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第九章
102.夢と現実の狭間
しおりを挟む「サヤ……。いや、黒崎沙耶香さん。俺はこの結婚が受け入れられません。何故なら、沙耶香を心から愛してるから。他の男の所になんて嫁がせたくない。……だから、いまこの瞬間から俺と契約して下さい」
「えっ……」
「恋人業務委託契約書。鈴木颯斗は黒崎沙耶香に対して私生活上のパートナーとして業務委託契約を締結する。業務内容は、沙耶香が俺の隣で文句の一つすら言えなくなるくらい幸せになる事」
「……っ」
「契約期限は無期限。安定した職や地位や名誉や金はないけど、人一倍の愛情で包み込む自信がある。決して後悔させない。契約するか否かは沙耶香の判断に任せる」
俺は夫婦として誓いを立てるこの神聖な場所で、恋人業務委託契約書を手にしたまま彼女のストレートな性格に全てを賭けた。
神父や両家の親族が見守る中、夫婦になろうとしている二人の間に割り込むなんて当然罰当たりだし、場違いな事を言ってるのは百も承知だ。
それでも俺は自分の気持ちに正直でいたかった。
相手は人気俳優且つ財閥の御曹司。
俺が持っていないものを全て持っている。
それに比べて自分はただのフリーター。
でも、このチャンスを逃してしまったらサヤは二度と戻ってこない。
偽物から始まった恋人関係。
けれど、満了日を迎える頃には本気で恋をしていた。
どうでもいい存在なら、人生を犠牲にしてまで結婚式をぶち壊しに来たりなんてしない。
一方、籠の中の鳥として育ってきた沙耶香にとっても、颯斗への返事は大きな賭けとなる。
イエスの返事をしたら会社や家族には莫大な損害や迷惑を被る。
だが、颯斗の思いを受け取らなかったら自分の気持ちがつぶれてしまう。
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現実に直面した沙耶香。
互いの目を見つめ合う二人は、夢と現実の狭間で気持ちが揺れ動いていた。
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