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第二章
36.邪な気持ち
しおりを挟む非常に答えにくい質問に和葉の目線は自然と左へ流れる。
「た……拓真と付き合いたい理由は……、(お金が)すっ、好きだから」
「(俺が)そんなに好きなの?」
「……うん、(金が)狂おしいほどに」
「くっ……狂おしいほど?! 嘘つけ」
奴は私が好意を寄せていると思ったかもしれないけど、私は邪な気持ちで満載だ。
だけど、40センチの距離感はいつも隣から見上げてる光景とはまた違う。
なんて言うか……。
胸がザワザワするというか。
もしかしたら、フラれた事が精神的にキているのかもしれない。
「別に嫌いじゃねぇよ。肝っ玉座ってるあんたのそーゆートコ」
拓真はそう言うとフッと笑みを浮かべた。
ツンデレと言われている奴の性格は、まるで飴と鞭。
鞭で散々叩ききった挙句に、まるで何事もなかったかのように甘い甘い飴は差し出された。
いっその事、奴を嫌いになれば楽になるのに、初めて見せた表情変化に思わず目線が奪われた。
「ま、お前はどうしようもないほど【SBO】だけどな」
「……え? SBOって、何ソレ? 初耳」
「意味は自分で考えろ。頭が悪そうなお前でも、少し考えれば意味がわかるから」
拓真は和葉の隣にストンと座って片膝を上げて手を置き、目線を遠くに向けた。
頭が悪そうだなんて失礼しちゃう。
まだ私の事を何も知らないクセに。
しかも、急にSBOとか訳の分からない事を言い始めた挙句に『わかるだろ?』と言われてもね。
意味がわからないから初耳だって言ったのに。
「えっ、それって何かの略? ……んー、なんだろう。全然わかんない。せめてわかりやすいヒントを教えてよ」
「俺がいま感じている事だ。(S=最高に B=バカで O=オカシイ の略に決まってるだろ)」
「えっ、拓真が私に感じてる事? えーっと、えーっと。なんだろ……」
偽りの恋に玉砕してただですら混乱してるのに、奴の予測不能なひと言に頭を悩ませた。
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