53 / 226
第三章
51.咲の家
しおりを挟む✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
「愛里紗、着替え持ち忘れてない?」
「もー、お母さんったら! そこまでおちょこちょいじゃないって!」
今日は木曜日で学校だけど、金曜日の明日は創立記念日で休み。
三連休という事で、学校帰りに久しぶりに咲の家へ泊まりに行く事に。
ご両親の件があって非常に行きにくいけど、『愛里紗が来る時はケンカしないと思う』と言って、躊躇う背中を押してくれた。
咲の家は遠い。
お互いの家の中間に学校がある感じ。
うちから咲の家まで行くには、電車を三回乗り継いでからバスに乗り換える。
電車やバスを上手く乗り継げたとしても、片道2時間以上はかかる。
毎回大変な思いをしながらも彼女は泊まりに来てくれる。
それほど自宅に居たくないのかなぁ、なんて気を揉んでしまうほど。
自宅とは逆方向の電車に乗って、途中で電車を二回乗り継ぎ、電車を降りて市営バスに乗り替えてバスに揺られる事10分。
バスを降りてから閑静な住宅街を歩く事5分。
長い長い道のりを経て、ようやく咲の家に到着。
今日はおよそ半年ぶりにお邪魔する事に。
咲は四人家族。
リビングの広さが30畳近くもある5LDK。
地下にはシアタールームがあり、彼女の部屋は10畳ほどあって広い。
一般家庭のお子様代表として訪れた私が、建物の隅から隅へと見回してしまうほど立派な豪邸だ。
咲は勉強が出来る上にカワイイ。
家は裕福だし、モデル並みのイケメン彼氏がいる。
親の不仲以外、何一つ不自由はしてなさそう。
はぁ、羨ましい……。
80足ほどの靴を広げてもまだ余裕のある広い玄関に上がると、半年前に玄関ですれ違ったのが最後の兄の存在を思い出した。
「咲のお兄ちゃんは元気?」
「うん。……実は4月から一人暮らし始めたから、もう一緒に暮らしてないんだ」
と、少し寂しげな表情。
咲には年の離れた社会人の兄が一人。
妹がかわいくて仕方がないシスコンタイプな感じの人。
父親は白髪混じりのオシャレな短髪で、髭を生やしている。
母親は元モデルのようで、目鼻立ちがはっきりしていて美人。
だけど、美形な両親とは似ても似つかぬ兄だった。
咲の部屋はふんわりと可愛らしいイメージから猫足家具やかわいい雑貨など置いてありそうだけど、実際は意外にもシンプル。
部屋の右側に設置されているベージュ調のセミダブルベッドの上には、かわいいクマのぬいぐるみが二つ置いてある程度。
インテリアに強いこだわりはなさそうな感じ。
左壁に設置されている大きな本棚には、難しそうな本や参考書や志望校の問題集などが並んでいる。
「いま飲み物持ってくるから私服に着替えて待ってて。すぐに戻るから」
「あ、うん。ありがと」
咲はそう伝えて、制服のまま二階の階段を駆け下りて行く。
私は言われた通り、普段着に着替えてから脱いだ制服を畳み、部屋の隅に置いている手提げの中にしまった。
ーーすると、その時。
ゴツッ……
「痛っ……」
制服をしまっている最中、隣の本棚に腕がぶつかり鈍い痛みが走った。
腕をさすりながら本棚に目線を移すと……。
中段には恐らく生後からの写真と思われる大きなアルバムと、幼稚園、小学校、中学校の卒業アルバムが並んでいた。
しかし、大量のアルバムを目した途端、ある事が思い浮かんだ。
0
あなたにおすすめの小説
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる