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第二章
36.正直な心
しおりを挟むーー神社に先に着いたのは、私。
彼が先に到着する事が多いけど、今はまだ姿が見当たらない。
とりあえず鳥居の下に立って待つ事に。
スーッと息を吸って大きく深呼吸をして、緊張を一旦落ち着かせる。
季節は冬。
厚着をしていても冷たく吹き荒れる北風は身体を震え上がらせる。
首にマフラーを巻いてきたけど、焦って家を出たから手袋を忘れた。
時たま冷たくなった指を擦り合わせて身を縮こませながら彼の到着を待った。
彼の自宅方向に目をやりながら待ち続けているけど、なかなか姿を現さない。
気焦りしているせいか心の中の時計が乱れがちに。
今日は終業式だから午前までだったし、ノグとミキがうちに来て話をして、みんなで自宅を出る頃は14時を過ぎていた。
お昼ご飯をとっくに食べ終えて、神社に来てもおかしくないはず。
彼の到着を待っている時間、色んな想いが脳裏を過ぎる。
不安で押し潰されそうな気持ちの傍らで、彼がまだ姿を現さない分、ホッとしている部分も持ち合わせていた。
すると……。
「ねぇ、さっきから誰を探してるの?」
翔はまるでかくれんぼをしているかのように突然ヒョイと姿を現すと、愛里紗は驚いて身体がビクンと揺れ動いた。
ドキン……
私の心はとても正直。
境内を満遍なく見ても見つからなかったから彼の自宅方向を向いて待ち構えていたのに、彼が姿を現したのは先ほど見たはずの本殿側だった。
「もう神社に来てたの?」
「ずっとここに居たけど」
「嘘っ……。いつから居たの?」
「うーんと。詳しい時間は分からないけど、1時間前くらいには到着してたかな」
「私は10分以上前から来てたんだけど」
「全然気付かなかった」
境内を一周探したはずが、タイミングが悪かったせいか出会えなかった。
不意打ちを食らったけど、彼の手元に目を向けると手にはほうきとチリトリが。
狭い境内の中で会えなかったのは、お互い移動していた事が原因と思われる。
それは、ほんの些細な心のズレを起こしていた最近の自分達を示しているようで、少し可笑しく思えた。
愛里紗は一旦落ち着きを見せたけど、いざ本人を目の当たりにすると、まるで覚醒してしまったかように再び恋の鼓動が刻み始めていく……。
気持ちは一つに固まっている。
いっときの迷いもない。
後は一歩先に突き進むだけ。
「あのねっ……。今から大事な話があるから聞いてくれる?」
それまでおっかなびっくりだった愛里紗の表情が一変すると、翔は何事かと思ってギョッとする。
「う……うん、どうした?」
迫力に戸惑う翔だが、話を聞く体制が整う。
一方勢いの波に乗った愛里紗は、告白する環境が整った。
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