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最終章
217.その後の咲
しおりを挟む塾を辞めた後は家庭教師を招いて、必死に勉強をした結果、第一志望の大学に合格。
勉強に自信がなくて浪人覚悟だったから、合格通知を受け取った時は我が目を疑った。
大学に進学すると、そこには新しい世界と新しい出会いが待っていた。
新しい物づくしで目まぐるしい日々だけど、充実した大学生活を送っている。
でも、相変わらず将来の夢は見つかっていない。
だけど、焦ってない。
まだ夢探しをするチャンスはある。
そう遠くないいつか、輝ける何かを見つける日が必ず来ると信じてる。
咲は第一志望のK大に落ちてしまい、既に合格通知を受け取っていた地方の国立大学に進学を決めた。
咲は頼りない妹のような存在だから、一人暮らしなんて出来るのかなって、家族でもないクセに心配しちゃったりして。
交際を始めてから1年経つ木村とは、遠距離恋愛で愛を育んでいるとか。
咲は二度目の恋愛に突入するまではもの凄く慎重になっていた。
あの後も木村は真っしぐらな想いを伝え続けて、最終的に咲の心のポストへ。
高校を卒業する頃には既に心が決まっていたのに、咲は恋に不器用なんだか気持ちに気付いていないだけなのか……。
なかなか次のステップに移せなくて隣で見ていた私の方がやきもきしていた。
ーーあれは、卒業式を1ヶ月後に控えた、高校三年生のある日。
教室前の廊下で、木村が他の女子と仲良く話してる現場をたまたま咲が目撃。
まるで浮気現場を押さえてしまったかのようにヤキモチを妬いて、顔を真っ赤にしてカンカンに怒ってしまった。
ちなみに、その当時二人はまだ付き合っていない。
私はたまたま現場に居合わせていたけど、咲があんなに怒ってる姿を今まで一度も見た事がなかったから正直驚いた。
木村は異変に気付いて目の前で走り去っていく咲の後を追ったけど、咲は制止を振り切っておっかない顔をしながら去って行った。
その後、木村とは一週間も口を利かなかった。
そんなに長々とスネてしまうくらいなら、早くいい返事をしてあげれば良かったのに……、なぁんて一度も口には出さなかったけど。
咲は普段から追いかけられる立場だったから、急に木村の目が向かなくなった事が気に食わなかったのかもしれない。
……なんか、その時の咲は恋する乙女だった。
二人が上手くいったと報告を聞いた時は、私まで嬉しくなってスマホを握りしめたままその場でガッツポーズ。
その間、ずっと恋を応援していたから上手くいく事を誰よりも願っていた。
『必死に追いかける恋より、温かく見守ってもらえる恋の方が私には合ってるかもしれない』
電話先の甘ったるくて惚気た報告は、たまにつまらなくてヤキモチを妬く事もある。
だって、私はあの頃と変わらず咲の事が大好きだから。
でも、笑顔のバトンタッチする相手が木村なら、二人にどんな障害が訪れても泣かせる事はないと思っている。
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