初コイ@進行中 〜忘れられない初恋相手が親友の彼氏になっていた〜

伊咲 汐恩

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最終章

216.3年後の私

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  ーー高校二年生だった私が三角関係に終止符を打ってから、3年という月日が流れた。


  長年再会を待ちわびていた小学生時代からの初恋相手の翔くんと。
  中学と高校と縁があって二度交際する事になった理玖。

  私は二人の元彼の再会と共に運命の歯車が狂ってしまった。
  最終的に別れという選択をしたけど、今考えても正解だったと思う。


  もし、翔くんへの気持ちに応えてしまったら、失恋の痛手を負っていた咲と、心に爆弾を抱える毎日を過ごしていた理玖を更に傷付けていた。

  逆に、本心を隠したまま理玖と交際を続けていたら、私は顔色を伺って過ごしていたと思う。

  あの時は、壊れそうな関係を繋ぎ止め続けるだけじゃお互い真の幸せは掴めないと思った。


  二人とお別れした直後は枕を濡らす日々が長く続いた。
  誰にも打ち明けられない秘密の恋心は、胸の内に秘めたまま深い闇へと葬られていった。



  失恋の傷が少し癒えて桜の花びらが青々と生い茂った新芽に衣替えした頃。
  暫く貝のように固く口を閉じていた私は、咲に理玖と別れた事を伝えた。
  あの時の仰天していた目は3年経った今でも忘れられない。

  咲は一番近くで恋を応援してくれていただけに、残念そうな様子を伺わせていた。


  あの頃は大切なモノを二つ同時に失ったけど、手元には一番大切なモノが一つ残った。

  それは、高校に入学してからの2年間、一番近くで守り抜いてきた世界にたった一つだけの大切な咲の笑顔。
  当時の私は、一番身近なモノが一番の宝物だった。


  一番近くの笑顔を守り抜いた時。
  好きな人と一緒になる事だけが幸せじゃない事を知った。
  きっと周りの人間に祝福してもらえるからこそ、恋が幸せだと感じるのだろう。
  当時の恋は明らかに不合格だった。


  両親の離婚と失恋。
  それに同級生に悪口を言われて、ボロボロに傷付いて苦しんでいた咲の笑顔を守っていくのは自分しかいないと。

  だから、傍で支えてくれる相手にバトンタッチが出来るその日まで、一番近くで見守ってあげたいと思った。


  まるで日常会話のように咲の悪口を言っていた三人組は、進級してから三人ともクラスがバラバラになった。
  リーダー格の彼女に新しい彼氏が出来た途端、咲の存在がかき消されてしまったかのように悪口はピタリと止んだ。


  悪口を言った側はその事実を簡単に忘れてしまうかもしれないけど、言われた側は案外根強く残るもの。
  きっと、2年に渡って悪口を言われ続けた咲は、あの時の悲しみが嫌な思い出として胸に刻まれているはず。


  私としては本人に謝って欲しかった。
  彼女達も一人前の人間として成長して行く為に必要不可欠だと思っているから。

  でも、一度収まった話を再び蒸し返す事で、火種になってしまう事を避けたかったから敢えて口を噤んだ。


  実は悪口がピタリと止んだ理由は、別の考えも持ち合わせていた。
  バレンタインの日に三人組から咲を庇った木村が、あの後も私達の見ていないところで悪口を止めるように働きかけていてくれたのかもしれない。

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