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第一章
20.アピール作戦
しおりを挟むメガネくんと地道に距離を縮めていく作戦にシフトした私は、翌日から授業の合間の休み時間の度に彼のクラスの教室付近を周回する事にした。
モテ女としての意地とプライドを守る為に諦めないと決めた。
今日から偽物の恋が本格的にスタートを迎える。
この恋が本物になるかどうか、現段階では月へ一泊二日の旅行が出来るくらい低確率だ。
メガネのレンズがお札に見えてる限り恋はしないだろう。
「おっはよー! 和葉が遊びに来たよ~。ねぇねぇ、先生が来るまで二人きりで話をしようよ。拓真が構ってくれないと和葉めちゃくちゃ寂しい」
「……」
登校してから早速彼のクラスに侵入。
カバンの中身を机の中にしまっているメガネくんの向かいの席に座り、甘え口調で子犬のようなつぶらな瞳を向けた。
だが、彼は耳に蓋をするかのように無視をする。
絶対私の姿が視界に入ってるし、声だって聞こえているはずなのに返事が戻ってこない。
でも、最初から過剰な期待などしていない。
次は一時間後。
今と同じようなアピール作戦が、再び執り行われる。
「ねぇ、今日は何の本読んでるの? 和葉の隣で読んで~」
「……」
まるで鳩時計のように、きっちり決まった時間に出現する。
教室の窓際に腰をかけて本を読む彼の真横から、身体を左右に揺らしながら本を覗き込んだ。
しかし、メガネくんは本から一切目を離さない。
今回もダメだ。
次はまた一時間後にリベンジ。
「拓ちゃ~ん。いつも本なんて読んでないで、和葉と遊ぼうったら~。『風と共に去りぬ』を読んでるの?それよりも、台風のように現れた超絶美人の和葉と遊んだ方が100倍楽しいよ」
「~~っく!!」
友達の輪の中に入る事なく一人の時間を多く過ごす彼は、昼休みに中庭のいつもの場所で一人静かに本を読んでいる。
だから、それをチャンスを逆手に取り、彼のテリトリー内に侵入して自分の存在を記憶に根付かせようとした。
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