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第二章
18.消えた上履き
しおりを挟む谷崎くんとは毎日顔を合わせてるお陰か、自然と心の距離が縮まって学校でも日常的に会話をするように。
彼は毎日無表情だったけど、学校でも徐々に笑顔を浮かべるようになって、周りのみんなも変わりゆく姿に気付いていた。
女子から人気ナンバーワンの谷崎くん。
国民的アイドルグループに在籍してそうなほどの美形だ。
だけど、転校してきたばかりの私が谷崎くんと急接近している姿を見て、羨ましさの余りに僻む子も。
谷崎くんと話してる時に視線が突き刺さってくる事もしばしば。
そして、僻みはやがて形となり……。
笑顔が消えるほどの悲しい事件へと繋がった。
ーー夏休み間近になり入道雲が空一面に広がっていた快晴のある日。
普段通り登校すると、下駄箱に入っているはずの上履きがなくなっていた。
軽く辺りを見回してみたけど、クラスメイトの上履きやシューズは下駄箱内に収まっているのに、何故か私の上履きだけが忽然と姿を消している。
こんな経験は生まれて初めて。
嫌がらせなのか、もしくは誰かが間違って履いて行ってしまったかさえ混乱してる今は分からない。
運動靴を脱いでから履くものがなくて、泣きべそをかきながらひんやりと感じる廊下を歩いて教室へと入った。
もぞもぞしている足は痛痒く感じる。
様子のおかしい愛里紗を見た友達は、心配そうな表情を浮かべて傍へと駆け寄った。
「あーりん! どうして泣いているの?」
「泣かないで、あーりん。泣いてる理由を私達に教えて」
友達の心配の声に反応したクラスメイトは、異変に気付いてザワつき始めた。
そして、学校へ到着したばかりの谷崎くんも気が付くと、ランドセルを席に置いてから傍へやって来た。
「何かあったの?」
翔は落ち着いた口調でそう問いかけた。
一方、胸が引き裂かれそうな辛い思いをして泣きじゃくっている愛里紗は、やり場のない悲しみと苦しみで戦っている。
翔はふと目線を落とすと、愛里紗が上履きも履かずに足のつま先を丸めて冷たそうにしている足元に気付く。
「お前の上履き……、なくなったの?」
語尾を失わせるように驚く。
愛里紗は両手で涙をぬぐいながら、素直にコクリと頷いた。
翔の鋭い指摘により周りの友達が反応すると、次々と愛里紗の足元に目線を移した。
愛里紗はみんなから一斉に足元に注目される事すら恥ずかしい。
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