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第七章
153.心の中
しおりを挟むーー咲の転落事故から翌々日。
咲は包帯を巻いた足を引きずりながら登校した。
斜めに流していた前髪はおでこのアザを隠す為にぱっつん前髪に切り揃え、顎のアザはファンデーション、切れた唇はピンクのリップで隠している。
顔は傷だらけだし身体は痛々しいけど、表情は対照的に晴れ晴れしい。
怪我を見る度に胸は痛むけど、咲は『怪我は愛里紗のせいじゃないよ』と言って心配を受け取らない。
そんな強さと優しさに心が救われている。
私達は再び向き合う準備が整うと、中庭へ移動した。
前回は翔くんと再会したばかりで、精神状態が不安定だったせいもあって聞く耳を貸せなかった。
でも、今なら素直に耳を傾けられる。
咲は前回伝えきれなかった内容と、現在の話を伝えた。
入れ違いの恋に順番が存在しなかった事。
翔と交際を始めてからも心に爆弾を抱え続けていた事。
愛里紗の事も翔と同じくらい好きな事。
翔の彼女だった間もずっと片想いだった事。
翔に『好きじゃないと』言われて別れた事。
心の弱さに立ち向かえずに理玖を盾にしてしまった事。
両親が離婚した後から社会人の兄と二人きりで暮らしている事。
それと、両親が離婚した件を話せなかった事。
思い返せば、以前咲が何かを話そうとした時があった。
でも、タイミングが悪くて話せずじまいに。
後で聞けばいいかなと思っていたけど、深刻な話とは知らずに自然とそのままお流れになってしまった。
一見幸せそうに見えても、実際待ち受けていたのは悲痛な現実。
話を聞いてるうちに、冷たくあしらっていた自分が何だかちっぽけに思えた。
若干お互い心に後遺症を患ったけど、関係改善できてホッとした。
現実から目を逸らして逃げ続けていた私は、今回の一件で多くの事を学ばされた。
これからは間違った道を正していきながら、お互い成長していけばいいと思う。
話も聞かずに頑なに逃げるだけじゃ、いつまで経っても解決への道は開かれないのだから。
今回それを教えてくれたのは、親友 咲。
私は翔くんとの別れがトラウマになっていたせいか、目の前の大切なものを見失っていた。
ーー同日、私は一人で木村のクラスへ行って、咲の病院後の報告した。
木村は『仲直り出来て良かったな』と、安堵したようにそう言った。
その足で先日借りた服を返しにノグの教室へ。
ノグにも咲と仲直りした事を報告。
するとノグは、『駒井さんと翔の件を黙っててごめん』と、謝ってきた。
振り返れば、翔くんと再会後から沢山の人に迷惑をかけていた。
でも、最初はそれが迷惑だとわからないくらい翔くんとの再会に心狂わされていた。
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