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第九章
95.小さな冒険心
しおりを挟むーーあれは、四年前。
習い事に向かっている最中、車窓から眺めていた外の世界にふと興味が沸いた。
何故なら生まれた頃から外の世界とは無縁な生活を送っていたから。
「菅、お手洗いに行きたくなったので、そこのコンビニに車を停めてくれませんか?」
私はボディーガードがついていないタイミングを見計らって、生まれて初めて一人で外の世界に羽ばたいた。
スーパーよりも小規模なコンビニエンスストア。
入り口正面には生活雑貨。
右側には新聞。
左側にはコピー機。
その奥には雑誌がずらりと並んでいる。
物珍しい目で三、四歩奥へと進んだ瞬間…。
「レジの金を全てよこせ。さもないとこの子の命は保証しない」
私の身は強盗犯の腕に捕えられてしまった。
首元に突きつけられる刃物。
背後から降り注ぐ男の声。
私はその時トラブルに巻き込まれた事を知った。
殺伐とした店内に恐怖でガタガタと震える身体。
店内客から注目を浴びる視線。
小さな冒険心が握りつぶされて生きた心地がしなかったのは言うまでもない。
しかし……。
ガバっ…
背後から忍足で現れた颯斗さんが危険を顧みずに犯人の身体に覆い被さった。
それと同時に犯人の腕から解放された瞬間、勢い余って前方に転んだ。
「何するんだ、このやろぉぉ」
犯人の怒鳴り声ですかさず振り返ると、犯人が振り回した刃物によって彼の左手の甲が切りつけられた。
「……ってえな! 何するんだよ!」
「金を出せ。さもなければ……」
犯人はそう言い、再び彼の方へ刃物を向ける。
しかし、彼も負けじと犯人に立ち向かって手元の刃物を足で振り払った。
コンビニ内に飛び交う荒げた怒声。
力づくで取っ組み合う彼と犯人。
床にポタポタと滴っていく生々しい血。
生まれた頃から安全圏で生きてきた自分にとって、衝撃的な地獄絵図に莫大な恐怖を覚えた。
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