮は梓の靴を下駄箱から取り出してしゃがみ込み、靴の中の水を片方づつすのこの下に流して振り払った。
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