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第二章
35.告白のタイミング
しおりを挟むーー今日は終業式。
と、同時にクリスマスイブもやってきた。
街にはクリスマスソングが流れていて、大きなクリスマスツリーが駅前を占領している。
色とりどりなイルミネーションが木々や建物に装飾されて街はクリスマスムード一色に。
今年もサンタさんは家に来てくれるかな。
一年の中で好きなイベントは誕生日に次いでクリスマス。
サンタクロースからプレゼントがもらえるし、家族三人揃ってケーキやご馳走を並べてパーティをする。
普段出張ばかりのお父さんは、誕生日とクリスマスの日だけは必ず家に帰って来る。
だから、クリスマスは私にとって特別で最高に幸せな一日だ。
学校から帰宅している最中、ミクの話を何度も思い返していた。
家に到着してから部屋に荷物を置き、ダイニングで母が用意した昼食に手をかける。
ところが、グゥッと鳴るくらいお腹が空いていたのに、何故かご飯が喉元を通らない。
上履きの件が解決して肩の荷が下りたというのに、食欲がない理由はそれだけではなさそう。
ミクが私にヤキモチを妬いて上履きを隠した事や、谷崎くんが私にしか笑いかけないという事。
それに、誰から見ても谷崎くんは私が好き……?
刺激を受けてしまったせいか、以前と同様頭の中がグチャグチャしてきた。
……いや、頭の中は一向に整理がつかないけど、ミクに谷崎くんを奪われてしまうと焦っていたあの時とは明らかに違う。
あの時よりも物事が少しずつ前進しているような気がした。
私が一方的に谷崎くんを想ってるだけじゃなくて、谷崎くんも私を想ってくれている可能性がある。
もしかして、告白のタイミングは今……かなぁ。
愛里紗は気持ちが高揚していくと、再び暴走してしまわぬようにノグとミキを自宅へ呼び寄せた。
ーー20分後、二人は家に到着。
突然ただならぬ意気込みで呼び出された二人は何事かと思い、愛里紗の部屋で互いに顔を合わせた。
愛里紗は体育館前でミクと話し合った事を一つ一つ思い返しながら伝えた。
上履きの件から、大きな決断まで……。
「私、今日谷崎くんに告白する」
一度目に放った爆弾は暴発してしまったけど、二発目ともなるとある程度の覚悟は備わっている。
「そっか。いよいよ心を決めたんだね」
「頑張って! 以前みたいに焦っちゃダメだよ。あーりんらしくね」
二人は愛里紗の強い決意に快くエールを送る。
愛里紗は決意表明をして、後戻りしないように気持ちを奮起させた。
「大丈夫。きっと上手くいく。緊張してもゆっくり深呼吸して伝えたい事だけを伝えるんだよ」
「うん。わかってる」
「頑張れ、頑張れ! 私達は応援してるからね!」
ノグは気持ちを後押しするかのように、ポンポンと肩を叩いた。
前回とは違う緊張感が漂っている。
決して怖くない訳じゃない。
告白する立場ならきっと誰だって一緒だ。
谷崎くんが自分を好きかもしれないと思い始めるようになってから、気持ちが抑えきれなくなった。
このまま何もしないのはイヤ。
今まで通りの関係じゃダメ。
好きだから前に進みたい。
以前みたいに逃げたりしない。
笑顔を独占したい。
味方でいてくれる親友二人と、告白への後押ししてくれたミクのお陰で、気持ちの足並みが揃った。
「私っ、今から谷崎くんの所に行って告白してくる」
「あーりん、頑張れ!」
「しっかりね!」
三人で一緒に家を出ると、愛里紗は二人に温かく見送られながらその足で神社に向かった。
気持ちが彷徨っていた前回とは明らかに足取りが違う。
緊張していても震えていない。
大丈夫。
私には出来る。
例えフラれたとしても気持ちだけはしっかり伝えたい。
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