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第二章
41.ソワソワしてる彼
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「あ~あ……。あーりんはチョコをあげる彼氏がいて羨ましいよ」
ノグは頬杖をつきながらため息混じりでそう言った。
普段は荒い口調で男っぽい面がある彼女だけど、中身は至って普通の女の子。
私の恋が上手くいってから、『私も彼氏が欲しいな』なんて、何度も羨ましそうに呟いていた。
「はい! このチョコ私から」
ミキは自分の席から持ってきた手提げをガバッと広げて、ノグと私に手のひらサイズの包み袋に入っているチョコを順番に渡した。
ノグは思いもよらぬプレゼントに目を輝かせる。
「うっそ! ありがと~。アタシ、チョコとか全然用意してないんだけど」
「いーの。いーの」
「ミキ、ノグ。私からもあるよ」
愛里紗は席に戻ってランドセルを開き、母と一緒に作ったチョコクッキーが入っている包み袋を出して二人に渡した。
「やば。チョコを用意していないのはアタシだけか。もらってばっかで悪いね」
「じゃあ、ホワイトデーにヨロシクね」
「三倍返しでね!」
「アタシは男子かいっ!」
クスクスと笑いながらチョコを交換している私達を遠目から羨ましそうに見ている男子の視線が刺さる。
だけど、チョコを渡す男子は一人だけ。
学校が終わると、手作りチョコクッキーが入っている紙袋を持って約束している神社に向かった。
告白をしに行ったあの日ほどではないけど、今日も胸がドキドキしている。
バレンタインという事もあって、恋する女の子にとっては特別な一日だ。
神社から徒歩で2~3分の距離に住んでる彼は先に鳥居の下で待っていた。
手には先日プレゼントした手袋を身につけている。
待っている彼自身もクラスの男子達と同じようにソワソワしているように見えた。
愛里紗は紙袋を後ろに隠しながら、翔の元へ小走りで向かう。
「谷崎くん。お待たせ」
「……あれ? こんなに寒いのに手袋をしてないの?」
「あ、うん。急いで家を出たから手袋をしてくるの忘れちゃった」
こんな些細な会話でも、寒そうに身体を揺さぶっている彼の瞳は何処と無く落ち着きがない。
勝手な想像だけど、谷崎くんはきっと今まで女子からバレンタインのチョコをもらった経験があるはず。
それなのに、チョコを期待する緊張気味な瞳がたまらなくかわいい!
その瞳を見続けたくて意地悪をしたくなったけど、身が凍りつきそうだからおあずけしてるのも可哀想だと思ってチョコ入りの紙袋を目の前に出した。
誕生日プレゼントをあげたあの日とは違って彼女として少し貫禄が出ている。
「チョコ……頑張って作ったの。良かったら食べて」
すると、紙袋を受け取った彼は待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべて紙袋を開き中身を目で追った。
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