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第三章
46.軽い冗談
しおりを挟むすると咲は、重苦しい空気を一掃させるかのように、明るい表情で話題をチェンジした。
「実はアルバイトを始めたんだ」
「………え、アルバイト? テスト期間前のこの時期に?」
「うん。イタリアンレストランで働いてみたくて」
「へぇーっ。咲がイタリアンレストランかぁ。いいね~!」
高校生になってから初めてのアルバイトに目をキラキラと輝かせている咲。
そういえば、前々からアルバイトに興味があるって言ってたっけ。
稼いだお金を毎月貯金して、ある程度貯まったらパーっと使ってみたいなって。
咲が働く姿が想像つかないのは、制服姿が見慣れてるせいかな。
「実はそのレストランで働きたくて求人が出るのを待っていたんだ。……で、最近ようやく募集が出て働けるようになったの」
「それはラッキーだったね! ……で、どこのイタリアンレストラン? 場所は咲の家の近所?」
話に興味を沸かせてそう問い尋ねたけど……。
「……それは」
「それは?」
「えぇっと……。それは」
何故か再び言葉を濁している。
すると、以前咲の家に泊まりに行った際、最寄駅近くにある人気のイタリアンレストランに一緒に行った事を思い出した。
「わかった! もしかして最寄り駅近くのイタリアンの店じゃない? あのお店はパスタもサラダも美味しかったよね」
「……あ、うん」
「咲の家から距離があるから二人であのお店に行ったのは一度きりだったね。でも、あの店で働いてるなら、今度働いてる所をこっそりと覗きに行ってみようかな~」
なぁんて軽く冗談を言ったつもりだった。
でも、次の瞬間……。
「それはダメッ!!」
「えっ……」
突然悲鳴混じりの声。
勿論、レストランに行こうとしたのは軽い冗談のつもり。
それなのに、咲は店に来る事を拒んでいる。
「あっ、ごめん。そんなつもりじゃ……。ただ、働いてる姿を人に見られるのが恥ずかしいと言うか……」
「そうだよね。頑張ってる姿を見られるのは恥ずかしいよね。こっちこそごめんね」
「ううん、ごめん」
咲はそう言うと暗い顔で俯いた。
ーーそう。
彼女は自分が働く店に来て欲しくない理由があった。
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