218 / 226
最終章
216.3年後の私
しおりを挟むーー高校二年生だった私が三角関係に終止符を打ってから、3年という月日が流れた。
長年再会を待ちわびていた小学生時代からの初恋相手の翔くんと。
中学と高校と縁があって二度交際する事になった理玖。
私は二人の元彼の再会と共に運命の歯車が狂ってしまった。
最終的に別れという選択をしたけど、今考えても正解だったと思う。
もし、翔くんへの気持ちに応えてしまったら、失恋の痛手を負っていた咲と、心に爆弾を抱える毎日を過ごしていた理玖を更に傷付けていた。
逆に、本心を隠したまま理玖と交際を続けていたら、私は顔色を伺って過ごしていたと思う。
あの時は、壊れそうな関係を繋ぎ止め続けるだけじゃお互い真の幸せは掴めないと思った。
二人とお別れした直後は枕を濡らす日々が長く続いた。
誰にも打ち明けられない秘密の恋心は、胸の内に秘めたまま深い闇へと葬られていった。
失恋の傷が少し癒えて桜の花びらが青々と生い茂った新芽に衣替えした頃。
暫く貝のように固く口を閉じていた私は、咲に理玖と別れた事を伝えた。
あの時の仰天していた目は3年経った今でも忘れられない。
咲は一番近くで恋を応援してくれていただけに、残念そうな様子を伺わせていた。
あの頃は大切なモノを二つ同時に失ったけど、手元には一番大切なモノが一つ残った。
それは、高校に入学してからの2年間、一番近くで守り抜いてきた世界にたった一つだけの大切な咲の笑顔。
当時の私は、一番身近なモノが一番の宝物だった。
一番近くの笑顔を守り抜いた時。
好きな人と一緒になる事だけが幸せじゃない事を知った。
きっと周りの人間に祝福してもらえるからこそ、恋が幸せだと感じるのだろう。
当時の恋は明らかに不合格だった。
両親の離婚と失恋。
それに同級生に悪口を言われて、ボロボロに傷付いて苦しんでいた咲の笑顔を守っていくのは自分しかいないと。
だから、傍で支えてくれる相手にバトンタッチが出来るその日まで、一番近くで見守ってあげたいと思った。
まるで日常会話のように咲の悪口を言っていた三人組は、進級してから三人ともクラスがバラバラになった。
リーダー格の彼女に新しい彼氏が出来た途端、咲の存在がかき消されてしまったかのように悪口はピタリと止んだ。
悪口を言った側はその事実を簡単に忘れてしまうかもしれないけど、言われた側は案外根強く残るもの。
きっと、2年に渡って悪口を言われ続けた咲は、あの時の悲しみが嫌な思い出として胸に刻まれているはず。
私としては本人に謝って欲しかった。
彼女達も一人前の人間として成長して行く為に必要不可欠だと思っているから。
でも、一度収まった話を再び蒸し返す事で、火種になってしまう事を避けたかったから敢えて口を噤んだ。
実は悪口がピタリと止んだ理由は、別の考えも持ち合わせていた。
バレンタインの日に三人組から咲を庇った木村が、あの後も私達の見ていないところで悪口を止めるように働きかけていてくれたのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。
NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。
中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。
しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。
助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。
無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。
だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。
この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。
この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった……
7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか?
NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。
※この作品だけを読まれても普通に面白いです。
関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】
【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる