初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
43 / 226
第二章

41.ソワソワしてる彼

しおりを挟む

✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼



「あ~あ……。あーりんはチョコをあげる彼氏がいて羨ましいよ」



  ノグは頬杖をつきながらため息混じりでそう言った。


  普段は荒い口調で男っぽい面がある彼女だけど、中身は至って普通の女の子。
  私の恋が上手くいってから、『私も彼氏が欲しいな』なんて、何度も羨ましそうに呟いていた。



「はい!  このチョコ私から」



  ミキは自分の席から持ってきた手提げをガバッと広げて、ノグと私に手のひらサイズの包み袋に入っているチョコを順番に渡した。
  ノグは思いもよらぬプレゼントに目を輝かせる。



「うっそ!  ありがと~。アタシ、チョコとか全然用意してないんだけど」

「いーの。いーの」

「ミキ、ノグ。私からもあるよ」



  愛里紗は席に戻ってランドセルを開き、母と一緒に作ったチョコクッキーが入っている包み袋を出して二人に渡した。



「やば。チョコを用意していないのはアタシだけか。もらってばっかで悪いね」

「じゃあ、ホワイトデーにヨロシクね」

「三倍返しでね!」


「アタシは男子かいっ!」



  クスクスと笑いながらチョコを交換している私達を遠目から羨ましそうに見ている男子の視線が刺さる。
  だけど、チョコを渡す男子は一人だけ。


  学校が終わると、手作りチョコクッキーが入っている紙袋を持って約束している神社に向かった。
  告白をしに行ったあの日ほどではないけど、今日も胸がドキドキしている。
  バレンタインという事もあって、恋する女の子にとっては特別な一日だ。



  神社から徒歩で2~3分の距離に住んでる彼は先に鳥居の下で待っていた。
  手には先日プレゼントした手袋を身につけている。

  待っている彼自身もクラスの男子達と同じようにソワソワしているように見えた。



  愛里紗は紙袋を後ろに隠しながら、翔の元へ小走りで向かう。



「谷崎くん。お待たせ」

「……あれ?  こんなに寒いのに手袋をしてないの?」


「あ、うん。急いで家を出たから手袋をしてくるの忘れちゃった」



  こんな些細な会話でも、寒そうに身体を揺さぶっている彼の瞳は何処と無く落ち着きがない。

  勝手な想像だけど、谷崎くんはきっと今まで女子からバレンタインのチョコをもらった経験があるはず。
  それなのに、チョコを期待する緊張気味な瞳がたまらなくかわいい!



  その瞳を見続けたくて意地悪をしたくなったけど、身が凍りつきそうだからおあずけしてるのも可哀想だと思ってチョコ入りの紙袋を目の前に出した。

  誕生日プレゼントをあげたあの日とは違って彼女として少し貫禄が出ている。



「チョコ……頑張って作ったの。良かったら食べて」



  すると、紙袋を受け取った彼は待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべて紙袋を開き中身を目で追った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

秋色のおくりもの

藤谷 郁
恋愛
私が恋した透さんは、ご近所のお兄さん。ある日、彼に見合い話が持ち上がって―― ※エブリスタさまにも投稿します

叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家 結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。 愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

処理中です...