キミとの恋がドラマチックなんて聞いてない!

伊咲 汐恩

文字の大きさ
36 / 49

35.認識の違い

しおりを挟む


 ――私は今朝から何度もスマホをチェックしていた。
 昨日星河たちのキスシーンを見てから気分は冴えないけど、今日は待ちに待ったパティシエコンテスト。
 だから、星河からいつ連絡があってもいいようにスタンバイしていた。


 今日は昼から郁哉先輩とデート。
 本来なら午後からバイトだったけど、それがなくなって時間に余裕ができたと先輩に話したら、先日約束したイタリアンのお店に行こうということになった。
 あの郁哉先輩からお誘いされるなんて夢のまた夢くらい嬉しいはずなのに、頭の中は昨日から星河のことで埋め尽くされている。

 私たちはレストランでメニューを開いた。
 割と早めに注文するものが決まったので、スマホを手に取ると……。


「まひろちゃん、やけにスマホばかり見てるけど今日なにかあるの?」


 先輩からのまさかのご指摘に動揺した。


「えっ?! べっ、別に何も……」

「そ? 注文するもの決まった?」

「えっと……、ボンゴレロッソ。先輩は何にします?」

「俺は有機野菜のペペロンチーノ」

「あっ、いいですね。私もさっきから気になってました」

「俺たち気が合うかもね」

「えっ」

「すみませーーん! オーダーお願いします」


 意中の人とデートをしているのに他の男性のことを考えてるなんて最低だ。
 わかってはいるけど、星河が今日という日のために練習してきた姿を長々と見てきた分進捗状況が気になっている。


 先輩があまりにも美しいから周囲の女子からの目線をかき集めている。
 それに気づきつつも、星河の事ばかりが気になっていてスマホを触り続けていた。

 でも、連絡は入らない。
 いまは昼休みの時間なのに、メッセージは一文字も送られてこない。
 もしかしたら、会場ではスマホ禁止かもしれないし、お昼時間をとらずにぶっ通しで作業を進めているのかな。
 ……ダメダメ。いまは郁哉先輩と二人きりの時間だから幸せを堪能しなきゃいけない。


 料理が到着してテーブルに並べられる。私はここからが本領発揮の時間に。スマホのカメラに収まるようにお皿を並べ直してからスマホカメラを起動させると、先輩は食事を始めた。


「先輩、料理が来たばかりなのに、もう食事を始めるんですか?」

「まひろちゃんこそ食べないの? 早くしないと冷めちゃうよ」

「料理の彩りとか、目で楽しまないんですか?」

「もう楽しんだよ」

「えっ、そんなに一瞬……。なかなか見れる機会がないから、盛り付けのこだわりや、作ってる人の想いとか知りたいじゃないですか」

「でも、料理は温かいうちに食べる方がいいと思う。提供する側もそれを願ってるんじゃないかな」

「そう、ですよね……」


 私たちは意見が食い違ってしまったけど、どちらも正解だ。ただ、認識が違うだけ……。
 これがもし星河だったら……と思ってしまう、間違いだらけの自分がここにいる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩
恋愛
高校三年生の菊池梓は教師の高梨と交際中。ある日、元彼 蓮に密会現場を目撃されてしまい、復縁宣言される。蓮は心の距離を縮めようと接近を試みるが言葉の履き違えから不治の病と勘違いされる。慎重に恋愛を進める高梨とは対照的に蓮は度重なる嫌がらせと戦う梓を支えていく。後夜祭の時に密会している梓達の前に現れた蓮は梓の手を取って高梨に堂々とライバル宣言をする。そして、後夜祭のステージ上で付き合って欲しいと言い…。 ※ この物語はフィクションです。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 この作品は「魔法のiらんど、野いちご、ベリーズカフェ、エブリスタ、小説家になろう」にも掲載してます。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...