契約彼氏とロボット彼女 〜100万円から始まる100%の恋〜

伊咲 汐恩

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第一章

7.幸せな時間

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「ちなみにレンタルは他にもございます。冠婚葬祭時に雇うレンタル家族、話し相手が欲しい時に雇うレンタル友達。レンタル業界の株価は年々上昇傾向にございます」

「株価が上昇傾向なんて、寂しい世の中ですね。でも、勤務を終えたらまた他人に戻るんでしょうね……」


「残念ながら、それがレンタルというものなんです」



  自分の必要な時にお金で人を借りて。
タイムリミットが来たらサヨナラ。

  その二つを繋いでいるのは、お金という現実社会。



売るのは欲で。
買うのは夢なのかな。

  でも、お金で割り切った関係でいられるから、実際は精神的に楽なのかもしれない。



「私は人材派遣会社に依頼しましたが、お気に召した方に直談判される方もいらっしゃるようです」

「えっ!  本人に……」


「そこでご提案なのですが…。沙耶香さんも思い切って意中のあの方にレンタル恋人を依頼してみてはいかがでしょうか」

「あっ、あの方ですか。でも、あの方と接触する自信がないのでレンタルでも難しいかと……」


「私と同じ様に沙耶香さんにも幸せな時間を味わって欲しいんです」

「でも、過密スケジュールが……」


「沙耶香さん、本当に現状で満足していますか?  そろそろ型破りしてみませんか」



返答に口は震えたが、彼女がピンポイントで伝えてきたあの方とは、四年間脇目も振らずに想いを寄せている人物。

まともに会話をした事がない相手にレンタル恋人を依頼するなんて。



「でっ、でも……怖いです。成功するか分からないし」

「後悔しませんか?  沙耶香さんにはもう時間がありません。最後の思い出にいかがでしょうか」


「最後の思い出。……そうですね、沙耶香にはあと一ヶ月しか……」

「思いきってチャレンジしてみては如何でしょうか?」



私に残された時間は一ヶ月間。
それ以上の時間はこの先一生与えられない。

だから、『最後の思い出』というキーワードに気持ちが揺さぶられた。





自由がないから翼が欲しい。

幼い頃からずっとそう思っていた。

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