異転生の虚友撃

ナナホシ

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服選び

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「二人とも、着いたわよ」

 母さんにそう言われ、二人揃って顔を上げる。そこにあったのは、少し古く感じる建物だった。服屋と言われれば服屋のような気がするが、俺たちの知っている服屋とは似て非なるといった感じである。
 想像とは違ったが、母さんが頻繁に利用しているところだというのだから安心だろう。一人分程度の幅しかない扉を開け中に入る母さんの後ろにぴたっとくっ付いて店に入ると、前の服屋ではなかなか見ることのできない服が沢山置かれていた。
もちろん普通の服もあるのだが、それ以上にこういった世界特有の服が目立つ。

 見慣れない光景に目を輝かせながら店の中を歩いていると、奥から女性がこちらに向かって歩いてきた。

「いらっしゃいませ。お久しぶりですね」
「久しぶり。今日は子供の服をと思ってきたんだけれど」

 母さんはそう言って後ろを振り返り、俺たちを女性に紹介する。その様はまるで友人との会話である。何度も来ていると言っていたから、なんら不思議な光景ではないが。どことなく嬉しそうにこちらを見ている女性に向かい、可愛らしくこうべを垂れた。すると女性は不思議そうにこちらを見つめた後に、子供服の方へと案内してくれた。

「しっかりしてるんですね。驚きました。....前の時よりサイズは大きい方がいいですね。この辺でどうでしょうか」
「ありがとう」

 連れてこられたところには、綺麗に折りたたまれ棚に置かれた服があった。派手で目立つ服から地味な服、子供らしい柄の服、戦闘時に着ると思われる服。この世界の子供用の服も多種多様のようである。

「今日は好きな服を選んでいいんだけど、2人が選ぶのは普段着よ。身を守るための服は私が選ぶからね」

 普段着の置かれている方を指差しながらそう言うと、戦闘服らしきものが置かれている方へと行ってしまった。
店員の女性も母さんの方へとついて行ってしまったので、ここに残ったのは俺たち2人だけである。
女性服なんて自分で買ったことがないのでどれが良いのか、どんなものが良いのかという根本的なところすらわからないが、エリカに協力を求めるにしても、最低限の私案を巡らせるべきである。
とりあえず男服を選んでいた時と同じ様に、目に付いたものを適当に合わせてみることにした俺は、先程から少し気になっていた地味めの色の服を手に取った。
パッと広げ合わせてみると、長さは少し長いものの、程よく可愛いと言った感じの色合いの良いワンピースである。正直もうこれでいいのではないかとさえ思ってしまうほどに、自分の中でしっくり来ている。
 しかし横を見てみると、複数の服を持って深く悩み混んでいるエリカの姿があった。女性というのは得てしてこういうものなのだろう。直感的に見て決めてしまうのは男の悪いところである。いや、一概に男がそうである訳ではないのか。それでも少なからず、俺の周りにいた男たちは服へのこだわりは無く、おかしいと笑われなければそれで良いというやつばかりであった。総じて俺は、男はそういうものなのだと思っている。

「どうかしたの? そんな思案顔で」

先ほどまで服を見比べていたエリカは、手に持っていた服を棚に置いて顔を覗き込んできた。俺は余程わかりやすい顔をしていたのだろう。気を使ってくれているのが伝わってくる。変に心配をかけてしまうくらいならば最初から相談しておけば良かったかな。悔いるのもいいが、今はこれ以上無用な心配をかけないよう、素直に相談することにした。

「女子の服の選び方がわからなくてエリカに相談しようと思っていたんだけれど、全て任せるのも違うかなと思って悩んでいたところ」
「なるほど。とりあえず手に持っているそれ、ちょっと見せてみて」

 可愛らしく微笑んで一歩後ろに下がると、俺が手に持っている服を合わせるように言ってきた。おそらく合うか合わないかを見てくれるのだろう。
上から下へ、下から上へと目を動かし難しそうな顔をするエリカだが、おもむろに顔を上げ、俺の肩あたりまである赤い髪に手を伸ばす。
すると、棚に置いてあった白色のリボンで左側の髪を束ねてくれた。有り体に言うとサイドテールというやつだろう。

「こうするとすごく可愛い」
「どれどれ」

横にある鏡の前に立ち、自分の今の姿を見た俺は思わず驚きの声をあげた。
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