上 下
13 / 66
第二章

12.無愛想な彼女

しおりを挟む



  ーー高校生活にも慣れ始めた、とある日の体育の授業開始直後、サッカーの授業の為、美那が後ろ歩きのままボールの入ってるカゴを引いて倉庫から出てくると……。

  ドンッ……

  別の作業をしていてちょうど後ろを通りかかった同じクラスの河合 紗彩かわい さあやに背中が当たってしまい、びっくりして振り返った。



「……っ!」

「あ!  河合さん、ごめんなさい」


「……」



  美那はすかさず謝ったが、紗彩は長い髪の隙間から冷たい目を向けると、何も言わずにその場から去って行った。
  二人のやりとりを見ていた澪が曇った表情のまま美那の元へ。



澪「河合さんってさ、息を飲むくらい美人だけど、いつも単独行動だしクールだよね」

美那「まだクラスに馴染めないのかなぁ」


澪「さぁね。自分から話しかけたいような雰囲気を出してないし、元々1人が好きなのかなぁ。あれだけ美人だから愛想良ければ友達いっぱい出来ると思うのに」

怜「おっしゃ!  それなら俺に任せろっ!」



  と、陽気な声で後ろから突然湧き出てきた怜は、2人の肩をぽんぽんと叩くと紗彩の元へ。
  2人は怜の性格なら何かを変えてくれると思って期待していたが……。

  ーー5分後。

  チーン……
  意気込んで向かったはずの怜は、ガックリと肩を落としながら美那たちの元へ戻って来た。



怜「俺、やっぱり無理だわ……。美人苦手かもしんない」

美那「そんなにガッカリしてどうしたの?」

澪「なになに、河合さんに何か言われた?」


  怜「『うるさい、うざい、あっちへ行け』だって……。女子からあんなに酷い事を言われたのは初めてなんだけど……。確かにガンガン話しかけてたけどさぁ、同級生でほぼ初対面なのにそれはなくねぇ?」

澪「あっはっは!  確かにあんたはウザいから河合さんの対応が正解!」


怜「うるせっ!  お前なんかこうしてやるっ!」と言って、澪の髪をぐしゃぐしゃしてじゃれ始めた。

澪「何よ~~~っ!  もう!」と、澪はムキになって足蹴り。


怜「うぉっ、イテっ!  足蹴りはなしだろ!  でも、俺は負けないからな。河合さんと絶対友達になってやる!  体育は今日から得意なサッカーだから、ゴールをキメっキメでカッコイイところを見せつけて、河合さんに『怜くんかっこいい~』って言わせてやるからなっ」

澪「ばーか!  初っ端から嫌われてんのに言う訳ないでしょ、この妄想マシンがっ!」

美那「あははは……」



  この2人本当に仲が良いな。
  顔を合わせる度にケンカだけど、波長が合うと言うか……。

  美那は苦笑いしながらギャーギャーと仲良くたわむれている2人を見ていると……。

  バシッ……

  頭上で何かの衝撃音がした。
  澪と怜くんの方に気が取られていたから急展開にびっくりして肩をすくめると……。

しおりを挟む

処理中です...