Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩

文字の大きさ
165 / 184
第二十二章

165.誠意の塊

しおりを挟む


「柊とは上手くいってるの?」

「先生っ!」


「あはは、ごめん……。今更こんな話をするのもなんだけど、客観的に見てたら梓の気持ちが丸わかりでさ」

「やっぱり、私の気持ち気付いてたんだ」


「うん、気付いてた」

「……ごめんなさい」



  先生の性格からして私の気持ちを見て見ぬふりをした訳じゃないと思うけど、大人な対応に気持ちが置いてけぼりになった。



「柊ってさ……、凄いね」

「えっ、どんな所が?」


「まっしぐらなところ。柊を見ていたら、本当に梓が好きなんだなって伝わってきたよ。お前達は本当によく似てる」

「似てる?  私と蓮が?」


「うん、似てる」

「そうかな。自分じゃよくわからないけど……」


「後夜祭のステージ上での告白、びっくりしたよ。あれだけ人気のある子が全校生徒の前で誠意を見せつけてくるなんてね。女子の悲鳴が教室まで届いてきたよ」

「私もびっくりした。そのせいで散々な日々を送らされたけどね」


「色々あったね。校長室でまさか恋のライバルにピンチを救ってもらえるなんて思わなかった」

「私も……。蓮が校長室に飛び込んで来るなんて思いもしなかった。あの後、私が退学になったら意味ないからって怒り狂ってたよ」



  梓が蓮の事を思い浮かべながら夢中で話していると、梓の変化に気付いた高梨は言った。



「ほら、そーゆーところ!」

「へっ?」


「柊の話をしてる時は恋する顔になってるよ。柊も同じだったから」

「そ……っかなぁ」


「あいつはモテる事を鼻にかけずに梓、梓って夢中に追いかけてたよね。その間、僕の事なんて眼中になかったんじゃないかな。きっと、一途な想いを丸出しにしてきた分、他の子は尚更柊が魅力的に思えたんじゃないかな」

「えっ……」


「疑似恋愛ってやつ?  自分も梓みたいに柊に大切にしてもらいたいから近付く子が多かったんじゃない?」

「どうかな……。ファンが多くて私にはよくわからないけど」


「情けない事に、柊に負けるかもって思い始めてからあっという間だった。結局、僕は自分自身に勝てなかったんだよな」



  先生は過去を振り返るような目でそう言い、窓辺に肘をかけて外を眺めた。
  私も隣に行き、同じく外に目を向けた。



  先生は私の事も蓮の気持ちも十分に理解していた。
  蓮は負けず嫌いな上に、私の事になると見境がなくなってしまうから、交際していた頃はさぞがしく大変だっただろう。

  いま先生とこうやって落ち着いて話せるようになったのは、先生が恋人から生徒目線にシフトしてくれたから。
  私は先生と別れた後も、先生というひとりの大人に救われている。


  すると、このタイミングで鞄の中のスマホのバイブが作動した。
  発信者は恐らく先ほど通話を一方的に切ってきた大和から。

  話に区切りがついたところを見計らって先生に言った。



「先生」

「ん?」


「私、先生を好きになって良かった。先生は信じる事の大切さや、相手を思いやる気持ちを教えてくれたから。大人の魔法をかけてくれたのは先生だけ。いっぱい理解してくれてありがとう」

「こちらこそありがとう。梓と付き合えて幸せだったよ。これからは素晴らしい新生活を送ってね」


「先生も幸せになってね」



  最後に先生と握手を交わしてから、その場を離れた。
  先生は笑顔で見送り手を振る。
  私も半年間愛してくれた先生の方に振り返って、大きく手を振り返した。



  高梨は梓の姿が見えなくなってから、壁に背中をもたらせながら見上げた。



『センセーはどう思ってるか知らないけど……。俺、マジだから』

『卒業までには絶対梓を返してもらうからな』



  高梨は負けん気な態度で挑んできた蓮を思い描いた途端、プッと吹き出した。



「あいつは誠意の塊だったな。僕も負けないくらい梓を大切にしていたつもりだけど、あいつの想いには到底敵わないな」



  誰にも聞こえない声で小さくそう呟いた後、高梨は窓から差し込む光に包まれながら職員室へ戻って行った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

俺様系和服社長の家庭教師になりました。

蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。  ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。  冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。  「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」  それから気づくと色の家庭教師になることに!?  期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、  俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します

縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。 大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。 だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。 そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。 ☆最初の方は恋愛要素が少なめです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

処理中です...