6 / 49
5.仲が良い二人
しおりを挟む――十一月二十一日。昼休みの渡り廊下。
生徒たちがまばらに声で賑やかせてる中、私と波瑠は自販機でジュースを購入してから教室へ戻ってる最中に中庭で楽しそうにランチしている星河と櫻坂さんを発見した。波瑠は窓の向こうに目線を下ろして二人を眺めながら呟いた。
「あの二人、ほんっとラブラブだよねぇ~。授業中以外いつも一緒にいるし」
「……一緒にいるからラブラブとは限らないよ」
最近波瑠が口を開けば星河たちの話をしてるように思えて、無意識に可愛げのない返事をしていた。
確かに顔を合わせればお互い減らず口をたたいたりするけど、星河は幼なじみ……、いや、存在が近すぎてほぼ親友だから。つまり、いまは彼女ができてから学校で話す時間すら減っているから、それが少し物足りなく思っていた。
すると、波瑠はにやにやしながら言った。
「ほぅほぅ、それってヤキモチでは?」
「はああっ?! 私がヤキモチなんて!! 星河なんて興味ない!!」
「それさ、何度も聞いてるけど口癖になってない? ん~まぁ……、顔、普通。体型、普通。性格、普通、勉強、平均より下。女らしさ、足りない。将来の夢、ない。……そうだよね、あんたじゃ勝ち目ないか。はぁぁ~」
「ちょっと待ったぁぁあ! どうして私の胸を見てため息つくの? 確かに大きくないけど……さ」
思わず目線が胸にストンと降りた。確かに推定Dカップの櫻坂さんと比べるとボリュームが足りない。でも、胸だけが女の価値じゃない。いやっ!! それ以前にヤキモチとか関係ないし。
胸の大きさなんてもっと関係ないし! ……ってか、先日櫻坂さんは星河に看護師になりたいって言ってた。ちゃんと自分の夢を持ってるということは、私は普通に全部負けてない?!
「あっはっは! 見てない見てない~」
「こらっ! 見てた! ……ってか、勝つとか負ける以前の問題だから」
「へぇ~、本当に?」
「本当に!」
波瑠の言う通り、二人はクラス公認のカップルだ。
少し前までは私が身近な存在だったのに。でも、いまは自然と櫻坂さんに気を使ってしまっているせいか、校内で星河と喋る機会も減った。バイト先では普通に喋ってるけど、忙しいからなんか物足りないというか……。幼なじみの歳月が長かった分、二人がどこへ居ても気になってしまう。
――この時の私は、星河と櫻坂さんのことで頭がいっぱいになっていた。
しかしこの直後、そんな私に最低かつ最高な出来事が訪れて運命が大きく狂わされていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる