初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

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第六章

124.手紙

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  気を取られるように着目したある物とは、数年ぶりに目にした小学生時代の思い出がいっぱい詰まった宝箱。
  愛里紗はその宝箱が気になって再び物置内に戻った。



「うわぁ、懐かしい……。これこれ!  昔、大事にしてた宝箱じゃん」



  小学校に上がりたての頃、お歳暮で頂いた箱にシールや折り紙を貼って宝箱にしてた。

  でも、いつ物置の隅に仕舞ったかなぁ。
  中には何を入れたっけ?
  全然覚えてないや。



  愛里紗は懐かしい気持ちが湧き起こると、開けたい衝動に駆られた。
  しかし、宝箱の下には別の箱も二つ積み重なっていて手を伸ばしても届かない。

  届かないと、余計気になる。
  どうでもいい物が入っていたとしても、確認するまで気が治らない。

  手始めに指先を伸ばしてジャンプを始めた。



「えいっ。もうちょい……」



  宝箱を目掛けて真っ直ぐにジャンプをしたけど、思うように指が届かない。
  ほんの少し沸いてしまった興味は、届かないと同時に執着へ。



「あともう一息!  えいっ……えいっ……」



  幾度となくジャンプを繰り返していくうちに、積み重なっている宝箱の二つ下の箱に指が少し触れて、箱の角が2センチほど手前に接近した。
  次は角の裏の凹部分を狙って勢いよく指を右に払う。

  すると……。


  ドンッ!
  ゴソッ……バン……
  バサーッ……


  落下した衝撃で宝箱と共に積み重なっていた二つの箱も全てひっくり返り、紙製の宝箱の中身が埃まみれの床にバサーッと散乱する。



「うわわわわ……、最ィ悪~」



  箱が全てひっくり返ってしまったが、中身が散乱したのは紙製の宝箱だけ。
  他は頑丈なお菓子缶だから、蓋がずれて中身が少し飛び出す程度で助かった。


  宝箱の中に入っていた物は細かい物ばかり。
  戻りが遅いと思ってお母さんが物置を覗きに来たら、きっと怒られちゃう。
  ホウキとチリトリを持って来るように伝えられただけなのに、余計な仕事を増やした事がバレたら……。
  ただですら、ここにはいい思い出がないのに。

  トホホ……。



  物を落とした衝撃で身体は埃まみれに。
  ひっくり返ってしまった宝箱を表に返して、中身を一つ一つ手に取って再び宝箱の中へと仕舞う。



  あぁ、懐かしくて涙が出そう。
  宝箱の横には小学校の頃に大事にしていたシールやビーズに、小さく折った友達からの手紙やキーホルダー。
  それに、編みかけの手袋も落ちていた。

  手袋を両手に取ると、谷崎くんを思って編んでいた当時を思い出した。



  これは、誕生日にプレゼントしようと思った手袋。
  指の所が難しくて編むのを挫折した。
  編み棒を付け替えた所からわからなくなったっけ。
  無事に完成したら、既製品じゃなくてこっちを渡すつもりだった。



  懐かしい品々にしみじみと浸りながら落ちた物を一つずつ拾い上げて宝箱に仕舞った。

  すると……。
  隣でひっくり返っている青い正方形の菓子缶の下から、厚みのある封筒が数枚覗かせていた。

  菓子缶を一旦表に返して下敷きになっている封筒を拾い上げて箱に仕舞おうとするが、封筒は何故か全て未開封。
  裏に返して宛名面に目を向けると、そこには濃い鉛筆で私の名前が書かれていた。



  これは、私宛の手紙?
  どうして読まなかったんだろう。
  しかも、こんなに大量に……。



  宛名とにらめっこした後、手紙を裏っ返しにして送り主名を確認。
  すると、送り主の名前が目に飛び込んだ瞬間、封筒を持つ右手が大きく震えてそのまま地べたにストンと腰を落とした。



「……っ!」



  ガクガクと震える手で持つ手紙。
  それは、神社で最後のお別れをしたあの日に『必ず書くから』と約束して送ってくれた、谷崎くんからの手紙だった。

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