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第五章
132.新しい自分
しおりを挟む静かに動向を見守っていた拓真は、和葉の勇敢な姿を見てフッと口元を緩ませた。
拓真が手助けをしてくれたのは、危険から身を守るところまで。
あとは、私が勇気を出して気持ちを吐き出せるように道を切り開いてくれた。
必要以上に手は貸さない。
たった一度きりの話し合いで、解決を望んでいる。
それが、幼い頃から数々の苦難と苦境を乗り越えてきた考え方なんだね。
拓真が何故そう仕向けたのか、日々想いを積み上げて来た私にはわかってるよ。
すると、男は力も考え方も拓真に敵わないと思ったのか、悔しそうな表情で観念の言葉を口にした。
「ちっ……。分かったよ! 離せっ!」
「わかればいい。もう二度とこんな馬鹿げた真似をするなよ。俺はチャンスは二度も与えない主義だから」
「くそっ……。覚えてろよ」
男は拓真の手を振りほどいて地に降りると、よろけた足取りで車へと向かった。
和葉は男が立ち去ったと同時に一気に緊張がほぐれてしまい、安堵するあまり腰が砕けた。
男が道路脇に停車させている車に乗り込むと、拓真はすかさずポケットからスマホを取り出してカメラを起動すると、男のナンバープレートの写真撮影をする。
「ねぇ、何でアイツの車の写真を撮ったの?」
「ナンバープレートが映ってる画像があれば、身元を判明させる証拠の一つになるだろ。」
「凄い! 機転が利くね」
「昔、ダチがバイクで車と接触事故を起こした時に、事故に繋がる証拠が見つからなくて、最後まで加害者の身元が判明しない事があったから。次に何かトラブルが遭ったら、証拠になる写真を撮ろうと思っててね」
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そして、私は今日まで17年間身に纏ってきた汚い殻を脱ぎ捨てて、本物の恋をする新しい自分と向き合い始める事に。
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