初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
41 / 226
第二章

39.照れ笑い

しおりを挟む



  午後、自宅で昼食を済ませてから彼と神社の鳥居下で待ち合わせた。

  午前と比べて気温が一層下がって、しっとりと頬に吹き付ける風に痛みを感じる。
  傘に積もる雪を傘の内側から指で弾き落とし、シャリシャリした雪を長靴で踏みつけて自分なりに満喫しながら神社へ向かった。


  先に到着していた彼は、真っ白な雪景色に包まれて腕を組んで寒々と身体を揺れ動かしながら鳥居の下で待っている。

  赤く染まった鼻頭と頬は長く待っていた証拠。




  彼の元へ一心不乱で走り行く私。
  降りしきる雪なんて視界の外。
  彼は雪をザッザッと踏みつけながら駆け寄る足音に気付くと、持っている傘をグルリと傾けた。



「ゴメン、待たせちゃった?」

「そんなに待っていないよ」



  最も恋人らしい会話にちょっとばかし照れ臭い。

  普段通りに振舞ったのに、恋人になってから恥ずかしくてお互いの顔を直視できないし、些細な会話でもドキドキして寒さなんて忘れちゃう。

  頭いっぱい胸いっぱいだけど、彼の赤くかじかんだ手を見て本来の目的を思い出した。



「今日、谷崎くんの誕生日でしょ?」

「知ってたの?」



  驚くのも無理はない。
  何故なら彼は誕生日の話を一度も口にしなかったから。
  私は彼が気になるようになってから、無意識に彼に関する情報を嗅ぎ回っていた。



  雪で濡れぬように被せてきたビニール袋の中から、お年玉で買ったプレゼントを取り出して、右手で風を切るように真っ直ぐ向けた。



「あのね。全然大したものじゃないんだけど……。これ、誕生日プレゼント」



  口元が緩むほど恥ずかしくて直視できなかったから、つむじを向け手をギリギリまで伸ばしてプレゼントを差し出した。

  すると、彼はプレゼントを受け取り、私は手から離れる感触で下げていた頭を上げる。


  彼は傘を首で支えて袋のリボンをスルスルとほどいて包み袋を開けた。
  中からは、紺色で手の甲の部分に白く結晶の模様の入った手袋が顔を覗かせる。

  手袋を手にした途端、瞳をキラキラと輝かせた。



「嬉しい!  ありがとう」



  彼は手袋をはめて嬉しそうに眺めたり、両手をこすったり、手袋に白い息を吐いたりして、髪に雪がかかってる事に気付かないほど新しい手袋に夢中になっていた。

  プレゼントを喜んでくれている姿を見たら、自分もつい嬉しくなって頬が緩んだ。



  賑やかな二人に気付いた神社のおじいさんは、本殿側から雪道をゆっくり踏みしめて二人の方へ近付く。



「外は寒いから中で甘酒でも飲んで温まりなさい」

「はーい」

「谷崎くん、寒いから早くおじいさんちに行こう!」



  外は震え上がるほど寒かったけど、照れ笑いをしている私達にはいつも以上に暖かく感じた。



  ところが、二人の温かくて幸せな日々は長くは続かず、お別れの日は無残にも刻一刻と迫っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「責任は取る。僕と結婚しよう」 隣にイケメンが引っ越してきたと思ったら、新しく赴任してきた課長だった。 歓迎会で女性陣にお酒を飲まされ、彼は撃沈。 お隣さんの私が送っていくことになったんだけど。 鍵を出してくれないもんだから仕方なく家にあげたらば。 ……唇を奪われた。 さらにその先も彼は迫ろうとしたものの、あえなく寝落ち。 翌朝、大混乱の課長は誤解していると気づいたものの、昨晩、あれだけ迷惑かけられたのでちょーっとからかってやろうと思ったのが間違いだった。 あろうことか課長は、私に求婚してきたのだ! 香坂麻里恵(26) 内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部営業 サバサバした性格で、若干の世話焼き。 女性らしく、が超苦手。 女子社員のグループよりもおじさん社員の方が話があう。 恋愛?しなくていいんじゃない?の、人。 グッズ収集癖ははない、オタク。 × 楠木侑(28) 内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部課長 イケメン、エリート。 あからさまにアプローチをかける女性には塩対応。 仕事に厳しくてあまり笑わない。 実は酔うとキス魔? web小説を読み、アニメ化作品をチェックする、ライトオタク。 人の話をまったく聞かない課長に、いつになったら真実を告げられるのか!?

Perverse second

伊吹美香
恋愛
人生、なんの不自由もなく、のらりくらりと生きてきた。 大学三年生の就活で彼女に出会うまでは。 彼女と出会って俺の人生は大きく変化していった。 彼女と結ばれた今、やっと冷静に俺の長かった六年間を振り返ることができる……。 柴垣義人×三崎結菜 ヤキモキした二人の、もう一つの物語……。

処理中です...