初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
172 / 226
第八章

170.驚異的存在

しおりを挟む


「しかも、先日は愛里紗が嫌がってんのにキスを強要しただろ」

「は?  ……何の話?」


「しらばっくれんな!  3日前だよ、3日前!  UFOやお前の遺伝子がどうとかって話してただろ」

「……え?  えぇっと……あ~、アレか!  ……って、あんたあの時俺らを見てたの?」


「ちっ、違う!  ……あっあの時は、たまたま駅で二人を見かけて……」

「へぇ~、意外。結構真面目そうに見えるけど、覗きの趣味でもあるの?」


「ある訳ないだろ!  お前は普段からあんな風にキスを迫ってるのかよ」

「たまたま見かけたにしては、会話をしっかり頭に叩き込んでるんだな。付き合ってんだからキスくらいするだろ」



  気持ちが逆撫でされて理玖のひと言ひと言にイラつく翔と。
  怒りは頂点に達しつつも冷静沈着に意地悪を言う理玖。

  若干温度差があるように見える両者の睨み合いはしばらく続く。



  理玖は、翔が愛里紗を《大切な人》と言ったり、仲を詮索するような言いっぷりだったり、呼び捨てしたり。
  僅かながら関係性をチラつかせると、この人物が一体何者なのか頭の中で逆算を始めた。



  愛里紗が最後に付き合ったのは俺だと言っていたし、こいつと知り合ったのは最近でもなさそう。
  俺らが再会したのは春だから、離れていた期間は中学を卒業してから約1年。
  こいつは中学の同級生でもないから、恐らく違う学校へ通っていたはず。

  だとしたら……。



  理玖は記憶を遡っていくと、小学生時代から愛里紗が長年忘れられなかったある人物ではないかという驚愕的な結果に行き着いた。

  しかし、思い過ごしの可能性もある。
  そう思ったのは、先ほど校門から離れる時に、後ろからしきりに呼び止めていた三人組の呼び名を思い出したから。
  しかも、その呼び名がとても可愛らしくて印象的だった。

  だから、気持ちが先走るあまり口に出てしまう。



「さっき、あんたはクルちゃんって呼ばれてたけど、名前は来栖とか久留米なの?  聞き覚えはない名前だけど、愛里紗とはどーゆー関係?」

「……は?  お前がクルちゃんだろ?」



  翔は怖い顔で即答した。
  だが、先ほどまで『クルちゃん』と呼ばれていた男に『お前がクルちゃんだろ』と言われても意味が理解できない。



「……え、俺がクルちゃん?  名字は橋本だけど」

「胸に手を当てて考えてみろ」



  翔はそう言うと、半怒りで身体を震わせた。
  理玖は言われるがまま胸に手を当ててクルちゃんの意味を考えてみた。

  ……だが、当然ながら思い当たる節がない。



「やべぇ……。冗談抜きであんたの言ってる意味が分かんない」

「クルちゃんは俺じゃない!  断言出来る。お前は自分の言動を思い返せ!」



  翔は先程の言動を指摘したつもりが、若干言葉足らずに。
  お陰で理玖は胸に手を当てても何も思い浮かんで来ない。

  行き違いな会話は、まるでコントのよう。
  残念ながら、二人の話は徐行運転に。



  上空に強い寒気が流れ込んでしっとり冷たく湿った空気は二人の頬を撫でたが、噛み合わない会話によってより一層冷たく吹き荒れた。



「俺がクルちゃんと言うのは理解出来ないけど、あんたがさっきそう呼ばれてたからクルちゃんだと思ってたし、あんた自身も返事してたし……」

「してないし。(結構地獄耳だな)そもそも俺にクルちゃんは関係ない」


「じゃあ、そもそもクルちゃんって一体何なんだよ」

「そんなの知るか」



  翔を取り巻いていたギャル三人組がつけたあだ名は、二人の間に小さな火種を起こした。
  だが、理玖がほんのりと期待していた後者は見当違いに。



  やっぱり、こいつは愛里紗の初恋相手の谷崎?
  遠い街へ引っ越したと噂で聞いたけど、まさか愛里紗に会いに?

  だとしたら、俺にとって脅威的存在そのもの。
  俺は今この瞬間からこの男が見過ごせなくなり、確認の意味を込めて聞いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

処理中です...