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第二章
11.勇気
しおりを挟むーー時は来た。
今日は金曜日の14時45分。
場所は駅から徒歩15分ほどの住宅街にあるチェーン店のコンビニ。
漆黒のリムジンやベンツがコンビニ駐車場に停車すると目立ってしまうので、彼の様子を見に行く時はいつも向かいの公園の裏手に車を待機させてもらっていた。
でも、今日は逃げも隠れもせず表に堂々と駐車。
昨日はネイルサロンに行って爪は可愛くしてもらったし、先ほどは美容院に行った。
買ったばかりのお気に入りの紺色のワンピースを身に纏ってきた。
細いフレームの黒縁メガネは今日初めてつけた。
大丈夫。
きっと成功する。
心に強い気持ちを念じながら気持ちを奮い立たせたけど、不安な気持ちも見え隠れしている。
車から下りる際にパンプスが脱げてしまいそうなほど足がガクガク震えて、車の扉が閉まる音だけで身体がビクッと揺れ動くくらい神経が過敏に。
しかし、今日という日は臆病な殻を破る決意をしていた。
コンビニの自動ドアから二メートル手前に立つ沙耶香の右手には右京、そして左手には左京。
沙耶香は二人に車内で待機するように何度も念押したが、心配性が故に同意は得られなかった。
車から一歩前に足を踏み出すと、右京が先回りして自動ドアを開ける。
沙耶香が先導を切って店内に入ると入店音が鳴った。
「いらっしゃいませ~」
レジで接客して商品を袋詰めしてる颯斗の声に沙耶香の心臓が反応する。
ドキン…… ドキン……
それは今に始まった事じゃないが、プレッシャーに押し固められているせいもあって怖気付いてしまう。
沙耶香「やっぱり、帰っ……」
左京「お嬢様、いま諦めたら空白の一ヶ月間になってしまいますよ」
沙耶香「……冗談ですよ。お父様への誓約書にサインをしましたからね。そろそろ行きます」
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