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第九章
103.大粒の涙
しおりを挟むすると、沙耶香の父親は眉間に皺を寄せ勢いよく席を立って颯斗の方へ指をさしながら怒号を浴びせた。
「君は誰なんだ! 今は娘の大事な挙式の最中だ。ふざけた真似は辞めて今すぐここから立ち去りなさい」
声がチャペル内に響き渡ったと同時に、親戚や会社関係者などの参列者がガヤつき始める。
結婚式をぶち壊されて気分を害された瞬も、嫌悪感を露わにしながら一歩前へ。
「あんたは何言ってるの? いきなりチャペルに侵入してきて、恋人なんちゃら契約書とか言ってさ。そんなに人の結婚式をぶち壊したいの? でもね、俺は今から沙耶香と結婚するよ。もう誓いの言葉が終わってるし、これから誓いのキスを……」
「契約します」
沙耶香は瞬の声を掻き消すようにそう言うと、チャペル内はシンと静まり返った。
「えっ……」
瞬はギョッとした目を向ける。
沙耶香は瞬の気持ちなどお構いせずに、胸に手を当てて颯斗を真っ直ぐに見つめながら言った。
「沙耶香が幸せにしてもらいたい相手は、ここにいる瞬さんではありません」
「はぁ? お前、何言って……」
「辛い時は大丈夫だよって。苦しくなったら寄りかかればいいじゃんって。生まれて此の方、沙耶香の気持ちを大切にしてくれたのは世界でたった一人……。命の恩人の颯斗さんしかいませんから」
沙耶香は颯斗に向けて幸せそうに微笑むと、瞳からキラキラと輝く大粒の涙を流した。
父親は幼少期から感情を一切覗かせなかった沙耶香の恋する眼差しを見た瞬間、ハッと目を見開かせた。
颯斗は出会ってから初めて見せた沙耶香の笑顔を見ると顔がほころぶ。
「……もう、ロボットなんて言わせません。人の命令に従って生きるのは懲り懲りです。沙耶香は颯斗さんと幸せになる為に生まれてきました。……だから、瞬さんと結婚は出来ません」
沙耶香はグローブの上から指輪を外して主祭壇に置くと、両社長の側近が反応して席を立ち颯斗の方向に身体を向けた。
颯斗はピンチを察した瞬間、すかさず沙耶香の方へ足を向かわせる。
「よし、行くぞっ!」
沙耶香はドレスのスカートを持ち上げてバージンロードを駆け抜ける。
颯斗はさっと手を差し出すと、沙耶香は手を握りしめて一緒に扉方面へと走り出した。
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