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第二十三章
167.梓の実態
しおりを挟むーー今朝紬ちゃんと会う約束をしていた俺は、ホームルーム後に用事を済ませてから、約束の場所の校舎前の花壇に向かった。
すると、彼女は花壇のレンガに腰をかけて待っていた。
「……ごめん、あっちこっち呼び出し食らっちゃって。かなり待たせちゃったよね」
「ううん、全然平気。蓮くん忙しそうだね」
「明日で卒業式だからね。俺に用がある人が多くて……」
「みんな蓮くんとのお別れが寂しいんだよ」
蓮は紬と話しながら花壇のレンガに腰を落ち着かせる。
受験を終えてから久々に登校すると、同級生や下級生から呼び出されて引っ張りだこに。
紬ちゃんと約束したとはいえ、完全に放置状態だったから恐らく40分くらいはこの場所で待っていたはず。
三寒四温のこの季節、春を迎えたとはいえまだ風は冷たく、長々と待ちぼうけを食らっていた彼女は少し寒そうに腕を寄せて肩をすくめていた。
途中、帰ってもおかしくないくらい待たせてしまったのに、彼女は文句一つ言わずに俺を待っていた。
その凛とした姿勢が話の重要性を物語っている。
「蓮くん……。明日でもう卒業だね」
「早いね。3年間あっという間だったよ」
「蓮くんにとって、どんな3年間だった?」
「俺? そうだなぁ……。楽しいと苦しいが入り混じった3年間だったかな。幸せな時間は早く過ぎ去るのに、辛い時間はどうして長く感じるのかな」
蓮は俯いたままポツリとそう言うと、紬は梓の顔を思い描きながら言った。
「蓮くん、花音の悪口の件で梓とケンカしちゃったんだよね」
「……」
「仲直りしないの? それとも、卒業と同時にお別れなの?」
「……まだわからない」
紬ちゃんは時より寒そうにコートの袖口から覗かせる指先同士を擦ったり、口元に当てて温かい息を吐いたりしている。
彼女は梓に復縁を迫る俺を一番身近で応援してくれた。
そして、卒業式前日の今日も俺達の仲を心配している。
「実はね、蓮くんが見ていない所でも梓に嫌がらせが繰り返されていたの。多分、蓮くんが把握してるのは全体の半分程度だと思う」
「半分程度って……。そんなに嫌がらせが酷かったの?」
俺は仰天した目を向けると、彼女はコクンと頷いた。
嫌がらせの実態は把握していたけど、自分は半分程度しか知らないとなると話は別に。
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