ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

伊咲 汐恩

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第六章

44.怜の気持ち

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  ーー肝試しも無事に終わって最終組の確認まで終えた。
  すると、お化け担当の1人が山林から戻って来てレク係の4人に言った。



お化け担当「残り10分あるからお前らも肝試し行って来いよ」

美那「えっ……」

紗彩「わぁ、行きたいと思ってたんだ~。だって、準備だけじゃつまんないもん」

怜「名案~!」


お化け担当「さっきキーワードを書き換えて来たから最後に報告してね。タイムリミットは10分だからね」

夏都「わかった。グループ分けはどうする?」

怜「クジにしよ、クジ!」


お化け担当「オッケェイ!」



  段取りが決まると、お化け担当は受付で使用していた紙にあみだくじを書いて端っこを二回くるくると巻いて、4人それぞれに名前を書いてもらった。
  すると、紗彩は目を青く光らせてその何かをじっと見つめる。



お化け担当「じゃ、あみだを開けるよ」

怜「神様一生のお願いです。美那っちとペアになりますように……」怜は両指を組んで掲げる。

夏都•美那•紗彩「……」



  5人に囲まれた状態でお化け担当者の手でクジが開かれると、美那と怜、そして夏都と紗彩がペアになっていた。



怜「おっしゃぁぁぁあ!  俺の願いが神様に通じたかも。普段の行いが良かったのかな」

紗彩「……だといいね」

美那「怜くん……。たまたまだって」

夏都「……」



  お化け担当の1人が山林へ戻っていく最中、河合さんは私の横について耳元でボソッと小声で言った。



「今から滝原くんの血を頂く。絶対に邪魔しないでね」



  彼女はきっぱりと断言すると、長い髪をなびかせながら夏都の元へ駆け寄って行った。
  私は不安に思うあまり顔面蒼白に。

  河合さんが今から吸血を……。
  しかも、今日で3回目。
  滝原くんはまだ体調が万全じゃないのに吸血されたら、また……。
  どうしよう。
  そんなの、嫌。


  私は目をつぶってグッと唇をかみしめていると、滝原くん達はスタートした。
  その傍で、頭の中は他の事が考えられなくなるくらい思い詰めている。


  ーーそれから、3分後。
  私と怜くんは一つの懐中電灯を足元に照らしながらスタートした。
  虫の音が響き渡る暗闇の中、私は滝原くんの身体の心配ばかりしていた。



「美那っち、怖かったらぜんっぜん言ってくれていいんだからね! 俺が守ってあげるから!」

「……」


「あれ? 黙ってるけど、もしかしてもう怖いの?」

「あっ、ううん……。それより、少しペースを上げて滝原くん達と合流しない?」


「……どうして?」

「4人の方が賑やかで楽しいかもしれないし、怖くないかもしれないし……」



  私は怜くんの顔が見れないほど心に余裕がなくなっていた。
  すると、怜くんは一緒に歩いていた足を止めて背中から言った。



「そんなに夏都達が気になるの?」

「えっ!!」


「美那っちはいつもそう。俺の事もちゃんと見えてる?」

「えっ、それってどーゆー意……」
「俺、美那っちが好きだよ」



  怜くんは私の両手首を掴んでそう告げた。
  私は予想外の展開を迎えると、思考は一旦停止する。



「美那っちからしたら毎日冗談を言ってたように見えたかもしれないけど、あれが俺の全て。良い所も悪い所も全部見て欲しかった。夏都に持ってかれたくないからぶつかり合ったりもした。美那っちに本気な分、この瞬間ですらビビってる。それでも恋人になりたいから心の中で準備してきた。1日2日で考えた結論じゃないから、これからは俺だけを見て欲しい」



  彼はそう言うと、柔らかい眼差しで私を見つめた。

  怜くんが私を好き……?
  出会った当初から好意があるような言動をしていたから本心を聞き逃していた。
  ……でも、怜くんは澪の好きな人。
  そして、私を好きになっちゃいけない人。


  私が怜くんを見つめていると、その先のしげみに3分前に出発した滝原くん達の姿があった。
  そこで、無意識にシフトレバーがチェンジされる。



「……ごめん、行かなきゃ」

「美那っち!」


「怜くん、ごめんなさい」



  軽く頭を下げると、怜くんの手を解いて滝原くん達の方へ駆け寄った。
  その場に取り残してしまった怜くんの気持ちも考えぬまま……。


  どうしよう……。
  滝原くんはまだ吸血されてないっぽいけど間に合うかな。

  もし間に合わなかったら?
  河合さんは吸血したらヴァスピスが3点灯になるから、そのまま人間界から消えちゃうんだよね。
  じゃあ、取り残された滝原くんはしげみに倒れたままになっちゃうって事?
  そんなのダメっっ……。


  滝原くんが心配で気が狂いそうになった。
  夕方に降った雨で時より靴が滑りながらも滝原くん達の背中を追いかけて走った。

  ところが……。



「キャッ……」


  ドサッ……ドサドサッ……  バシャン……


  私はぬかるんでいる地面に足をとられて体勢を崩してしまい、木々の隙間の崖から滑り落ちて川へ転落してしまった。

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