契約彼氏とロボット彼女 〜100万円から始まる100%の恋〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
119 / 121
最終章

118.銀色の物の正体

しおりを挟む


「右京さん、銃で撃つのは勘弁して下さい。俺はまだ死にたくない!」



  俺は恐怖で唇を震わせながら、両手を前に突き出した。
  情けない事に気が動転するあまり声がひっくり返ってしまったが……。


カサカサ……

ポリっ……ポリっ……



「ん……?」



  右京さんの内ポケットから出てきたのは、なんと銃ではなくて一枚の板チョコレート。
  キラキラと銀色に輝いていた物の正体はチョコレートの包み紙で、銀紙をくるりと剥いてチョコレートをパクりとかじっていく。

  俺はキョトンとした目のまま震えた指先を彼に向けた。



「もしかして、内ポケットに入っていた銀色の物体は元々銃じゃなかったの?」



  すると、沙耶香は平然とした表情でサラリと答えた。



「日本で銃を所持出来るわけないじゃないですか。右京は興奮した時にチョコレートを食べて気持ちを落ち着かせたりするんです」


「へっ?  俺はてっきり銃で撃たれるかと……」

「颯斗さんったら想像力が豊かなんですね。右京は以前勤務中にチョコレートを食べたのがバレて、父親から禁語令が出されてしまって……。あ!  そろそろ解除日だったような」



  俺は右京さんと出会ってからよくわからない言葉で会話していたから、てっきり喋れないのかと思っていた。

  しかも、禁語令が出されてしまった原因が勤務中のチョコレート。
  更に、訳わからない言葉が何故か家族間でちゃんと伝わってる意味がわからない。



右京「誰も喋れないとは言ってません。ペナルティとして旦那様からの命令に従っただけです」



  彼はチョコレートをガシガシとかじりながら左京さんと同じ声でそう言った。


  思わず言葉を失った。
俺は今日まで一体何に怯えていたのだろう……。

  右京さんが機嫌を損ねた後、内ポケットから銀色のものが光る度に「撃つな」と言って防御力を全開にしていた。
  その間、誰も勘違いを指摘してくれなかったから、いま思えば一人で恥晒しをしていただけ。



「あっ、そう。ははっ……ははっ……」



  俺は100万円を持って現れた沙耶香と初めて会った時は相当変わり者だなと思っていたけど、就いているボディーガードも相当変わり者だと痛感した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

処理中です...