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第二章
43.恋日記
しおりを挟むーー谷崎くんが姿を消してから、2カ月目。
中学校の新品の制服はぶかぶかでまだ着慣れない。
新しい学校に、新しい友達。
毎日が新しいもの尽くしだけど、気分は彼と別れたあの日のまま。
お別れの翌日から1日も欠かさず神社に通った。
神社に行けば、また彼が無邪気な笑顔で待っていてくれると思ったから。
昨日……。
そして、今日。
毎日賽銭箱に小銭を入れて、彼が街に戻ってくるように両手を揃えて参拝した。
会いたい。
声が聞きたい。
またあの笑顔を独り占めしたい。
神様。
もしこの世に存在するのなら、彼をこの街に返して下さい。
毎日手に豆が出来そうなほど両手に力を込めて神様にそう唱えた。
そして、今日もポストの前で届かない手紙を一人で待ち続けている。
ポストの中を一日に何度も確認しても、彼からの手紙はまだ一通も届かない。
手紙を書いてくれるって約束したのに、どうしたのかな……。
もしかして、部活や勉強が忙しくて約束を忘れちゃったのかな。
大きく環境が変わったから私の事なんて忘れちゃったのかな。
今夜布団に入って眠りについたら、明日は会えるのかな。
若しくは、あさって目が覚めたら谷崎くんが突然目の前に現れたりして。
谷崎くんから手紙を書いてくれないと、今どこに住んでいるかわからないよ……。
来る日も来る日も、翔のいない喪失感に打ちひしがれて涙でまつ毛を濡らす日々が続いた。
神社では、池の前で背中を丸めてしゃがみこんでいる愛里紗に、おじいさんは気が利いた言葉をかける事が出来ない。
彼がいない空っぽの毎日。
まるで、夜明けが来ない砂漠に一人取り残されているかのよう。
でも、寂しさに負けちゃダメだと思って明日に期待する。
ご飯が喉を通らないから少し痩せた。
散々泣いたせいか、彼が姿を消した5カ月目に涙は枯れた。
それでも毎日はやってくる。
彼に会えなくなってから日記をつけ始めた。
誕生日に貰った鉛筆と消しゴムを使いながら、まるで手紙を書いてるかのように。
……そう、これは恋日記。
私の初恋はまだ終わっていない。
1日1ページ。
自分が納得するまで日記を書き続けた。
想いを書き綴り、隙間なく埋め尽くした。
でも、毎日書いてたら小さくなった鉛筆が先に使えなくなった。
使い物にならない鉛筆ですら捨てられないから宝箱の中にしまった。
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